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レベル1
犯人捜し 2
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「あ……」
蒼太は嬉しくて藍の名前を呼ぼうとしたが、もし今この状況で藍と知り合いだとバレたら藍にも疑いがかかる。
知り合いを守るために嘘をついている。
共犯ではないか、と。
そうなると余計に面倒な事になり自分の無実を証明するのは難しくなる。
今は知らない振りをしておこう。
黙って藍の話しを聞く。
「皆さん、よく考えてください。人を殺した犯人がこんなところで寝ますか普通。俺ならそんなことしない」
そこまで言い周囲の人に同意を求める。
「確かにそうかも」
一人の女性が藍に同意する。
それを皮切りに周囲の人達もおかしいと思い始める。
「でも、それなら何で彼はここにいるんだ。それに彼は凶器を手に持っている。あんたみたいに頭のいい人ならそう考えると思って自分を容疑者から外すために一芝居うった可能性もあるだろ」
さっき蒼太に怒鳴った男性がそう言う。
「確かに貴方のいう可能性もあります。ですが、それは限りなく不可能かと」
そう言うと藍は蒼太に近づく。
周囲の人達は殺人犯の可能性がある蒼太に迷うことなく近づいた藍に正気かと驚いた。
藍は周囲の反応など無視して蒼太の頭に触れる。
ある部分に触れた瞬間蒼太が「イタッ」と声を上げる。
「やっぱり」
「やっぱり何ですか?」
さっきとは違う女性が声をかける。
「頭から少し血が流れていますね。誰かに後ろから殴られたんでしょう」
血のついた右手を見せる。
藍は蒼太の頭にしか触れていないのを全員見ていたので、蒼太が誰かに殴られたのは事実だと全員が信じた。
「あの、もし彼が本当に犯人ではないのなら何故彼はこんなことに?」
従業員の男性が疑問をぶつける。
「さぁ?それはわかりませんが、一番始めに思いつく理由は犯行現場を彼に見られ口封じに殺して罪をなすりつけようとした、じゃないですかね」
藍の言葉にそれを聞いていた人達の殆どがゾッとした。
本当にそんな恐ろしい殺人犯がこの旅館の中にいるのかと。
「とりあえず、誰か救急箱を持ってきて。それと警察に連絡して」
「は、はい」
藍に指示をされ従業員達が動き出す。
藍は警察が来ないことを知っていたが、警察を呼べと言わないのは不自然なめため一応言う。
「君大丈夫?」
蒼太の目線になり誰にも聞こえないように「このまま知らない振りをしよう。後で詳しく話を聞かせて」と言う。
「はい、大丈夫です」
蒼太は頷きながら最初の言葉の返事に聞こえるように言う。
「とりあえず、頭の手当てと手を洗ってから服に着替えよう」
蒼太の手を取り立ち上がらせる。
「ありがとうございます」
「それで、これからどうするつもりだ」
蒼太の手当てが終わると藤爾が藍に話しかける。
「うーん、とりあえず全員から話を聞くかな。まぁ、その前にやる事があるけど」
「やることですか?」
蒼太が尋ねると藍は微笑んでからこう言った。
「うん、白ちゃんの身の安全の確保」
「え?僕ですか?」
「白ちゃん。さっきは何とか切り抜けたけど、犯人が見つからなかった場合には、最悪罪をなすりつけられ犯人にされるかもしれない。それに犯人が白ちゃんを殺しにくるかもしれない。そのためにも身の安全は確保しないとね。というわけで、藤爾よろしくね」
藍の最後の言葉を聞いて二人共同じタイミングで間抜けな声を出す。
「……え?」
「……は?」
二人共藍が何を言っているのか理解できなかった。
いや、したくなかった。
蒼太は藤爾のことが怖いので二人っきりになりたくない。
藤爾は藤爾で蒼太のことを間抜けなバカだと思っているので、あまり関わりたくない。
このゲームで同じチームにならなければ一緒関わることのない真逆の世界に二人はいる。
「あ、じゃあ仲良くそこにいてね。俺は皆にこのことを伝えて、ついでに話を聞いてくるから」
