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ルドベキア・エカルト
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マーガレットは自分を助けたのがルドベキアだとわかると体を強張らせた。
元々ルドベキアとも会う予定だったが、こんな出会い方をするとは思っておらず体が恐怖で震えだす。
何か言わなければと思うも声が上手く出せない。
復讐相手に会うたび体を強張らせ弱くなる自分が情けなくて嫌になる。
ルドベキアはマーガレットが震えているのに気づき、木から落ちたのが怖かったからだと思い近くの椅子に座らせた。
「もう大丈夫です」
なるべく怖がらせないよう声をかける。
マーガレットは二度の人生でルドベキアを見ていたので誰かわかったが、この人生では今回が初めての出会いだったのでルドベキアは目の前の女性が誰かはわからなかった。
顔も暗くてわからなかったので例え知っていても声を聞かないとわからなかっただろう。
「あの、ルドベキア様大丈夫ですか」
女性がルドベキアに声をかける。
「ああ、大丈夫だ。悪いが水をもらってきてくれるか」
「わかりました」
そう返事すると女性はその場から離れていく。
マーガレットはその声がアネモネだと気づき俯いていた顔をあげる。
「どうかしたか」
気がついたらマーガレットはルドベキアの裾を掴んでいた。
「あの……」
アネモネと何を話していた、と尋ねようとして口をつぐむ。
変に警戒されたらこれからの計画に支障がでる。
声をかけた以上何か言わなければと思うも声が出なかった。
「ゆっくりで構いませんよ」
ルドベキアがしゃがみ込みそう告げると雲で隠れていた月が顔を出し二人を照らす。
マーガレットの顔がはっきりと見えた。
すぐに月はまた雲に隠され辺りは暗く覆い隠された。
ルドベキアはあまりの美しさを目の当たりにして口元を手で隠し顔を真っ赤にした。
暗くて良かったと。
「助けていただきありがとうございました」
ようやく声がでてその一言を発せれた。
「いえ、気にしないでください。あの、失礼でなければお名前をお伺いしてもよろしいですか」
「これは失礼しました。私はマーガレット・ブローディアと申します」
ルドベキアは息をのむ。
この女性があの有名なマーガレット・ブローディアかと。
貴族と平民での噂は大分違ったが。
ルドベキアも名を名乗ろうとしらパリンッと何かが割れる音がしてそちらに目を向ける。
暗くてよく見えなかったが、マーガレットはそこにいるのがアネモネだと確信した。
「あの、大丈夫ですか」
マーガレットが心配そうな声で尋ねる。
放心しているのか何も言わず固まったまま動かない。
「大丈夫か、アネモネ嬢」
「え、あ、はい。大丈夫です。そちらの方は……」
声から動揺が伝わる。
今の言葉でアネモネが今回も回帰していることがわかった。
ただ、最初の記憶だけか二度の記憶をもって回帰しているのかはわからなかった。
「失礼しました。私はマーガレット・ブローディアと申します。お二人共助けていただき感謝します」
「いえ、当然の事をしただけですから気にしないでください」
「そんなことありません。貴方が私を受け止めてくださらなければ私は怪我をしていました。今こうして無事なのは貴方のお陰です。本当に感謝しています」
ルドベキアに頭を下げお礼を言う。
「このお礼はいつか必ずさせてください。私はこれで失礼します。お二人の邪魔をしてしまい申し訳ありませんでした」
マーガレットの最後の一言を聞いてルドベキアは慌てたようにそれを否定する。
「そんなことありません。たまたま偶然ここで会っただけなので気にしないでください。それに今日が初めてお会いして先程名を聞いたばかりなので」
ルドベキアの言葉が事実だからかアネモネは何も言わず黙り続けた。
ただマーガレットはその話を疑った。
ルドベキアは偶然だと言ったが、アネモネのことだ偶然に見せかけて接触したのだろう。
「そうだったのですね。もしかして、お二人の邪魔をしたのかと思いまして凄く申し訳なかったのです」
