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人助け 2
しおりを挟む「あの、これ本当に上手く行くんですか?」
晴人がフェンスに縄を結びながら尋ねる。
「多分」
桃莉はなぜか自信満々に答える。
「……」
多分なのになぜそんなに堂々と言うだ、と言う目で晴人は桃莉を見る。
「まぁ、心配しなくていいぞ。あいつがああいうときは大抵大丈夫だ……多分」
奏雨が言う。
「ちょ、そこは言い切ってくださいよ」
「いや、本当大丈夫だ」
奏雨は今度は心の中で「多分」と呟く。
晴人は不安になるも、この2人のそば以上に安全な場所はないと思うので言われた通り縄を結んでいく。
「終わった?」
桃莉が尋ねると2人は返事をする。
「じゃあ、始めようか」
桃莉はニヤリと笑う。
「スイッチオン!」
桃莉がそう言うとCDプレイヤーのスタートボタンを押す。
大音量の音楽が流れ出す。
「さぁ、逃げるぞ!」
階段からは逃げられないので、フェンスに逃走用に用意していた縄を使って下に降りる。
「こんな降り方するときがくるなんて……アニメじゃあるまいし」
晴人は本当に大丈夫なのかと顔を青くする。
もし失敗したら……この高さなら死ぬ。
そう思うと足がすくんで動けなくなるが、先輩二人に背中を蹴られ嫌でもネットで調べた方法を使って降りている。
「手が痛いです……」
「ごちゃごちゃ五月蝿い男どもだね。あんな気持ち悪い化け物に喰われて死ぬよりはマシでしょ」
'え?俺何も言ってないけど……?'
奏雨は心外だと言わんばかりの顔で抗議するが、無視される。
三人は二階くらいの高さの壁の上で立ち止まる。
まだ、下にモンスターがいる以上降りるわけにはいかない。
もう少しだけ待っていようとすると音楽とは別の大きな音がする。
ドンッ!
また大きな音がする。
何回も何十回も。
「この音はいったい……?」
晴人が尋ねる。
「本当にわからない?」
桃莉が尋ねると晴人は「はい」と言う。
「そう。まぁ、言うより見た方が早いか……」
2人ともついてきて、と言って端まで移動する。
2人はいったいなんだ?と思いながらついていく。
「ほら」
そう言われて壁から少しだけ顔を覗かせると「あ、危ない」と言われ腕を引っ張っられる。
え?と思った次の瞬間、目の前にゾンビが現れ、すぐに消えた。
「おぉ!思った以上に上手くいってるわね」
桃莉は落ちていくモンスターを見て言う。
「牡丹先輩はここまで狙ってたんですか?」
屋上からドンドン落ちていくモンスター。
地面に叩きつけられ動かなくなるモンスターを見て、まさかと思いながら尋ねる。
「うん。当然でしょう。あれ、ゾンビなんだから。脳みそさえ潰せれば死ぬんでしょう?確か映画ではそうだったよね?」
奏雨の方を向く。
「うん。映画ではそうだったよね。現実ではあり得ないと思ってたけど、見る限り現実でもそうみたいだね」
奏雨は屋上から落ちてくるモンスターを見ながら言う。
「でも、思っていた以上にグロいね。映画だとそんな風には感じなかったのに」
おぇ、と奏雨は口を手でおさえる。
「そりゃあ、そうでしょう。画面の向こう側とでは見るのは変わるわよ。それより、そろそろ移動しようか。ずっとここにいるのはキツイし」
桃莉はそう言いながら下へと降りていく。
2人も後に続く。
「どこにいくか決めてんのか?」
奏雨が尋ねる。
「もちろん。当然でしょ。今から行くところは一番安全なところよ」
桃莉は2人に向かってウィンクする。
一番安全なところ、その言葉に2人はこの状況でそんな場所があるのかと首を傾げる。
「安全な場所ってグラウンドかよ」
奏雨はグラウンドのど真ん中に座り込む。
「何よ。一番安全でょ」
モンスターから逃げるためほとんどの者が校舎の中に隠れている。
なかには、校舎の外に隠れているものもいるが最初にモンスターたちが現れたグラウンドにこようと思うものは誰一人いない。
もちろん他にも理由はある。
グラウンドは隠れる場所がない。
モンスターたちに囲まれたら死は確実。
何より、1番はこのグラウンドには最初に襲われた生徒たちの死体がある。
そんな場所にくるなど普通ならあり得ない。
晴人は殺された生徒たちの死体を見て吐いている。
「大丈夫か?」
奏雨は背中をさする。
「……すみません」
晴人は胃の中にあるもの全てを吐き出すと口をぬぐいながら言う。
「先輩たちはこれをみても……」
顔色一つ変えないんですね、と言おうとしてやめた。
薄情だと思ったが、この二人がいなければもっと被害が出ていた。
顔には出ていないだけできっと苦しんでいるはずだと思い直す。
「残り時間があと30分もある。他は大丈夫だろうか?」
奏雨は屋上から落ちてくるモンスターを見ながら呟く。
「さあ?悲鳴は聞こえてこないし、大丈夫なんじゃない?もし仮に、大丈夫じゃなかったっとしても、これ以上は自分でどうにかしてもらわなきゃ」
「まぁ、馬鹿じゃなければ気づいているか」
「……?」
晴人は二人の会話が理解できずに首を傾げる。
そんな晴人の様子に気づいた奏雨は苦笑いしながらこう言った。
「まぁ、つまり、悲鳴が聞こえないのはいいことだってことだよ」
「まぁ、それはそうですけど……」
聞きたいのはそれじゃない、と思いつつも何も言えずに黙り込む。
「まだ、ゲーム終了まで時間がある。何か聞きたいことはあるか?」
隣にいた桃莉は目を瞑って座っていたので、話すことができないため暇なので晴人との会話を続けることにした。
「それじゃあ、一ついいですか?」
「ああ、なんでもいいぞ」
「いつ、あのモンスターたちの目が見えないって気づいたんですか?」
ニ人に出会わなければ晴人は気づかずに殺されていた。
ウィンドウにモンスターは目が見えないなんて一言も書いてなかったため、どうやって知ったのか知りたかった。
「俺は桃莉に教えてもらったから知ってただけ。まぁ、あいつは始まってすぐ気づいてたけどさ。全く、大した観察眼だよ」
奏雨は自分のことのように喜ぶ。
「本当に、そうですね。牡丹先輩がいなければ、もっと多くの人が死んでいたでしょう」
少し離れたところにある死体を見ながら言う。
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