8 / 13
レベル1
脱出ゲーム 3
しおりを挟む
「嘘。何で行き止まり」
チューベローズの花がある場所を通り花壇の所までたどり着いたのに、矢印の向こう側は壁で行き止まりだった。
藍の推理は正しいはずなのにどうして出口がないんだ。
いや、そもそも思い出すべきだった。
入って真っ直ぐに進むことはできなかったことを。
変な建物だと思ったのに、大量の花と紙に書かれてある矢印に沿って会場に向かうことで頭が埋め尽くされ忘れていた。
花壇にはチューベローズの花で出口と記されているのに、これでは出られない。
藍の推理が間違っているのなら自分達の負けは確定。
蒼太一人が絶望に打ちひしがれて諦めようとしたそのとき、藤爾が「こっからどうすんだ」と声をかける。
その言葉に蒼太は今日何度目かわからない程「え?」と間抜けな声をだす。
どうするもどうにもできない。
負けは確定しているのに何を言ってんだと言う顔で藤爾を見る。
「勿論脱出するよ」
「え?どうやってですか。もしかして壁を壊すんですか?」
自分にはできないが、藤爾ならできそうだと思いそう言った。
「まさか。いくら藤爾が強いっていっても壁を壊すなんて無理だよ」
笑いながら否定するも最後まで言い終わらずに大きな音に遮られる。
ドンッ!!
何の音だと二人が音のした方に視線を向けると壁が破壊されていた。
破壊された壁の穴から隣に部屋があるのがわかる。
「……」
藤爾は無言で二人を睨みつけ、もう一度同じことを言ってみろと目で訴える。
「勿論、藤爾なら壁を壊すことなんて朝飯前だけどそれじゃあ、正しいルートで出たことにならないから失格になるよ」
ハハッと乾いた笑い声をあげ急いで訂正する。
「そ、そうですよね。藤爾さん程強い人だったら余裕で壁なんていくらでも破壊できそうですよね」
蒼太も藤爾の機嫌を取ろうと必死に持ち上げる。
「……」
藤爾は二人に何も言わなかったが、その代わり凶悪な笑みをむける。
ゾクッ。
二人はその笑みを見た瞬間体中に悪寒が走り二度と藤爾を怒らせないと誓う。
「……あの、それでどうやって脱出するんですか?」
重い空気に耐え切れず震える声で藍に話しかける。
「ああ、それはね。ここからだよ」
矢印の指す方向は壁。
藍はその壁を叩く。
「え?でも、そこは壁で通れないんじゃ……」
さっきもしたやり取りをもう一度する。
「よーく見て。この絵には何が書かれてある」
藍に言われ蒼太は目を凝らしその絵を見る。
「……あ、もしかしてこの花ですか」
絵に描かれてあるのが白い花だとはわかったが、同じ花なのかと少し疑ってしまう。
「うん。この絵を取り外すと……やっぱり」
絵の下にはボタンがあった。
藍は躊躇うことなくそのボタンを押す。
すると、ギイイイッー壁が動く音がする。
「嘘。道ができた」
矢印の指す場所に道ができた。
隠し通路があった。
蒼太は藍の冷静さに感心した。
普通隠し通路があるなんて思うわけがない。
蒼太一人だったら見つけられず痺れを切らして入り口から出てしまっていた。
「さあ、行こうか」
藍は躊躇うことなく隠し通路に足を踏み入れどんどん先へと進んでいく。
藤爾もその後に続いていく。
蒼太も二人の後を追うように小走りで追いかける。
隠し通路は一本道で複雑な道ではなく、ほんの数分歩いただけで外へ出た。
そこには東雲が待機しており三人の顔を見ると頭を下げ「おめでとうございます。クリアでございます」と言う。
「はぁ、助かった」
東雲のクリア宣言で力が抜けその場に座り込む。
借金とペナルティーが回避され安堵する。
心の中で何度も藍に頭を下げお礼を言う。
本当は直接言いたかったが、そんな気力は残っていない。
「それでは、お三方を今から別のゲーム会場にご案内しますのであちらの車にお乗りください」
「え!?これで終わりじゃないんですか」
