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招待状
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「お疲れ様です。お先に失礼します」
「おー、お疲れまた明日」
「はい」
蒼太はパチンコの店長に挨拶してから家に帰る。
「はぁ、今日も疲れた。明日は朝から宅配バイトで夕方からパチンコか……漸く念願の一人暮らしを手に入れたのに結局僕のような人間にはこんな生活しかできないってことか」
深夜だというのにまだ、街は明るく人も多い。
自分とは違って楽しそうな人達を羨ましそうな目で見てしまう。
自分もあの両親のもとに生まれてなければ幸せな未来があったのかもしれない。
そう思うと心の中が真っ黒に染まっていきどうしようもない破壊衝動に駆られそうになると、後ろから声をかけられ我に返る。
「あれ?もしかして白(つくも)ちゃん?何してんの、こんなところで」
「……藍さん」
ゆっくりと後ろを振り向き最近知り合ったばかりの藍がそこにいて驚く。
「藍さんこそどうしてここに?」
「俺?俺は散歩だよ」
「そうですか。僕はバイト帰りです」
「そう、お疲れ……ねえ、もしよかったら今から一杯しない?奢るからさ」
藍の誘いを最初断ろうとするも、断ったところで風呂に入って寝るだけなんてつまらないと人生だなと思い「……はい、します」と了承する。
「うん。そうと決まれば酒買いに行こう。飲む場所は白ちゃん家でいい?」
「はい、大丈夫です」
今いる場所からなら蒼太の家は約十分で着く距離。
藍の家は知らないし、明日もバイトがあるのに一回帰ってから向かうのは面倒くさい。
それなら自分家の方がいい。
「じゃあ、コンビニに行こう」
目の前にあるコンビニに入り大量の酒とおつまみを買い蒼太の家へと向かう。
「藍さん。僕はね、ようやく両親から解放されて幸せなんです。それなのに、僕のような学歴も特技もない人間にできる仕事なんて……」
蒼太は酔うと毎回同じことを繰り返し言う。
藍はいつものことかとバラエティ番組を観ながら聞き流す。
暫くすると扉が叩かれボトッと玄関扉のポストに何かが入れられる。
「白ちゃん。何か届いたよ」
こんな深夜に届け物なんて怪しいが好奇心には勝てず、今にも寝そうな蒼太の肩を揺すり教える。
「本当ですか」
おぼつかない足取りで玄関までいきポストから入れられた物を取り出す。
「何だった?」
「何か黒い手紙ですね……誰からだ?」
どこを見ても何も書かれていない。
悪戯かとゴミ箱にしてようとすると藍が慌てて止める。
「一旦見てみよう。それから捨てるか決めよう」
「確かにそうですね。藍さん開けてください」
酔った頭では何も考えられず藍の言う事を素直に聞く。
「(黒い封筒に、金の封蝋印。間違いない)」
藍は胸の高まりを抑えきれず口元が緩んでしまう。
「じゃあ、開けるね」
封を開け中に入っているものを出すと黒い紙が一枚と銀の鍵だった。
「紙と鍵?何で?」
「さぁ?何でだろうね。まぁ、とりあえず読むね」
黒い紙に白い字で書かれてある内容を読んでいく。
「おめでとうございます。貴方はこの度集団人生ゲームの百人のプレイヤーの一人に選ばれました。このゲームに全てクリアすれば貴方は望むものを手に入れる事ができます。一週間後の十二時に家までお迎えにあがります。それまでに一緒に連れて行く人を見つけてください。連れて行ける人は最大四人までです。残念ながら参加拒否はできませんのでご了承ください、だって」
読み終わると紙を蒼太に渡す。
「……えっと、どういうことですか。人生ゲーム?……あ、夢か」
「落ち着いて、夢じゃないから」
「やっぱり、そうですよね」
藍の方を向くと蒼太は凍りついた。
藍と知り合って間もないがこんな表情をすると思っていなかった。
