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レベル1
脱出ゲーム 2
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「あの、藍さん。本当にこの道であってるんですか?」
蒼太達は入ってきた扉から出て来た道を戻っていた。
本当にこの道が正しいのかわからないが、一切迷うことなく歩く藍を信じて後ろを歩くもどうしても疑ってしまう。
わざわざこんな大きな建物を会場にしたのに来た道を戻るのが正解とは思えない。
「うん、あってるよ。心配しないで、白ちゃん」
そう言われるもどうしても不安は拭えない。
そんな蒼太の心情を察し藍は歩きながらこのゲームの解説を始める。
「これはレベル一の最初のゲーム。単純で簡単なゲーム。そこまで難しく考えるものじゃない。答えは最初から記されていたんだよ。それに気づけるかどうかのゲーム。それがこのゲームの狙い」
「は?俺はそんな答え見てないぞ。いつ見た」
語尾を伸ばす話し方で緊張感が台無しになる。
大して気になってもいないのに、暇つぶしに丁度いいと思い説明するよう求める。
「僕もそんなの見てないです。いつ見たんですか?」
「いーや、二人も見てるよ。この建物に入った瞬間にね」
そう言うと藍は自分のスマホを蒼太に渡しす。
蒼太はそれを受け取り映像を再生する。
車を降りてからの映像で建物に入った時から東雲が退出するまで全て録画されていた。
「え、いつの間に」
藍とずっと一緒にいたのにスマホをいじっていたことに気が付かなかった。
「で、これのどこに答えが書いてあんだよ」
映像を注意深く見てもどこにも書いてない。
「入ってすぐの花を見て。おかしいところない」
「あるに決まってんだろ。建物の中に花壇を作ってんだ。入ってすぐ花畑かと錯覚するには充分な量が植えてあるんだ。普通に考えておかしいだろ」
建物に入った瞬間、ここは花の国かと錯覚してしまう程の花が植えられていた。
それだけではなく飾りも絵も床、壁、天井も花の絵だった。
「まぁそうなんだけど、そうじゃなくて、花壇に植えられてある花をよく見て」
藤爾の言いたいことはよくわかるがそうじゃないと否定する。
「これと言っておかしいところはないと思いますけど」
暫く映像を見て答えを見つけようとするも何も見つからない。
強いて言うなら藤爾が言ったように花が大量にあることくらいだ。
「藤爾も?」
「ああ、わかんねー」
「そう。答えはここ」
そう言うと映像を止め答えのある場所を拡大する。
「ここですか?」
藍があると言った場所は花壇だった。
蒼太も最初建物の中に花壇があるのはおかしいと思い、一番最初にここに答えがあるのではないかと疑い何度も映像を見たが何も見つからなかった。
それなのにそこにあると言われ複雑な気持ちになる。
「そうそこ。よく見てみて」
藍にそう言われ藤爾と一緒に見るも答えを見つけることはできなかった。
「降参だ。もう教えろ」
暇つぶしにも飽き早く外に出たくなる。
「わかった。この花壇に植えてあるこの花、白い花をみて」
藍はチューベローズの花を指差す。
「……あの、見ましたけどこの花がどうしたんですか」
藍に言われてチューベローズを注意深く見るも全くわからない。
「……ああ、そう言うことか。出口って書いてあるな」
蒼太が藍に質問したのと同時に藤爾が言う。
「……え?……え?どこに」
チューベローズと藤爾を交互に見つめるも出口という言葉は見つからない。
「白ちゃん、落ち着いて。一本だけ見るんじゃない。この花壇に植えられている、全てのこの花をみて」
「あ、あああああああーー!!」
蒼太の大声に「うるさ」と藤爾は顔を顰め、藍は元気だな、と苦笑いする。
「え、嘘。本当に出口って書いてある。こんなことってあるんだ。信じられない」
色んな花が植えられているがチューベローズだけをみると出口と矢印の上のマークになっていた。