そう言うと藍はこの場から去っていく。
蒼太は「藍さん!?待ってください!」と叫ぶもその声を藍は無視して他の人達のとこにいく。
蒼太はこれからどうしようと体中から冷や汗が流れる。
隣にいる藤爾の顔が見れず自分の足ばかり見る。
「……チッ」
藤爾の盛大な舌打ちが聞こえ蒼太は肩がビクッと震える。
藤爾はゲームにクリアする為にも蒼太を守るしかないと頭ではわかっているが、どうにもやる気が出ない。
もし蒼太を殺そうと犯人がきたら返り討ちにするつもりだが、藍がくるまで二人っきりでいないといけないと思うと嫌になる。
「あ、あの、迷惑をかけてすみません」
藤爾の舌打ちが自分に怒っているせいだと思い謝る。
藤爾はその謝罪を無視し何も言わない。
「お前このままじゃ、いずれ死ぬぞ」
藤爾は何を思ったのか急にそう言った。
「え?」
「俺達は全てのゲーム、つまりレベル十をクリアするつもりだ。お前は巻き込まれたから覚悟ができてないかもしれないが、いい加減決めた方がいい。これは生きるか死ぬかが決まるゲーム。自分が生き残りたいのなら他人を殺す覚悟、騙す覚悟、どんな手を使っても生き延びる覚悟をしろ。それができないならお前は死ぬ」
「……」
蒼太は何も言えなかった。
藤爾に言われなくてもそろそろ覚悟を決め、現実と向き合わなければならないとわかっていた。
今起きていることは漫画やアニメ、ゲームの世界ではなく現実。
三回目のゲームで頭を殴られ殺人犯にされかけた。
今の蒼太には全てのゲームにクリアするかゲームオーバーで奴隷になるかしか選択肢はない。
もし藍と知り合ってなかったら、蒼太は一人でこのゲームに参加し脱出ゲームで脱落し奴隷になっていたかもしれない。
今はまだ藍は蒼太のことを守りながらゲームをすることができるが、これからレベルが上がりゲーム内容も残酷でハードになる。
蒼太が変わらない限り全てをクリアすることは絶対にできない。
「あの、藤爾さん。ありがとうございます。まだお二人のように覚悟はできてはませんが、犯人は僕が捕まえます」
自分を変えるため、まずは犯人を自分の手で捕まえる!
蒼太は嬉しくて藍の名前を呼ぼうとしたが、もし今この状況で藍と知り合いだとバレたら藍にも疑いがかかる。
知り合いを守るために嘘をついている。
共犯ではないか、と。
そうなると余計に面倒な事になり自分の無実を証明するのは難しくなる。
今は知らない振りをしておこう。
黙って藍の話しを聞く。
「皆さん、よく考えてください。人を殺した犯人がこんなところで寝ますか普通。俺ならそんなことしない」
そこまで言い周囲の人に同意を求める。
「確かにそうかも」
一人の女性が藍に同意する。
それを皮切りに周囲の人達もおかしいと思い始める。
「でも、それなら何で彼はここにいるんだ。それに彼は凶器を手に持っている。あんたみたいに頭のいい人ならそう考えると思って自分を容疑者から外すために一芝居うった可能性もあるだろ」
さっき蒼太に怒鳴った男性がそう言う。
「確かに貴方のいう可能性もあります。ですが、それは限りなく不可能かと」
そう言うと藍は蒼太に近づく。
周囲の人達は殺人犯の可能性がある蒼太に迷うことなく近づいた藍に正気かと驚いた。
藍は周囲の反応など無視して蒼太の頭に触れる。
ある部分に触れた瞬間蒼太が「イタッ」と声を上げる。
「やっぱり」
「やっぱり何ですか?」
さっきとは違う女性が声をかける。
「頭から少し血が流れていますね。誰かに後ろから殴られたんでしょう」
血のついた右手を見せる。
藍は蒼太の頭にしか触れていないのを全員見ていたので、蒼太が誰かに殴られたのは事実だと全員が信じた。
「あの、もし彼が本当に犯人ではないのなら何故彼はこんなことに?」
従業員の男性が疑問をぶつける。
「さぁ?それはわかりませんが、一番始めに思いつく理由は犯行現場を彼に見られ口封じに殺して罪をなすりつけようとした、じゃないですかね」
藍の言葉にそれを聞いていた人達の殆どがゾッとした。