もう家に帰れると思っていたのに、またゲームをしろと言われ無理だと泣きそうになる。
「申し訳ありませんが、今日は後もう一つゲームをしていただきます」
悪いと思っていないのは態度で丸わかりだが、東雲はバレても問題ないといった感じだ。
「そんな……」
せっかく助かったと思ったのに……。
蒼太は今度はどんなゲームをしなければいけないのか、と考えただけで頭が痛くなり逃げ出しなくなる。
「まぁまぁ、白ちゃん落ち着いて。俺がどんなゲームもクリアするから大丈夫。心配しないで、ね」
手を伸ばし蒼太を立ち上がらせようとする。
「はい。よろしくお願いします」
藍の手を掴み立ち上がる。
今この瞬間、蒼太は人物の運命を藍に託した。
「準備はできましたら行きましょうか」
蒼太の覚悟が決まると車に全員を乗せ次の会場へと連れていく。
「次の会場はこちらになります」
三人が連れてこられたのは廃神社。
「なんか、出てきそうですね」
藍の後ろに隠れる。
建物から出たときはまだ空はオレンジ色だったが、今は暗くなっている。
そのせいか雰囲気があり幽霊や邪神がいると言われたら信じてしまうほど異様な空間だった。
「出ますよ、ここ」
蒼太の呟きに東雲がニッコリと胡散臭い笑みを貼り付け答える。
「ハハッ、またまた……冗談でよね」
蒼太は笑って誤魔化そうとするも東雲の顔見て本当なのだと信じてしまい、急いでこの場から逃げ出そうとする。
「あああああーーーー」
叫びながら逃げ出した蒼太は振り向いてすぐ何かにぶつかり、その反動で後ろに倒れてしまう。
「大丈夫?……って鼻血出てるよ」
大声を出したと思ったらいつのまにか自分より前にいて倒れている。
何が起きたんだと驚くも、とりあえず蒼太を起こそうと近づくと暗くてよく見えなかったが鼻から何か出てると思いスマホの光で照らすと血が流れているのに気づく。
「え?本当ですか」
「ちょっと待って……これ使って」
服で拭おうとする蒼太をとめ、ハンカチを使うよう手渡す。
「ありがとうござい……」
ハンカチを受け取ろうとすると、右手に物凄い痛みが走り泣きそうになる。
「どうしたの?」
光を手元に当てると右手が腫れていた。
「今すぐ病院に行った方がいい」
「それは出来ません」
藍が蒼太を病院に連れて行こうとこの場から立ち去ろうとすると東雲が止める。
「もうお三方はゲーム会場に足を踏み入れました。ゲームを終えるまでは立ち去ることはできません。それでも立ち去るというのなら負けとさせていただきます」
東雲の部下達が廃神社から出さないよう道を塞ぐ。
蒼太は部下達の姿を見て自分がぶつかったのは彼らの誰かだと理解した。
「僕は大丈夫です。やりましょう」
「……わかった。すぐ終わらそう」
チューベローズの花がある場所を通り花壇の所までたどり着いたのに、矢印の向こう側は壁で行き止まりだった。
藍の推理は正しいはずなのにどうして出口がないんだ。
いや、そもそも思い出すべきだった。
入って真っ直ぐに進むことはできなかったことを。
変な建物だと思ったのに、大量の花と紙に書かれてある矢印に沿って会場に向かうことで頭が埋め尽くされ忘れていた。
花壇にはチューベローズの花で出口と記されているのに、これでは出られない。
藍の推理が間違っているのなら自分達の負けは確定。
蒼太一人が絶望に打ちひしがれて諦めようとしたそのとき、藤爾が「こっからどうすんだ」と声をかける。
その言葉に蒼太は今日何度目かわからない程「え?」と間抜けな声をだす。
どうするもどうにもできない。
負けは確定しているのに何を言ってんだと言う顔で藤爾を見る。
「勿論脱出するよ」
「え?どうやってですか。もしかして壁を壊すんですか?」
自分にはできないが、藤爾ならできそうだと思いそう言った。
「まさか。いくら藤爾が強いっていっても壁を壊すなんて無理だよ」
笑いながら否定するも最後まで言い終わらずに大きな音に遮られる。
ドンッ!!
