世界最強ハンターは日本の女子高生!?

アリス

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突破口

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「なぁ、桃莉……」

奏雨が話しかけようとしたが外からの悲鳴のせいで遮られそれどころでなくなってしまう。

「いったいなんなのよ……きゃあああーっ!」

前から二番目の窓側の席にいた茜(あかね)が外から聞こえてきた悲鳴が気になり確認しようと窓の外をみると、そこは地獄と化していた。

大きな黒い丸からモンスターが大量に出てきて体育の授業でグラウンドでていた生徒を襲っていた。

噛みつかれ死ぬもの。

急いで逃げるもの。

動転してその場に座り込むもの。

茜は椅子から倒れ落ちる。

「茜。大丈夫か。何を見たんだ……?」

隣にいた雅也(まさや)は倒れた茜を心配しながら、窓の外を見ると言葉を失う。

他のクラスメイトたちを何が起きているか知りたくて外を見ると襲われている生徒た血を見て言葉を失っていた。

数秒で我に返り、皆、バラバラの反応をする。

悲鳴をあげるもの、急いで逃げるもの、吐くもの、慰めるもの、泣き出すもの、そして冷静に分析するものに。

'ん?あれは……'

桃莉はモンスターの行動を観察していると、ある生徒たちを素通りしていくのに気づく。

'どうして、彼らには襲いかからないの?'

何かわけがあるのかじっくり観察していると、腕を掴まれた。

「おい!桃莉!さっさと逃げるぞ!」

奏雨が叫ぶ。

「待って!」

あと少しで理由がわかる気がするため、ここから離れたくない。

桃莉は奏雨の顔を見ずに観察を続ける。

「おい!今がどういう状況かわかってんのか!?」

奏雨が桃莉に声を荒げて逃げるよう説得するが、途中で言葉を遮られてしまう。

「なるほど!そういうことか!」

桃莉は勢いよく椅子から立ち上がる。

「は……?何がわかったんだ?いや、そんなことより早く逃げるぞ!」

このままじゃ死ぬと思い逃げようと言う。

もうこの教室には桃莉と奏雨の2人しかいない。

全員とっくに逃げていた。

「逃げる?そんな必要はないわ」

「は?何言って……」

「よく見て。あのモンスターたちを」

桃莉はベランダにでる。

奏雨はこの状況で何を言ってんだと思うも、桃莉が逃げようとする気配がないので諦めてベランダにでる。

「……?」

言われた通りモンスターを見るが、恐怖しか感じない。

「気づいた?」

「悪いがわからん。教えてくれ」

さっさと話したいこと話さして逃げるよう仕向けることにした。

「奏雨。あんたね、見つける気なかったでしょう。そんなじゃ、すぐ死ぬわよ」 

呆れてため息がでる。

「この状況で呑気にモンスターなんて見れるわけないだろ」

「この状況だからこそ見るべきなのよ。バカ。アホ。間抜け」

「……?」

「理解できない?」

奏雨は頷く。

「そう。なら、よく見て。特にあそこ。おかしいところない?」

奏雨は指さされた場所を見る。

「え?は?」

「気づいた?」

「なんで、あいつらは襲われてないんだ?」

理由はわからないが、一部の生徒が襲われていないことに気づく。

「理由は簡単よ。モンスターたちは目が見えないのよ」

「目が!?なんでそんなのわかるんだ!?」

バコンッ!

「イテッ!」

奏雨は殴られた頭を押さえながら、桃莉を睨む。

何するだ!そう文句を言おうとしたら「声がでかいわ。この間抜け」と罵られる。

「よーく耳の穴かっぽじって聞きなさい。いい?目が見えないのに、なぜ襲えたかわかる?」

「……音か」

そう考えれば襲われなかった生徒たちがいるのも頷ける。

彼らはただその場にいるだけで動いていない。

音を出してないからモンスターたちに気づかれなかった。

「そう。あのゾンビみたいな化け物たちは目が見えない代わりに相当耳がいいの。だから、大声出したらここにいることが気づかれるでしょう」

ゾンビを倒すなら脳みそを潰せばいいが、武器もない以上それは無理だ。

最悪、椅子と机を投げれば済むが、あの数を相手にするのは大変だ。

このゲームだけで終わるならいいが、あと3回。

それもこれよりも難易度が高い。

無理はできない。

「悪い。でも、これからどうするだ?みんなにもこのことを伝えないと」

「そうだね」

「あ、放送を使えばいいじゃないか。それならどこにいても全員に伝えられる」

「それは駄目」

「なんでだ!?」

いい方法だと思ったのに駄目と言われて納得いかない。

「よく考えろ。放送で呼びかけたら、スピーカーから音が出るだろ」

「だからいいだろ?」

「アホか。もし、教室に隠れていたら音につられてモンスターたちが入ってくるだろう。5体くらいなら、なんとかなるかもしれないが、教室いっぱいに入ってきたらどうする?逃げられないぞ。ほら」

顎でグラウンドを見るよう指示する。

動いてなかった生徒だが、モンスターとぶつかり気づかれ噛みつかれている。

「……方法はないってことか」

「いや、あるよ」

「なっ!それは本当か!いった……」

奏雨は口元を手で覆われ喋れなくなる。

シッ。

桃莉は顔で黙るよう指示を出す。

ガラガラ。

扉が開けられる音がする。

モンスターが4体教室に入ってきた。

人間がいないか探す。

桃莉と奏雨は気づかれないよう息を潜め早く出ていくのを祈る。

時間にすれば数分だが、奏雨からすれば何時間も経った気がした。

教室を徘徊し机や椅子にあたり音が出て襲いかかるも、ベランダにいたおかげで逃げる必要も襲われることはなかった。

ただ、静かにモンスターたちが出ていくのを待った。

「いったわね」

モンスターたちが出ていくのを確認すると奏雨の口から手を退ける。

「……悪い」

「気にしてない。それより、さっきよりも悲鳴が酷くなったわね。急がないとまずいわね」

「だな。それで、方法ってのは?」

「簡単よ。音で居場所を判断するなら、大きな音を出せばいいの」

「ああ!なるほど!妙案だな!……でもどうやって?」

放送が使えない今、どうやって学校内にいるモンスターたちをひきつけるのか、さっぱりわからない。

「それも簡単よ。スピーカーを使う」

「スピーカー?そんなのどこにも……あ、音楽室か」

「そう」

「さすが、桃莉。天才だ。これまで何度も悪巧みやクソなことにしか、その天才的な頭脳を使わなかったからクソヤローと思ってたけど、今は救世主に見えるよ」

奏雨は嬉しさのあまり桃莉に抱きつく。

「褒めるか貶すかどっちかにしてくれる?」

「褒めてるが?」

いい笑顔で言う。

「今のを褒めてると思えるなんて、とんだクソ頭ね」

中指を突き立てながら、笑顔で応える。
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