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神官の会談
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サルビアとカトレアが国王に呼ばれた頃、ヘリオトロープはマーガレットのことが心配で傍を離れたくなかったが、ジェンシャンとキキョウに呼ばれ丁度聞きたいこともあったので二人のいる部屋に向かった。
「ジェンシャン様、キキョウ様。ヘリオトロープ様をお連れしました」
従者は扉を叩き中にいる二人に話しかける。
「どうぞ」
ジェンシャンが返事する。
従者は扉を開けてヘリオトロープが入りやすいようにする。
ヘリオトロープがお礼を言い下がるよう命じると従者は一礼しその場から離れていく。
「……それで私に何のようですか?」
不満です、という顔をする。
本当はマーガレットの傍に今すぐ行きたいのに話があると言うので仕方なくきた。
二人の前だと子供みたいな態度をする。
二人はそんなヘリオトロープの態度に笑いそうになるが、笑ったら面倒くさくなるので必死に耐え話しかける。
「これからの事について話し合う必要があるだろ」
笑いを耐える顔から真剣な顔つきに変わる。
ジェンシャンの言葉にそうだなと思うも頭の片隅ではマーガレットのことを考えてしまう。
「その前にそっちは何かわかったことはあるか」
キキョウが問う。
「あー、実はアングレカムの首謀者の候補がシルバーライス家の娘アネモネではないかと疑っていることと、ジキタリス家もその件に関わっているのではないかという疑いがあるくらいですかね」
マーガレットに教えてもらった情報を淡々と話す。
話終えても何の反応もしない二人にどうしたのだと尋ねようとしたら「何でそんな重要な事をもっと早く言わない」と説教をされる。
「私も知ったのはパーティーの時だったんだよ」
その後は決闘があったりして、とただ報告するのを忘れていただけだが言い訳をする、
「なら、その時言えばいいだろう。言えば」
キキョウがヘリオトロープの頭をグリグリする。
「証拠がないんだから言っても意味ないと思ったんです」
「それを見つけるのが私達の仕事だ。次からは確証がなくても教えてくれ。いいな」
二人を宥めるようにジェンシャンが会話に入る。
「……わかったよ。次からはちゃんと報告する」
「じゃあ、そろそろ本題にはいるか」
ヘリオトロープの説教で話が脱線したので元に戻す。
ジェンシャンの表情から嫌な予感がした。
聞きたくないと本能が訴える。
「ヘリオトロープ。これからは私達と一緒に聖女を探してもらうぞ」
嫌だ、と即答しそうになるのを堪えるも顔に嫌だと書かれてあるのでジェンシャンは困った顔で笑い、キキョウは張り付けたような笑みを浮かべる。
キキョウがこういう顔をするときは罵声が出る三秒前なのでジェンシャンは急いでキキョウの口を塞ぐ。
ここは王宮なので他の人に聞かれたまずい。
「ヘリオトロープ。君が公爵令嬢を心配で傍を離れたくないのはわかるが今は一大事なんだ。わかってくれ」
キキョウの口元を塞いだまま話しかける。
キキョウが何か言っているがジェンシャンのせいで何と言っているのか全くわからない。
「……二人だけでは駄目なのですか?」
「ああ」
「何故ですか?」
「聖女を探すためだ」
聖女。
その言葉にヘリオトロープは反応する。
マーガレットがそうではないかと思ったからだ。
「誕生したのですか」
ヘリオトロープの問いにジェンシャンは首を横に振る。
「いや、わからない。この時代に誕生するのかすらわからない」
それなら何故聖女を探すと言ったのか余計にわからなくなり顔を歪めて二人を見る。
「他の神官を助けるには聖女の力が必要なんだ。代理人ではなく本物の聖女の力が」
ヘリオトロープの疑問に答えるようキキョウが答える。
漸くジェンシャンの手から逃れ息ができる。
鼻まで塞がれていたので窒息死するかと思った。
「それほど酷い呪いなのですか!?」
ヘリオトロープは他の神官達がどうなっているのか見ていないので知らなかった。
