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報告

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「お帰りなさいませ」

帰ってきたマーガレット達をメイナード達が出迎える。

「何か変わったことはあったか?」

サルビアが尋ねると「ありません」と答える。

「そうか、ならいい」

何もないとわかり自室に戻って仕事をしようとするとメイナードに引き止められる。

「旦那様」

「どうした?」

「クラーク様はどちらにおられますか?」

一緒に王宮に向かったのに姿が見えない。

「王宮にいる。神官としての仕事がある為残るそうだ」

「そうですか。わかりました」

「何か用があるなら伝えとくが」

メイナードが少し落ち込んでいるように見える。

「いえ、何もありません。料理長に知らせてきます」

ヘリオトロープの分の食事を作らなくていいと早く伝えないと料理が無駄になってしまう。

夕食にはまだ早いがそろそろ作り始める頃だろう。

「ああ、頼む」

サルビアはようやくメイナードが何故ヘリオトロープのことを尋ねたのかわかった。

国王との会話のことで頭がいっぱいで、そのことまで頭が回らなかった。

「二人は今からどうする」

特に用はないが念の為聞いておく。

「私はお父様とお母様さえよければ話がしたいです」

遠回しに国王と何を話したいのか知りたいと言う。

マーガレットの発言に二人は何が起きているのか、これから何が起きようとしているのか気づいているような口ぶりに驚く。

二人は暫く見つめ合って話していいのかと悩む。

国王の命を他人に話のはもちろん家族にも言うのは禁止されている。

中には守らない者もいるが。

「……わかった。話そう。私も話がしたいと思っていた」

サルビアは悩んだ結果、国王と話した事と神官と話した事を話すことにした。

いつもなら絶対にそんなことを思わないのに、何故か今はマーガレットに伝えないといけないと感じた。

情報を共有しておかないと取り返しのつかないことになる、と。

サルビアはカトレアを見つめ目で「いいか」と同意を求めた。

カトレアはゆっくり頷き続けてこう言う。

「ええ、私も話さないといけないことがあると思っていたわ」

国王と二人で話した文字と陣のことについて言うことにする。

「では、私の執務室で話そう」

三人は執務室に向かう途中一言も話さず重い空気の中、移動した。



「私から話そう」

カトレアがお茶を淹れ机の上に置いて座ると、サルビアが最初に口を開く。

「国王が私達を呼び出したのは王妃とジギタリス公爵の調査を依頼するためだ」

「調査……それはつまり反乱の可能性があるということですか」

過去の記憶を思い出し二度とも国王が死んだことを思い出す。

「……そうだ」

ジラーニイ国とマリス国と戦争になるかもしれないとういのは伏せて話す。

カトレアも同じことを思っていたのか、そのことを話そうとはしない。

二国が戦争を仕掛けてくる可能性は高いが、余程のことがない限り二国が例え協力しても勝つことは難しい。

今は神殿が攻撃され、神官が三人しかいない状況でも負ける可能性が低い。

それほど我が国は圧倒的な力を持っているのだ。

「(もしかして、ランドゥーニ国以外にも戦争を起こさせようとしていたってこと)」

マーガレットはサルビアの話を聞いて頭が痛くなる。

二度の人生の最期を迎える前、戦争していたのはランドゥーニ国だけ。

そのきっかけは二回共二ヶ月後のパーティーだった。

勿論、すぐに戦争になったわけではない。

国王がすぐに謝罪をし、わだかまりは残るも何とか協定は結ばれた。

だが国王が死にブローディア家が失脚するとロベリアが協定を勝手に破棄し、ランドゥーニ国に戦争を仕掛けた。

そのせいでマーガレットが死ぬまでの二年間、戦争はずっと続いていた。

「(お父様は言葉を濁しているけど、間違いなく王妃と公爵はどこかの国と手を結んで戦争を起こそうとしているはず。でも、ランドゥーニ国でないなら一体どこと)」

ロベリアとジギタリスがランドゥーニ国を嫌っているのは知っているので協力するはずはないとわかっている。

少し前までは二ヶ月後のパーティーを成功させればなんとかなると思っていたのに、今現在最悪な状況になっているとわかり戦争を起こそうとしている者達全員を殺したくなる。

マーガレットの記憶では戦争をしたのはランドゥーニ国だけなので、どこの国か知ることはできない。

怪しい国を調査してもいいがサルビアが頼まれているなら後で聞けば問題ないだろし、同じことを調べるのは効率が悪いのでこの件は任せることにする。

「お父様、私にも何か手伝えることがあればおっしゃってください」

そう願い出てもサルビアが危険なことを頼む事はないとわかっている。

昔の自分ならそう言っていただろうと思い言っただけ。

自分が回帰したとバレることはないだろが、万が一の可能性も考え演技する。

「ああ、何かあれば頼もう」

一応そう言うが娘を危険なことに巻き込むわけにはいかないので頼むつもりはなかった。

「では、次は私が話しましょう」

これ以上この話をしているとマーガレットが意地でも手伝おうとするはずだと思い話を逸らす。

サルビアはまだ神官とのことを話していなかったが、カトレアが国王と何を話していたのか気になり先に聞くとことにした。

それにカトレアの考えを察したのもある。

神官には記憶を覗かれただけで何も話してはいない。

ヘリオトロープが体調を崩し後日話し合うことになったし、別にこれは言わなくても問題ないはず。

サルビアはそう自分に言い聞かせ、自分の報告はこれで終わったと思うことにした。

「私は国王にこれの解読を頼まれました」

国王から預かった紙をみせる。

「これは……」

初めて見る文字と陣に二人は顔を歪める。

何て書かれているかわからないが、直感でこれは発動させてはいけないものだと感じる。

「お母様、これはどこの国の文字ですか」

カトレア程ではないが、それなりに他国の文字は知っている。

自分にはわからなくても、カトレアなら滅んだ国の言語も知っているからわかるはずだと思い尋ねた。

「私もわからないの」

カトレアは首を横に振る。

カトレアの言葉に二人は「えっ」と間抜けな声が出る。

一瞬何を言われたのか理解できなかった。

「……それは本当か?」

信じられないような目をしてサルビアが尋ねる。

「ええ」

カトレア自身も自分がまだ知らない国の文字があるとは思ってもみなかった。

「それで二人にお願いがあるの。私は暫くこれを解読するために部屋に籠るわ。これは一日でも早く解読しないとよくないことが起きる気がするの。だから……」

暫く公爵夫人としての仕事ができないかもしれない、と謝ろうとするとそれより早く二人が同時に口を開く。
 

「任せてください、お母様。私がやります」
「大丈夫だ。何も心配せず国王の命を全うしろ」


同じタイミングで話し出したので何を言ったのかカトレアには聞き取れなかった。

だが二人が自分の為に何か言ったのだということだけはわかり、嬉しくてつい笑ってしまう。

二人は言い終わると「あ……」と顔を見合わせて「(しまった、同じタイミングで言ってしまった。後から言えばよかった)」と後悔する。

「二人共、ありがとう。少しの間お願いね」


「はい、任せてください」
「ああ、任せろ」


またも同じタイミングで返事をしてしまう。
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