人生ゲーム

アリス

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レベル1

夕霧

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「初めまして、白様。私は夕霧と申します。よろしくお願いします」

「あ、はい。よろしくお願いします」

夕霧につられ頭を下げる。

「白様。後ろにいらっしゃる、お二方は一緒にゲームに参加されるお仲間で間違いないでしょうか」

「あ、はい、そうです」

藍ともう一人。

顔は整っているが怖い顔の男がいる。

蒼太は後ろを振り向くことなく返事する。

後ろから威圧されてさっきから子鹿のように足を震わせる。

何で自分がこんな目に遭うんだと怖い顔の男を連れてきた藍を恨む。

夕霧が来る数分前、蒼太は一人で迎えが来るのを待っていた。

藍は朝早くに出かけたまま帰ってこない。

もしかしてバックれたのかと焦って捜しに行こうとしたが、すれ違ったらいけないと思い家から出られなかった。

そうして時間が過ぎていき、もう少しで約束の時間になるという頃に「お待たせ」と呑気な声を出しながら扉を開けた。

「藍さん」

よかった、帰ってきたと安堵から泣きそうになるが、すぐに藍の後ろの男が視界に入り別の意味で泣きそうになった。

「紹介するね。彼は百鬼藤爾(なきりとうじ)。一緒に参加してくれる」

そこまで言うと今度は藤爾に蒼太のことを紹介する。

「で、こっちが白蒼太(つくも蒼太)ちゃん。二人共よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

蒼太は藍につられて挨拶するも、藤爾は興味ないのか視線が一度も合わない。

藤爾は藍の誘いに目的があったから乗ったが、同じチームの一人がこんな鈍臭い奴で大丈夫なのかとここの中で悪態を吐く。

やると決めた以上降りるつもりはないが、それでも足手纏いなのは明白で嫌になる。

「……あの、藍さん」

藤爾が怖すぎて声が裏返る。

「ん?なに」

「他の人はまだこないんですか?」

協力者は四人までいいと書いてあった。

昨日、藍は自分が残りの三人連れてくるから心配ないと言っていたが来たのは藤爾だけ。

迎えがくるまで後五分もない。

早くしないと三人でいくことになる。

「あー、それね……」

歯切れが悪い。

「ごめんね。後二人は連れてこれなかった。一人は連絡つかなくて、もう一人はレベル五までクリアできたら仲間になるって言ってさ。本当ごめんね。まあ、藤爾もいるしさ大丈夫だよ」

申し訳なさそうな顔して謝るが全然悪いと思っていない軽いノリで話す。

「あー、そうなんですか。なら、仕方ないですね」

藍がいなければ一人で参加する羽目になっていたので文句を言える立場ではない。

そうして話しているうちに時間は経ち十二時になるとチャイムが鳴った。

「はい」

扉を開けるとそこにはスーツを着た若い男がいた。

「初めまして。私は夕霧と申します。貴方は白蒼太様でお間違いないでしょうか」

「はい。そうです」

見た目は好青年なのにどこか危険を感じる。

やっぱり変なゲームに強制参加させようとさせる側の人間だなと思う。

「そちらにいるお二方が協力者で間違いないですか」

夕霧は二人を見て口元が緩む。

顔の厳つい男は裏社会では有名な半グレ組織のリーダー。

そしてもう一人の男は少し前レベル七をクリアした男。

惜しくも八はクリアできなかったが、夕霧は何度か藍のゲームの進行役として関わったことがある。

蒼太のような男がどうしてこの二人と知り合ったのかは謎だが、面白くなってきたとゲームが始めるのが楽しみで仕方なくなる。

「はい」

「そうですか。わかりました。では、お三方を会場までご案内させていただきますので、あちらのお車にお乗りください」

夕霧に促されるまま車に乗り目隠しをされる。

暫くどこに連れて行かれるのかと不安でたまらなかったのに、急に眠気に襲われ起こされるまま眠ってしまう。

「……さ……白様」

「あ、はい」

夕霧の声に呼び起こされ咄嗟に返事をする。

「会場に着きました。今からルール説明がありますのであちらの建物に入ってください」

車から降りるとそこは知らない建物だった。

夕霧はここまでなのかついてくる気配はない。

「じゃあ、行こうか」

藍の言葉に従うように藤爾も建物の中に入る。

だが、蒼太だけはその場から動けなかった。

さっきから建物の中に入るのは危険だと頭の中で警報が鳴っていた。

理由はわからないけど目に見えない恐怖に包まれているような気がしてたまらなかった。

参加拒否ができない以上建物の中に入らなければいけないと頭ではわかっているのに、どうしても足が動かせずにいた。

「白様。どうかなさいましたか」

中々入ろうとしない蒼太に後ろから声をかける。

「いえ、何でもないです」

たった数分立っていただけなのに汗が止まらず服がぐっしょりと濡れた。

「そうですか。では、早く中にお入りください」

言葉遣いは丁寧なのに、さっさと入れと圧を感じる。

「はい」

夕霧の圧に促されるように建物の中に入る。

「覚悟は決まった」

蒼太が建物に自分から入ってくるのを待っていた。

「どうでもいい。さっさと行くぞ」

語尾を伸ばす独特の話し方をする。

藤爾は壁に貼ってある矢印にそってどんどんと先に進んでいく。

そんな藤爾を追いかけるように二人も後を追う。

最後まで進むと会場と書かれた紙が貼ってある扉の前に辿り着いた。

「中に入れってことですよね」

蒼太の呟きに藍が「だろうね」と答え扉を開け中に入る。
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