何の音だと二人が音のした方に視線を向けると壁が破壊されていた。
破壊された壁の穴から隣に部屋があるのがわかる。
「……」
藤爾は無言で二人を睨みつけ、もう一度同じことを言ってみろと目で訴える。
「勿論、藤爾なら壁を壊すことなんて朝飯前だけどそれじゃあ、正しいルートで出たことにならないから失格になるよ」
ハハッと乾いた笑い声をあげ急いで訂正する。
「そ、そうですよね。藤爾さん程強い人だったら余裕で壁なんていくらでも破壊できそうですよね」
蒼太も藤爾の機嫌を取ろうと必死に持ち上げる。
「……」
藤爾は二人に何も言わなかったが、その代わり凶悪な笑みをむける。
ゾクッ。
二人はその笑みを見た瞬間体中に悪寒が走り二度と藤爾を怒らせないと誓う。
「……あの、それでどうやって脱出するんですか?」
重い空気に耐え切れず震える声で藍に話しかける。
「ああ、それはね。ここからだよ」
矢印の指す方向は壁。
藍はその壁を叩く。
「え?でも、そこは壁で通れないんじゃ……」
さっきもしたやり取りをもう一度する。
「よーく見て。この絵には何が書かれてある」
藍に言われ蒼太は目を凝らしその絵を見る。
「……あ、もしかしてこの花ですか」
絵に描かれてあるのが白い花だとはわかったが、同じ花なのかと少し疑ってしまう。
「うん。この絵を取り外すと……やっぱり」
絵の下にはボタンがあった。
藍は躊躇うことなくそのボタンを押す。
すると、ギイイイッー壁が動く音がする。
「嘘。道ができた」
矢印の指す場所に道ができた。
隠し通路があった。
蒼太は藍の冷静さに感心した。
普通隠し通路があるなんて思うわけがない。
蒼太一人だったら見つけられず痺れを切らして入り口から出てしまっていた。
「さあ、行こうか」
藍は躊躇うことなく隠し通路に足を踏み入れどんどん先へと進んでいく。
藤爾もその後に続いていく。
蒼太も二人の後を追うように小走りで追いかける。
隠し通路は一本道で複雑な道ではなく、ほんの数分歩いただけで外へ出た。
そこには東雲が待機しており三人の顔を見ると頭を下げ「おめでとうございます。クリアでございます」と言う。
「はぁ、助かった」
東雲のクリア宣言で力が抜けその場に座り込む。
借金とペナルティーが回避され安堵する。
心の中で何度も藍に頭を下げお礼を言う。
本当は直接言いたかったが、そんな気力は残っていない。
「それでは、お三方を今から別のゲーム会場にご案内しますのであちらの車にお乗りください」
「え!?これで終わりじゃないんですか」
もう家に帰れると思っていたのに、またゲームをしろと言われ無理だと泣きそうになる。
「申し訳ありませんが、今日は後もう一つゲームをしていただきます」
悪いと思っていないのは態度で丸わかりだが、東雲はバレても問題ないといった感じだ。
「そんな……」
せっかく助かったと思ったのに……。
蒼太は今度はどんなゲームをしなければいけないのか、と考えただけで頭が痛くなり逃げ出しなくなる。
「まぁまぁ、白ちゃん落ち着いて。俺がどんなゲームもクリアするから大丈夫。心配しないで、ね」
手を伸ばし蒼太を立ち上がらせようとする。
「はい。よろしくお願いします」
藍の手を掴み立ち上がる。
今この瞬間、蒼太は人物の運命を藍に託した。
「準備はできましたら行きましょうか」
蒼太の覚悟が決まると車に全員を乗せ次の会場へと連れていく。
「次の会場はこちらになります」
三人が連れてこられたのは廃神社。
「なんか、出てきそうですね」
藍の後ろに隠れる。
建物から出たときはまだ空はオレンジ色だったが、今は暗くなっている。
そのせいか雰囲気があり幽霊や邪神がいると言われたら信じてしまうほど異様な空間だった。
「出ますよ、ここ」
蒼太の呟きに東雲がニッコリと胡散臭い笑みを貼り付け答える。
「ハハッ、またまた……冗談でよね」
蒼太は笑って誤魔化そうとするも東雲の顔見て本当なのだと信じてしまい、急いでこの場から逃げ出そうとする。
「あああああーーーー」
叫びながら逃げ出した蒼太は振り向いてすぐ何かにぶつかり、その反動で後ろに倒れてしまう。
「大丈夫?……って鼻血出てるよ」
大声を出したと思ったらいつのまにか自分より前にいて倒れている。
何が起きたんだと驚くも、とりあえず蒼太を起こそうと近づくと暗くてよく見えなかったが鼻から何か出てると思いスマホの光で照らすと血が流れているのに気づく。
「え?本当ですか」
「ちょっと待って……これ使って」
服で拭おうとする蒼太をとめ、ハンカチを使うよう手渡す。