笑っているのに怒っているような、喜んでいるのに笑っていないような、普通の人が絶対にしない顔に昔の記憶が思い出され恐怖で手足が冷たくなっていく。
「ねぇ、白ちゃん。これどうするつもり?」
「どうって……わかりません。僕には頼れる人はいないし、こんな意味不明のゲームを一緒にやろうと誘える人なんていませんから……辞退しようと思います」
せっかく気持ちよく酔えていたのに変な手紙のせいで酔いが覚め気分は最悪だ。
「うーん、でもこれ参加拒否はできないって書いてあるよ」
「そんなの困ります!」
「ちょ、落ち着いて。俺に言っても仕方ないよ」
蒼太にいきなり肩を掴まれ揺すられ食べたものが出そうになり慌てて落ち着くよう促す。
「そうですよね。すみません」
こんなのどうしたらいいんだ。
蒼太は頭を抱えて項垂れる。
「白ちゃん。俺から提案があるんだけどさ……」
その声に蒼太は顔を上げて藍をみる。
「俺が一緒にそのゲーム参加するよ」
「……いいんですか。有難いですけど、本当にこんな不気味なゲームに一緒に参加してくれるんですか」
「うん。なんなら、他のメンバーも俺が集めようか」
その提案に蒼太は目を輝かせ「本当ですか」と聞く。
「うん、本当だよ。任せて」
「ありがとうございます、藍さん」
藍が一緒に参加してくれるなら大丈夫だと安心する。
藍のことはよく知らないが、常に冷静で全てを見通しているのかと思うほど完璧な人だ。
そんな人がいるならゲームに負ける筈はないと根拠のない確信があった。
「うん。そうと決まれば、もう寝た方がいい。明日はバイトでしょ」
「あ、はい、そうです」
時間を確認すると二時四十五分だった。
バイトは八時からなのに、準備の時間と移動時間を抜くと経ったの四時間しか寝られない。
早く寝ようと布団に入るのに、藍の一言で余計に寝れなくなってしまう。
「明日、店長にバイト辞めるって言うんだよ。ゲームが始まったら行けなくなるからね。おやすみ」
言いたいことを言う終えるとすぐ眠りにつく。
「はい、わかりました。おやすみなさい……え?それどういうことですか?」
藍に尋ねるも、もう既に夢の中で返事は返ってこない。
「おー、お疲れまた明日」
「はい」
蒼太はパチンコの店長に挨拶してから家に帰る。
「はぁ、今日も疲れた。明日は朝から宅配バイトで夕方からパチンコか……漸く念願の一人暮らしを手に入れたのに結局僕のような人間にはこんな生活しかできないってことか」
深夜だというのにまだ、街は明るく人も多い。
自分とは違って楽しそうな人達を羨ましそうな目で見てしまう。
自分もあの両親のもとに生まれてなければ幸せな未来があったのかもしれない。
そう思うと心の中が真っ黒に染まっていきどうしようもない破壊衝動に駆られそうになると、後ろから声をかけられ我に返る。
「あれ?もしかして白(つくも)ちゃん?何してんの、こんなところで」
「……藍さん」
ゆっくりと後ろを振り向き最近知り合ったばかりの藍がそこにいて驚く。
「藍さんこそどうしてここに?」
「俺?俺は散歩だよ」
「そうですか。僕はバイト帰りです」
「そう、お疲れ……ねえ、もしよかったら今から一杯しない?奢るからさ」
藍の誘いを最初断ろうとするも、断ったところで風呂に入って寝るだけなんてつまらないと人生だなと思い「……はい、します」と了承する。
「うん。そうと決まれば酒買いに行こう。飲む場所は白ちゃん家でいい?」
「はい、大丈夫です」
今いる場所からなら蒼太の家は約十分で着く距離。
藍の家は知らないし、明日もバイトがあるのに一回帰ってから向かうのは面倒くさい。
それなら自分家の方がいい。
「じゃあ、コンビニに行こう」
目の前にあるコンビニに入り大量の酒とおつまみを買い蒼太の家へと向かう。
「藍さん。僕はね、ようやく両親から解放されて幸せなんです。それなのに、僕のような学歴も特技もない人間にできる仕事なんて……」
蒼太は酔うと毎回同じことを繰り返し言う。
藍はいつものことかとバラエティ番組を観ながら聞き流す。
暫くすると扉が叩かれボトッと玄関扉のポストに何かが入れられる。
「白ちゃん。何か届いたよ」
こんな深夜に届け物なんて怪しいが好奇心には勝てず、今にも寝そうな蒼太の肩を揺すり教える。
「本当ですか」
おぼつかない足取りで玄関までいきポストから入れられた物を取り出す。
「何だった?」
「何か黒い手紙ですね……誰からだ?」
どこを見ても何も書かれていない。
悪戯かとゴミ箱にしてようとすると藍が慌てて止める。
「一旦見てみよう。それから捨てるか決めよう」
「確かにそうですね。藍さん開けてください」
酔った頭では何も考えられず藍の言う事を素直に聞く。
「(黒い封筒に、金の封蝋印。間違いない)」
藍は胸の高まりを抑えきれず口元が緩んでしまう。
「じゃあ、開けるね」
封を開け中に入っているものを出すと黒い紙が一枚と銀の鍵だった。
「紙と鍵?何で?」
「さぁ?何でだろうね。まぁ、とりあえず読むね」
黒い紙に白い字で書かれてある内容を読んでいく。
「おめでとうございます。貴方はこの度集団人生ゲームの百人のプレイヤーの一人に選ばれました。このゲームに全てクリアすれば貴方は望むものを手に入れる事ができます。一週間後の十二時に家までお迎えにあがります。それまでに一緒に連れて行く人を見つけてください。連れて行ける人は最大四人までです。残念ながら参加拒否はできませんのでご了承ください、だって」
読み終わると紙を蒼太に渡す。
「……えっと、どういうことですか。人生ゲーム?……あ、夢か」
「落ち着いて、夢じゃないから」
「やっぱり、そうですよね」
藍の方を向くと蒼太は凍りついた。
藍と知り合って間もないがこんな表情をすると思っていなかった。
笑っているのに怒っているような、喜んでいるのに笑っていないような、普通の人が絶対にしない顔に昔の記憶が思い出され恐怖で手足が冷たくなっていく。
「ねぇ、白ちゃん。これどうするつもり?」
「どうって……わかりません。僕には頼れる人はいないし、こんな意味不明のゲームを一緒にやろうと誘える人なんていませんから……辞退しようと思います」
せっかく気持ちよく酔えていたのに変な手紙のせいで酔いが覚め気分は最悪だ。
「うーん、でもこれ参加拒否はできないって書いてあるよ」
「そんなの困ります!」
「ちょ、落ち着いて。俺に言っても仕方ないよ」
蒼太にいきなり肩を掴まれ揺すられ食べたものが出そうになり慌てて落ち着くよう促す。
「そうですよね。すみません」
こんなのどうしたらいいんだ。
蒼太は頭を抱えて項垂れる。
「白ちゃん。俺から提案があるんだけどさ……」
その声に蒼太は顔を上げて藍をみる。
「俺が一緒にそのゲーム参加するよ」
「……いいんですか。有難いですけど、本当にこんな不気味なゲームに一緒に参加してくれるんですか」
「うん。なんなら、他のメンバーも俺が集めようか」
その提案に蒼太は目を輝かせ「本当ですか」と聞く。
「うん、本当だよ。任せて」
「ありがとうございます、藍さん」
藍が一緒に参加してくれるなら大丈夫だと安心する。
藍のことはよく知らないが、常に冷静で全てを見通しているのかと思うほど完璧な人だ。
そんな人がいるならゲームに負ける筈はないと根拠のない確信があった。
「うん。そうと決まれば、もう寝た方がいい。明日はバイトでしょ」
「あ、はい、そうです」
時間を確認すると二時四十五分だった。
バイトは八時からなのに、準備の時間と移動時間を抜くと経ったの四時間しか寝られない。
早く寝ようと布団に入るのに、藍の一言で余計に寝れなくなってしまう。
「明日、店長にバイト辞めるって言うんだよ。ゲームが始まったら行けなくなるからね。おやすみ」
言いたいことを言う終えるとすぐ眠りにつく。
「はい、わかりました。おやすみなさい……え?それどういうことですか?」
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