「ああ。聖女にしか解けないほどにな。並の呪術師にはできない禁忌だろう。一体どれだけの血が流れたのだろうな」
ギリッ、とキキョウの口から音がする。
二人の様子からそれほど深刻な状況だとわかる。
「わかりました。一緒に聖女を探します。でも、一度だけマーガレット様に会って欲しい。私はマーガレット様が聖女ではないかと思っているので」
マーガレットが聖女だったら、そう思ったあの時からずっとヘリオトロープはずっとマーガレットが聖女として覚醒するのだと信じていた。
ジェンシャンとキキョウは顔を見合わせ困った顔をする。
それはあり得ないと思い断ろうとするが、余りにもヘリオトロープが真剣な目で見つめてくるのでジェンシャンが「わかった」と了承してしまう。
キキョウが「ジェンシャン」と咎めるように名を呼ぶが、ジェンシャンは困ったように笑うだけで何も言わなかった。
ジェンシャンの考えがわかったが、時間の無駄だと思い頑なにキキョウは了承しなかったが、ジェンシャンもヘリオトロープも絶対に引かないと察し深いため息を吐くと渋々といった風に「わかった」と返事する。
「じゃあ、今すぐマーガレット様に会いに行こう」
そう言って部屋から出ようとするヘリオトロープをジェンシャンが急いで止める。
ヘリオトロープは何でと咎めるような目つきでジェンシャンを見つめるがキキョウからの説明を受けそういうことかと納得する。
「今からここにブローディア公爵が来る。神殿が襲撃された時の話を詳しく聞きたいし、お前の神聖力があれば公爵の記憶を思い出す手助けにもなるだろう。公爵との話が終わった後会いに行けばいいだろう。どうせ、公爵がここにいる間は帰らないだろうし」
「わかった。その後にする」
確かにその通りだと思い部屋を出るのをやめる。
神殿襲撃の件はヘリオトロープももっと詳しく聞きたいと思っていたので丁度良かった。
色々と気になることもあったし、自分の神聖力もあればサルビアもあの時の事で忘れていた事を思い出すかもしれないと。
「公爵は今陛下と会っている筈だからもう少ししたらここに来ると思うから、それまではゆっくりしよう」
ジェンシャンの言葉に公爵が来るまでの間だけ気を緩め各々がゆっくり過ごす。
「ジェンシャン様、キキョウ様。ヘリオトロープ様をお連れしました」
従者は扉を叩き中にいる二人に話しかける。
「どうぞ」
ジェンシャンが返事する。
従者は扉を開けてヘリオトロープが入りやすいようにする。
ヘリオトロープがお礼を言い下がるよう命じると従者は一礼しその場から離れていく。
「……それで私に何のようですか?」
不満です、という顔をする。
本当はマーガレットの傍に今すぐ行きたいのに話があると言うので仕方なくきた。
二人の前だと子供みたいな態度をする。
二人はそんなヘリオトロープの態度に笑いそうになるが、笑ったら面倒くさくなるので必死に耐え話しかける。
「これからの事について話し合う必要があるだろ」
笑いを耐える顔から真剣な顔つきに変わる。
ジェンシャンの言葉にそうだなと思うも頭の片隅ではマーガレットのことを考えてしまう。
「その前にそっちは何かわかったことはあるか」
キキョウが問う。
「あー、実はアングレカムの首謀者の候補がシルバーライス家の娘アネモネではないかと疑っていることと、ジキタリス家もその件に関わっているのではないかという疑いがあるくらいですかね」
マーガレットに教えてもらった情報を淡々と話す。
話終えても何の反応もしない二人にどうしたのだと尋ねようとしたら「何でそんな重要な事をもっと早く言わない」と説教をされる。
「私も知ったのはパーティーの時だったんだよ」
その後は決闘があったりして、とただ報告するのを忘れていただけだが言い訳をする、
「なら、その時言えばいいだろう。言えば」
キキョウがヘリオトロープの頭をグリグリする。
「証拠がないんだから言っても意味ないと思ったんです」
「それを見つけるのが私達の仕事だ。次からは確証がなくても教えてくれ。いいな」