暗に二人が恋人同士なのではないかと伝える。
「違います。それに、私と結婚したがる女性はいませんので」
ルドベキアの領地は魔物がよく出て、ほぼ一年中冬の季節。
そんなところに来ようと思う女性は中々いないとそう思っていた。
ただ、ルドベキアは勘違いしていた。
ルドベキアと結婚したい女性は大勢いるし、そこにいるアネモネとは二度目の人生で結婚して一緒に領地で暮らしていた。
マーガレットは面倒くさかったので否定するつもりはなかったが、アネモネが否定する。
「そんなことないです。ルドベキア様は素敵な方ですから、結婚したいと思っている方はいると思いますよ」
ーーあなたがでしょう。
マーガレットは心の中で呟く。
何だこの茶番はと吐きそうになる。
今すぐこの場から去りたくて仕方ない。
「そう言ってもらえて有り難いです。ありがとうございます」
「いえ」
どこか恥ずかしそうに答えるアネモネを見てん?と何かおかしいことに気づいた。
記憶の中にあるアネモネの声より高く口調が柔らかい。
年が若いせいかとも一瞬思ったが、残酷残忍のこの女に当てはまるとは思えなかった。
だが、すぐに他の答えに辿りついた。
ーーああ、そういうことか。この男が好きなのか。確かにそれなら辻褄が合う。
辺りが暗いのをいいことに悪い笑みを浮かべる。
次のターゲットが決まった。
ルドベキアを手に入れる。
「マーガレット様」
猿がさっきから何かしていると思っていたが、ヘリオトロープを呼んでいたらしい。
ルドベキアとアネモネを素通りしてマーガレットのところに一直線に向かう。
「マーガレット様。見つけたのなら連絡してくださいと言ったじゃありませんか」
マーガレットにだけ聞こえる声で話しかける。
「すみません」
忘れていたので素直に謝る。
「もう用は済みましたので帰りましょう」
「済んだのですか」
「はい」
「わかりました」
ヘリオトロープの手を掴み立ち上がる。
「ルドベキア様、このお礼はいつかします。では、お先に失礼します」
アネモネには挨拶せずその場から立ち去る。
「マクス達を迎えに行き帰りましょう」
「はい、マーガレット様」
元々ルドベキアとも会う予定だったが、こんな出会い方をするとは思っておらず体が恐怖で震えだす。
何か言わなければと思うも声が上手く出せない。
復讐相手に会うたび体を強張らせ弱くなる自分が情けなくて嫌になる。
ルドベキアはマーガレットが震えているのに気づき、木から落ちたのが怖かったからだと思い近くの椅子に座らせた。
「もう大丈夫です」
なるべく怖がらせないよう声をかける。
マーガレットは二度の人生でルドベキアを見ていたので誰かわかったが、この人生では今回が初めての出会いだったのでルドベキアは目の前の女性が誰かはわからなかった。
顔も暗くてわからなかったので例え知っていても声を聞かないとわからなかっただろう。
「あの、ルドベキア様大丈夫ですか」
女性がルドベキアに声をかける。
「ああ、大丈夫だ。悪いが水をもらってきてくれるか」
「わかりました」
そう返事すると女性はその場から離れていく。
マーガレットはその声がアネモネだと気づき俯いていた顔をあげる。
「どうかしたか」
気がついたらマーガレットはルドベキアの裾を掴んでいた。
「あの……」
アネモネと何を話していた、と尋ねようとして口をつぐむ。
変に警戒されたらこれからの計画に支障がでる。
声をかけた以上何か言わなければと思うも声が出なかった。
「ゆっくりで構いませんよ」
ルドベキアがしゃがみ込みそう告げると雲で隠れていた月が顔を出し二人を照らす。
マーガレットの顔がはっきりと見えた。
すぐに月はまた雲に隠され辺りは暗く覆い隠された。
ルドベキアはあまりの美しさを目の当たりにして口元を手で隠し顔を真っ赤にした。
暗くて良かったと。
「助けていただきありがとうございました」
ようやく声がでてその一言を発せれた。
「いえ、気にしないでください。あの、失礼でなければお名前をお伺いしてもよろしいですか」
「これは失礼しました。私はマーガレット・ブローディアと申します」