「ありがとうござい……」
ハンカチを受け取ろうとすると、右手に物凄い痛みが走り泣きそうになる。
「どうしたの?」
光を手元に当てると右手が腫れていた。
「今すぐ病院に行った方がいい」
「それは出来ません」
藍が蒼太を病院に連れて行こうとこの場から立ち去ろうとすると東雲が止める。
「もうお三方はゲーム会場に足を踏み入れました。ゲームを終えるまでは立ち去ることはできません。それでも立ち去るというのなら負けとさせていただきます」
東雲の部下達が廃神社から出さないよう道を塞ぐ。
蒼太は部下達の姿を見て自分がぶつかったのは彼らの誰かだと理解した。
「僕は大丈夫です。やりましょう」
「……わかった。すぐ終わらそう」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
忘れられし被害者・二見華子 その人生と殺人事件について
須崎正太郎
ミステリー
用水路で発見された、若き女性の惨殺死体。
その身体には中学校の卒業写真が、画びょうで刺されて貼りつけられていた。
写真にうつっていた女の名前は、二見華子(ふたみはなこ)。
用水路沿いにある古アパートの一室で暮らしていた華子の人生は、いかようなものだったのか。なぜこのような遺体と化したのか。
地方紙の記者は、華子の人生と深く関わってきた六人の人物を見つけだし、彼女の人となりを取材する。
その実態は。
惨殺事件の真相は――
RoomNunmber「000」
誠奈
ミステリー
ある日突然届いた一通のメール。
そこには、報酬を与える代わりに、ある人物を誘拐するよう書かれていて……
丁度金に困っていた翔真は、訝しみつつも依頼を受け入れ、幼馴染の智樹を誘い、実行に移す……が、そこである事件に巻き込まれてしまう。
二人は密室となった部屋から出ることは出来るのだろうか?
※この作品は、以前別サイトにて公開していた物を、作者名及び、登場人物の名称等加筆修正を加えた上で公開しております。
※BL要素かなり薄いですが、匂わせ程度にはありますのでご注意を。
探偵たちに逃げ場はない
探偵とホットケーキ
ミステリー
「探偵社アネモネ」には三人の探偵がいる。
ツンデレ気質の水樹。紳士的な理人。そしてシャムネコのように気紛れな陽希。
彼らが様々な謎を解決していくミステリー。
しかし、その探偵たちにも謎があり……
下記URLでも同様の小説を更新しています。
https://estar.jp/novels/26170467
過激なシーンノーカット版
https://kakuyomu.jp/users/tanteitocake
時の呪縛
葉羽
ミステリー
山間の孤立した村にある古びた時計塔。かつてこの村は繁栄していたが、失踪事件が連続して発生したことで、村人たちは恐れを抱き、時計塔は放置されたままとなった。17歳の天才高校生・神藤葉羽は、友人に誘われてこの村を訪れることになる。そこで彼は、幼馴染の望月彩由美と共に、村の秘密に迫ることになる。
葉羽と彩由美は、失踪事件に関する不気味な噂を耳にし、時計塔に隠された真実を解明しようとする。しかし、時計塔の内部には、過去の記憶を呼び起こす仕掛けが待ち受けていた。彼らは、時間が歪み、過去の失踪者たちの幻影に直面する中で、次第に自らの心の奥底に潜む恐怖と向き合わせることになる。
果たして、彼らは村の呪いを解き明かし、失踪事件の真相に辿り着けるのか?そして、彼らの友情と恋心は試される。緊迫感あふれる謎解きと心理的恐怖が交錯する本格推理小説。
ザイニンタチノマツロ
板倉恭司
ミステリー
前科者、覚醒剤中毒者、路上格闘家、謎の窓際サラリーマン……社会の底辺にて蠢く四人の人生が、ある連続殺人事件をきっかけに交錯し、変化していくノワール群像劇です。犯罪に関する描写が多々ありますが、犯罪行為を推奨しているわけではありません。また、時代設定は西暦二〇〇〇年代です。
青い桜 山梨県警捜査5課
ツタンカーメン
ミステリー
晴天の空に高くそびえたつ富士の山。多くの者を魅了する富士の山の麓には、美しくもありどこかたくましさを感じる河口湖。御坂の峠を越えれば、県民を見守る甲府盆地に囲まれた街々が顔をのぞかせる。自然・生命・感動の三拍子がそろっている甲斐の国山梨県。並行して進化を遂げているのが凶悪犯罪の数々。これは八十万人の平和と安心をまもる警察官の話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる