人生ゲーム

アリス

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プロローグ

広瀬輝

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「……以上がNo.0549の違反になります。広瀬様、この度はこちらの不手際で不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。直ぐに別の者を用意させていただきます」

夕霧は輝に頭を下げ謝罪する。

輝は夕霧から報告を聞いて乾いた笑みを浮かべこう言った。

「つまり、香さんは二年前から不倫していたってことですよね。俺より若くて背が高くてイケメンな男と。俺はずっと香さんだけを愛していたのに、香さんは俺みたいな不細工よりイケメンに愛される方がよかったってことですよね」

「……」

そうだろうなと心の中では同意するも口にはしない。

普段なら気にせず言うが、今回は自分のせいでもあるので悪いことをしたと思っている。

「俺はどうすればよかったんですかね。ただ、幸せな結婚生活を送りたかっただけなのに、どうしてこんなことに」

「本当に申し訳ありません。No.0549にはそれ相応の報いを受けさせるとお約束します」

「報いですか……そんなのいいですよ。必要ありません」

夕霧はその言葉にまだ香と結婚生活をするつもりなのかと呆れる。

まぁ、本人が望むなら別に構わないが馬鹿だなとは思う。

「俺が間違っていたんですから」

「と言いますと?」

「俺のような男を本気で愛してくれる人なんていないってわかっていたのに、ゲームにクリアさせすれば手に入ると本気で思っていた俺が間違っていたんです。お金で人の心が買えないようにゲームクリアしただけでは本気で愛してもらえるはずはなかった」

その通りだと思うも何も言わず続きを聞く。

「俺が悪いんです。あんな女が本気で俺だけを愛してくれるって思った俺が。だから、次は奴隷のように扱ってやるんです。夕霧さん。次の相手はいいです。その代わりお金をください」

「かしこまりました。ファーストゲームクリアの報酬金額は五億円になります。直ぐに用意しお持ちします」

失礼します、と言って一旦部屋から出て五億円を用意する。

十分もかからず部下にアタッシュケースを運ばせ部屋にもどる。

「お待たせしました。五億円になります」

ケースの中に入った五億円を見せ確認させる。

「ありがとうございます」

「では、これで報酬の受け渡しは完了しました。我々の不手際で広瀬様には大変ご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ありませんでした」

「いえ、気にしないでください。夕霧さんのせいじゃないんですから」

心の中では批判しているが、これからの為になるべく夕霧を味方につけておきたくいい子の振りをする。

「外までお見送りいたします」

「その必要はありません。俺もう一度ゲームに挑戦します」

夕霧はケースを持とうするのを手で制し、またゲームしたいと言う。

「畏まりました。このお金は負けたとき念の為の保険金ということでよろしいでしょうか」

ファーストゲームで失敗したら大体三千万円程の借金をする者が多い。

勿論借金をせず失敗する者も偶にはいるが。

「はい」

「ゲームレベルは前回同様の一で宜しかったでしょうか」

「いえ、三でお願いします」

「畏まりました。では、こちらは我々が預かりゲームクリアの場合のみお返しいたします。ゲームのルールは前回と同様ですが、内容が違います。その辺りは三の担当をする執行人から説明があります。部下が会場までご案内するのでついていってください」

「わかりました。ありがとうございます」

輝が部下と部屋を出ると貼り付けた笑みを消す。

残った部下にケースを運ぶよう指示した後、夕霧は今回の件のことを上に報告するためその場所に向かう。

「終わったな」

向かう途中さっきの出来事を思い出し呟く。

前回輝はギリギリでクリアした。

それも本当に運が良かったからクリアできたレベル。

もう一度ファーストゲームをしてもクリアできない。

輝自身そのことを誰よりもわかっているはずだが、さっきの男をみて欲が湧いたのだろう。

男はレベル三のゲームをクリアし女性を五人と二十億円を手にした。

それをみたから自分もレベル三に挑戦しようとしたのだろう。

だが、あれはあの男だからクリアできたのであって輝には無理だ。

結果がわかっているのに見る趣味などないので馬鹿だなと心の中で笑い、奴隷に落ちる姿を想像してしまう。

レベル一、ニだと大抵は奴隷落ちにならないがレベル三で失敗をすれば奴隷落ちになる。

三からは一つレベルが上がるたびにゲームの内容が格段に跳ね上がる。

レベル一は三十パーセントがクリアできるのに対しレベル三では十パーセントしかクリアできない。

さらにその上は極わずか。

「欲など出さずにいれば幸せになれたかもしれないのに、馬鹿な奴」



「夕霧様。広瀬様は先程ゲームに失敗したと報告を受けました。ファーストゲームのクリア報酬五億を差し引いても奴隷堕ちは免れないとのことです」

「わかった。それで処理しろ」

「畏まりました。それと、先程時雨(しぐれ)様から例の件を進めるのでゲームの提案書をなるべく早く出すようにとのことです」

「わかった。後で持って行っとく」

報告が済んだなら下がっていいと指示し、ゲームの提案書を時雨のとこに持っていく。



「失礼します」

時雨の個室に着きノックすると中から入ってきていいと許可を得たので扉を開ける。

「それで、何のようだ」

「ゲームの提案書をお持ちしました」

夕霧が提案書を受け取り中を確認する。

「ほぅ、よくできている。また、何かいいのが思いつけば提出しなさい」

「はい」

「……まだ、何か用があるのかね」

用が済んだのに出ようとしない夕霧に声をかける。

「はい。例の件について詳しく聞きたいと思いまして。何故今回は集団でゲームをする内容を考えるよう指示したのか聞きたいと思いまして」

「わかっているだろう。人生ゲームは個別だけでなく集団の方も作る。ただそれだけだ」

「何故急にそんなことを?」

「理由は簡単だ。レベル八から十をクリアできたのが一人だけだからだ。一人でダメなら集団ならどうだど意見がでてな。勿論目的は人間の醜さをもっとみたいという出資者達の希望のせいだがな。まぁ、それでもお館様が許可しなければできないがな」

「つまり、レベル八以降のクリア者を出すために集団ゲームを開催するということですか」

「そうだ」

「本当にそれだけですか」

時雨の説明に納得はできるが、それ以外にも何か目的がある気がした。

「何が言いたい」

「いえ、何もありません。失礼しました」

時雨の雰囲気が変わりこれ以上は踏み込んではいけないと察し謝罪する。

「ようが済んだのなら仕事に戻りなさい」

「はい、失礼しました」

夕霧が部屋から出ていくと執行人達が持ってきた提案書を全て持ちお館様のところへと持っていく。



「うん。いいね。じゃあ、始めようか」

「まずはランダムに百人の一般人に招待状を送って」

「畏まりました」

「それじゃあ、ゲーム開始と行こうか」
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