ルドベキアは息をのむ。
この女性があの有名なマーガレット・ブローディアかと。
貴族と平民での噂は大分違ったが。
ルドベキアも名を名乗ろうとしらパリンッと何かが割れる音がしてそちらに目を向ける。
暗くてよく見えなかったが、マーガレットはそこにいるのがアネモネだと確信した。
「あの、大丈夫ですか」
マーガレットが心配そうな声で尋ねる。
放心しているのか何も言わず固まったまま動かない。
「大丈夫か、アネモネ嬢」
「え、あ、はい。大丈夫です。そちらの方は……」
声から動揺が伝わる。
今の言葉でアネモネが今回も回帰していることがわかった。
ただ、最初の記憶だけか二度の記憶をもって回帰しているのかはわからなかった。
「失礼しました。私はマーガレット・ブローディアと申します。お二人共助けていただき感謝します」
「いえ、当然の事をしただけですから気にしないでください」
「そんなことありません。貴方が私を受け止めてくださらなければ私は怪我をしていました。今こうして無事なのは貴方のお陰です。本当に感謝しています」
ルドベキアに頭を下げお礼を言う。
「このお礼はいつか必ずさせてください。私はこれで失礼します。お二人の邪魔をしてしまい申し訳ありませんでした」
マーガレットの最後の一言を聞いてルドベキアは慌てたようにそれを否定する。
「そんなことありません。たまたま偶然ここで会っただけなので気にしないでください。それに今日が初めてお会いして先程名を聞いたばかりなので」
ルドベキアの言葉が事実だからかアネモネは何も言わず黙り続けた。
ただマーガレットはその話を疑った。
ルドベキアは偶然だと言ったが、アネモネのことだ偶然に見せかけて接触したのだろう。
「そうだったのですね。もしかして、お二人の邪魔をしたのかと思いまして凄く申し訳なかったのです」
暗に二人が恋人同士なのではないかと伝える。
「違います。それに、私と結婚したがる女性はいませんので」
ルドベキアの領地は魔物がよく出て、ほぼ一年中冬の季節。
そんなところに来ようと思う女性は中々いないとそう思っていた。
ただ、ルドベキアは勘違いしていた。
ルドベキアと結婚したい女性は大勢いるし、そこにいるアネモネとは二度目の人生で結婚して一緒に領地で暮らしていた。
マーガレットは面倒くさかったので否定するつもりはなかったが、アネモネが否定する。
「そんなことないです。ルドベキア様は素敵な方ですから、結婚したいと思っている方はいると思いますよ」
ーーあなたがでしょう。
マーガレットは心の中で呟く。
何だこの茶番はと吐きそうになる。
今すぐこの場から去りたくて仕方ない。
「そう言ってもらえて有り難いです。ありがとうございます」
「いえ」
どこか恥ずかしそうに答えるアネモネを見てん?と何かおかしいことに気づいた。
記憶の中にあるアネモネの声より高く口調が柔らかい。
年が若いせいかとも一瞬思ったが、残酷残忍のこの女に当てはまるとは思えなかった。
だが、すぐに他の答えに辿りついた。
ーーああ、そういうことか。この男が好きなのか。確かにそれなら辻褄が合う。
辺りが暗いのをいいことに悪い笑みを浮かべる。
次のターゲットが決まった。
ルドベキアを手に入れる。
「マーガレット様」
猿がさっきから何かしていると思っていたが、ヘリオトロープを呼んでいたらしい。
ルドベキアとアネモネを素通りしてマーガレットのところに一直線に向かう。
「マーガレット様。見つけたのなら連絡してくださいと言ったじゃありませんか」
マーガレットにだけ聞こえる声で話しかける。
「すみません」
忘れていたので素直に謝る。
「もう用は済みましたので帰りましょう」
「済んだのですか」
「はい」
「わかりました」
ヘリオトロープの手を掴み立ち上がる。
「ルドベキア様、このお礼はいつかします。では、お先に失礼します」
アネモネには挨拶せずその場から立ち去る。
「マクス達を迎えに行き帰りましょう」
「はい、マーガレット様」
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