二人を宥めるようにジェンシャンが会話に入る。
「……わかったよ。次からはちゃんと報告する」
「じゃあ、そろそろ本題にはいるか」
ヘリオトロープの説教で話が脱線したので元に戻す。
ジェンシャンの表情から嫌な予感がした。
聞きたくないと本能が訴える。
「ヘリオトロープ。これからは私達と一緒に聖女を探してもらうぞ」
嫌だ、と即答しそうになるのを堪えるも顔に嫌だと書かれてあるのでジェンシャンは困った顔で笑い、キキョウは張り付けたような笑みを浮かべる。
キキョウがこういう顔をするときは罵声が出る三秒前なのでジェンシャンは急いでキキョウの口を塞ぐ。
ここは王宮なので他の人に聞かれたまずい。
「ヘリオトロープ。君が公爵令嬢を心配で傍を離れたくないのはわかるが今は一大事なんだ。わかってくれ」
キキョウの口元を塞いだまま話しかける。
キキョウが何か言っているがジェンシャンのせいで何と言っているのか全くわからない。
「……二人だけでは駄目なのですか?」
「ああ」
「何故ですか?」
「聖女を探すためだ」
聖女。
その言葉にヘリオトロープは反応する。
マーガレットがそうではないかと思ったからだ。
「誕生したのですか」
ヘリオトロープの問いにジェンシャンは首を横に振る。
「いや、わからない。この時代に誕生するのかすらわからない」
それなら何故聖女を探すと言ったのか余計にわからなくなり顔を歪めて二人を見る。
「他の神官を助けるには聖女の力が必要なんだ。代理人ではなく本物の聖女の力が」
ヘリオトロープの疑問に答えるようキキョウが答える。
漸くジェンシャンの手から逃れ息ができる。
鼻まで塞がれていたので窒息死するかと思った。
「それほど酷い呪いなのですか!?」
ヘリオトロープは他の神官達がどうなっているのか見ていないので知らなかった。
「ああ。聖女にしか解けないほどにな。並の呪術師にはできない禁忌だろう。一体どれだけの血が流れたのだろうな」
ギリッ、とキキョウの口から音がする。
二人の様子からそれほど深刻な状況だとわかる。
「わかりました。一緒に聖女を探します。でも、一度だけマーガレット様に会って欲しい。私はマーガレット様が聖女ではないかと思っているので」
マーガレットが聖女だったら、そう思ったあの時からずっとヘリオトロープはずっとマーガレットが聖女として覚醒するのだと信じていた。
ジェンシャンとキキョウは顔を見合わせ困った顔をする。
それはあり得ないと思い断ろうとするが、余りにもヘリオトロープが真剣な目で見つめてくるのでジェンシャンが「わかった」と了承してしまう。
キキョウが「ジェンシャン」と咎めるように名を呼ぶが、ジェンシャンは困ったように笑うだけで何も言わなかった。
ジェンシャンの考えがわかったが、時間の無駄だと思い頑なにキキョウは了承しなかったが、ジェンシャンもヘリオトロープも絶対に引かないと察し深いため息を吐くと渋々といった風に「わかった」と返事する。
「じゃあ、今すぐマーガレット様に会いに行こう」
そう言って部屋から出ようとするヘリオトロープをジェンシャンが急いで止める。
ヘリオトロープは何でと咎めるような目つきでジェンシャンを見つめるがキキョウからの説明を受けそういうことかと納得する。
「今からここにブローディア公爵が来る。神殿が襲撃された時の話を詳しく聞きたいし、お前の神聖力があれば公爵の記憶を思い出す手助けにもなるだろう。公爵との話が終わった後会いに行けばいいだろう。どうせ、公爵がここにいる間は帰らないだろうし」
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確かにその通りだと思い部屋を出るのをやめる。
神殿襲撃の件はヘリオトロープももっと詳しく聞きたいと思っていたので丁度良かった。
色々と気になることもあったし、自分の神聖力もあればサルビアもあの時の事で忘れていた事を思い出すかもしれないと。
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