本当にそんな恐ろしい殺人犯がこの旅館の中にいるのかと。
「とりあえず、誰か救急箱を持ってきて。それと警察に連絡して」
「は、はい」
藍に指示をされ従業員達が動き出す。
藍は警察が来ないことを知っていたが、警察を呼べと言わないのは不自然なめため一応言う。
「君大丈夫?」
蒼太の目線になり誰にも聞こえないように「このまま知らない振りをしよう。後で詳しく話を聞かせて」と言う。
「はい、大丈夫です」
蒼太は頷きながら最初の言葉の返事に聞こえるように言う。
「とりあえず、頭の手当てと手を洗ってから服に着替えよう」
蒼太の手を取り立ち上がらせる。
「ありがとうございます」
「それで、これからどうするつもりだ」
蒼太の手当てが終わると藤爾が藍に話しかける。
「うーん、とりあえず全員から話を聞くかな。まぁ、その前にやる事があるけど」
「やることですか?」
蒼太が尋ねると藍は微笑んでからこう言った。
「うん、白ちゃんの身の安全の確保」
「え?僕ですか?」
「白ちゃん。さっきは何とか切り抜けたけど、犯人が見つからなかった場合には、最悪罪をなすりつけられ犯人にされるかもしれない。それに犯人が白ちゃんを殺しにくるかもしれない。そのためにも身の安全は確保しないとね。というわけで、藤爾よろしくね」
藍の最後の言葉を聞いて二人共同じタイミングで間抜けな声を出す。
「……え?」
「……は?」
二人共藍が何を言っているのか理解できなかった。
いや、したくなかった。
蒼太は藤爾のことが怖いので二人っきりになりたくない。
藤爾は藤爾で蒼太のことを間抜けなバカだと思っているので、あまり関わりたくない。
このゲームで同じチームにならなければ一緒関わることのない真逆の世界に二人はいる。
「あ、じゃあ仲良くそこにいてね。俺は皆にこのことを伝えて、ついでに話を聞いてくるから」
そう言うと藍はこの場から去っていく。
蒼太は「藍さん!?待ってください!」と叫ぶもその声を藍は無視して他の人達のとこにいく。
蒼太はこれからどうしようと体中から冷や汗が流れる。
隣にいる藤爾の顔が見れず自分の足ばかり見る。
「……チッ」
藤爾の盛大な舌打ちが聞こえ蒼太は肩がビクッと震える。
藤爾はゲームにクリアする為にも蒼太を守るしかないと頭ではわかっているが、どうにもやる気が出ない。
もし蒼太を殺そうと犯人がきたら返り討ちにするつもりだが、藍がくるまで二人っきりでいないといけないと思うと嫌になる。
「あ、あの、迷惑をかけてすみません」
藤爾の舌打ちが自分に怒っているせいだと思い謝る。
藤爾はその謝罪を無視し何も言わない。
「お前このままじゃ、いずれ死ぬぞ」
藤爾は何を思ったのか急にそう言った。
「え?」
「俺達は全てのゲーム、つまりレベル十をクリアするつもりだ。お前は巻き込まれたから覚悟ができてないかもしれないが、いい加減決めた方がいい。これは生きるか死ぬかが決まるゲーム。自分が生き残りたいのなら他人を殺す覚悟、騙す覚悟、どんな手を使っても生き延びる覚悟をしろ。それができないならお前は死ぬ」
「……」
蒼太は何も言えなかった。
藤爾に言われなくてもそろそろ覚悟を決め、現実と向き合わなければならないとわかっていた。
今起きていることは漫画やアニメ、ゲームの世界ではなく現実。
三回目のゲームで頭を殴られ殺人犯にされかけた。
今の蒼太には全てのゲームにクリアするかゲームオーバーで奴隷になるかしか選択肢はない。
もし藍と知り合ってなかったら、蒼太は一人でこのゲームに参加し脱出ゲームで脱落し奴隷になっていたかもしれない。
今はまだ藍は蒼太のことを守りながらゲームをすることができるが、これからレベルが上がりゲーム内容も残酷でハードになる。
蒼太が変わらない限り全てをクリアすることは絶対にできない。
「あの、藤爾さん。ありがとうございます。まだお二人のように覚悟はできてはませんが、犯人は僕が捕まえます」
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