本当に入った瞬間から答えはあったんだと、こんな手で教えるなんて信じられないとある意味感心してしまう。
「つまり、出口はこの矢印が示す場所ってこと」
そこまで藍が言ってようやくこのゲームにクリアできると蒼太は喜ぶ。
「じゃあ、来た道を戻ってここまで行けばいいってことですか」
「いや、違うよ。そうじゃない」
蒼太は何だ簡単だと思い歩き出そうとするもすぐに藍に否定され「え?」と間抜けな声を出してしまう。
違う、その言葉が蒼太の頭の中で繰り返される。
一体何が違うと言うんだ。
「ゲーム内容を覚えてる」
その問いに蒼太は「はい」と返事し「好きな花を選んでね、ですよね」と答える。
「うん、そう。この好きな花というのは、言い換えれば正しい花を選べってこと。ゲーム説明を聞いた部屋にあった五つの扉の上に描かれていた花を覚えてる?」
「いや、覚えてないです」
扉の上に絵なんて描かれてあったか?と思うも、藍の言葉であったような気もしてくる。
正直描かれていた気もするが何の花かは覚えていない。
「五つの扉の上には俺達が通った白い花と赤、青、黄色、紫の花があった。そして、今ここにも至る所に色んな色の花がある」
廊下、階段、見える範囲だけでも二十以上の花瓶の中に花が添えられてある。
「え?つまりこの白い花が正しい花でそれに沿って外に出ないとクリアにはならないってことですか?」
「そういうこと」
そこまで藍が言うと蒼太はさっきいた東雲の言葉を思い出した。
ーー脱出ルートは色々ありますが正しいルートは一つです。
この言葉が示す意味、封筒の中にあった紙に書かれていた文字が一つに重なり、正しいルートが何かわかった。
「藍さん。凄いです。あんな短い時間で正解に辿り着くなんて、尊敬します」
無事にゲームをクリアでき、奴隷にならなくて済む。
そう思うと張り詰めていた糸が切れる。
藍に任せていれば大丈夫だ。
最初から信じていればこんなに疲れることはなかったと少しでも疑ってしまったことに罪悪感を覚える。
「そりゃどうも。じゃあ、行こうか」
チューベローズの花を辿って花壇の元へと向かう。
蒼太達は入ってきた扉から出て来た道を戻っていた。
本当にこの道が正しいのかわからないが、一切迷うことなく歩く藍を信じて後ろを歩くもどうしても疑ってしまう。
わざわざこんな大きな建物を会場にしたのに来た道を戻るのが正解とは思えない。
「うん、あってるよ。心配しないで、白ちゃん」
そう言われるもどうしても不安は拭えない。
そんな蒼太の心情を察し藍は歩きながらこのゲームの解説を始める。
「これはレベル一の最初のゲーム。単純で簡単なゲーム。そこまで難しく考えるものじゃない。答えは最初から記されていたんだよ。それに気づけるかどうかのゲーム。それがこのゲームの狙い」
「は?俺はそんな答え見てないぞ。いつ見た」
語尾を伸ばす話し方で緊張感が台無しになる。
大して気になってもいないのに、暇つぶしに丁度いいと思い説明するよう求める。
「僕もそんなの見てないです。いつ見たんですか?」
「いーや、二人も見てるよ。この建物に入った瞬間にね」
そう言うと藍は自分のスマホを蒼太に渡しす。
蒼太はそれを受け取り映像を再生する。
車を降りてからの映像で建物に入った時から東雲が退出するまで全て録画されていた。
「え、いつの間に」
藍とずっと一緒にいたのにスマホをいじっていたことに気が付かなかった。
「で、これのどこに答えが書いてあんだよ」
映像を注意深く見てもどこにも書いてない。
「入ってすぐの花を見て。おかしいところない」
「あるに決まってんだろ。建物の中に花壇を作ってんだ。入ってすぐ花畑かと錯覚するには充分な量が植えてあるんだ。普通に考えておかしいだろ」
建物に入った瞬間、ここは花の国かと錯覚してしまう程の花が植えられていた。
それだけではなく飾りも絵も床、壁、天井も花の絵だった。
「まぁそうなんだけど、そうじゃなくて、花壇に植えられてある花をよく見て」
藤爾の言いたいことはよくわかるがそうじゃないと否定する。
「これと言っておかしいところはないと思いますけど」
暫く映像を見て答えを見つけようとするも何も見つからない。
強いて言うなら藤爾が言ったように花が大量にあることくらいだ。
「藤爾も?」
「ああ、わかんねー」
「そう。答えはここ」
そう言うと映像を止め答えのある場所を拡大する。
「ここですか?」
藍があると言った場所は花壇だった。
蒼太も最初建物の中に花壇があるのはおかしいと思い、一番最初にここに答えがあるのではないかと疑い何度も映像を見たが何も見つからなかった。
それなのにそこにあると言われ複雑な気持ちになる。
「そうそこ。よく見てみて」
藍にそう言われ藤爾と一緒に見るも答えを見つけることはできなかった。
「降参だ。もう教えろ」
暇つぶしにも飽き早く外に出たくなる。
「わかった。この花壇に植えてあるこの花、白い花をみて」
藍はチューベローズの花を指差す。
「……あの、見ましたけどこの花がどうしたんですか」
藍に言われてチューベローズを注意深く見るも全くわからない。
「……ああ、そう言うことか。出口って書いてあるな」
蒼太が藍に質問したのと同時に藤爾が言う。
「……え?……え?どこに」
チューベローズと藤爾を交互に見つめるも出口という言葉は見つからない。
「白ちゃん、落ち着いて。一本だけ見るんじゃない。この花壇に植えられている、全てのこの花をみて」
「あ、あああああああーー!!」
蒼太の大声に「うるさ」と藤爾は顔を顰め、藍は元気だな、と苦笑いする。
「え、嘘。本当に出口って書いてある。こんなことってあるんだ。信じられない」
色んな花が植えられているがチューベローズだけをみると出口と矢印の上のマークになっていた。
本当に入った瞬間から答えはあったんだと、こんな手で教えるなんて信じられないとある意味感心してしまう。
「つまり、出口はこの矢印が示す場所ってこと」
そこまで藍が言ってようやくこのゲームにクリアできると蒼太は喜ぶ。
「じゃあ、来た道を戻ってここまで行けばいいってことですか」
「いや、違うよ。そうじゃない」
蒼太は何だ簡単だと思い歩き出そうとするもすぐに藍に否定され「え?」と間抜けな声を出してしまう。
違う、その言葉が蒼太の頭の中で繰り返される。
一体何が違うと言うんだ。
「ゲーム内容を覚えてる」
その問いに蒼太は「はい」と返事し「好きな花を選んでね、ですよね」と答える。
「うん、そう。この好きな花というのは、言い換えれば正しい花を選べってこと。ゲーム説明を聞いた部屋にあった五つの扉の上に描かれていた花を覚えてる?」
「いや、覚えてないです」
扉の上に絵なんて描かれてあったか?と思うも、藍の言葉であったような気もしてくる。
正直描かれていた気もするが何の花かは覚えていない。
「五つの扉の上には俺達が通った白い花と赤、青、黄色、紫の花があった。そして、今ここにも至る所に色んな色の花がある」
廊下、階段、見える範囲だけでも二十以上の花瓶の中に花が添えられてある。
「え?つまりこの白い花が正しい花でそれに沿って外に出ないとクリアにはならないってことですか?」
「そういうこと」
そこまで藍が言うと蒼太はさっきいた東雲の言葉を思い出した。
ーー脱出ルートは色々ありますが正しいルートは一つです。
この言葉が示す意味、封筒の中にあった紙に書かれていた文字が一つに重なり、正しいルートが何かわかった。
「藍さん。凄いです。あんな短い時間で正解に辿り着くなんて、尊敬します」
無事にゲームをクリアでき、奴隷にならなくて済む。
そう思うと張り詰めていた糸が切れる。
藍に任せていれば大丈夫だ。
最初から信じていればこんなに疲れることはなかったと少しでも疑ってしまったことに罪悪感を覚える。
「そりゃどうも。じゃあ、行こうか」
チューベローズの花を辿って花壇の元へと向かう。
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