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神殿 2
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「話を戻します」
セリがそう言うとサルビアは「ああ」と相槌をして続きを話すよう促す。
神官達が神聖力を維持する為の儀式をはじめるとセリは無事に儀式が終わるよう補佐する。
神官達が呪文を唱え始めると神聖力が体を纏い、地面に描かれた陣の上を走り、この部屋全体を覆う程の神聖力が溜まっていく。
溜まった神聖力は己の役割を果たそうとこの部屋にいない神官達の元へと向かっていく。
呪文を一日中唱え、新月の夜を超え朝日が登るまで繰り返す。
太陽が真上を通りすぎ沈んでいく時間帯にあの出来事が起きた。
いきなり爆発音が聞こえ何事かと神官達から目を離した。
たった一瞬だった。
突然呪文が聞こえなくなり、神官達に目を向けると禍々しい光を放った陣が神官達を囲うように現れた。
対抗しようと神聖力を放った瞬間、神官達の様子がおかしくなった。
呻き声を上げたと思ったら、倒れ動かなくなる。
急いで傍まで駆け寄ると、体は硬直し髪と肌が真っ白になっていた。
死んではいないが息をしていなかった。
呪われたのか?
でも、こんな呪いなど聞いたことなかった。
自分の知らない呪いが存在していることは知っていたが、神官を呪える程強力なもの。
どうしたらいいかわからず頭が真っ白になりその場から動けなくなる。
セリが動けない間にも悲鳴と爆発音が鳴り響いていた。
暫くして漸く我に返ったセリは神官達を安全な場所に避難させないといけないと近くにいる使徒を呼びにいく。
「セリさん。無事だったんですね」
ちょうどセリ達の所に向かっていた使徒達と会う。
「一体何があった」
「わかりません。急に別館で爆発が起きて、そしたら神官様達が急いで事態を収集しようとしたら急に陣みたいものご浮かび上がり気づいたら倒れたのです。体は硬直し、髪と肌の色が真っ白に変化しました。セリさん。どうしたらいいですか。こんなこと初めてでどうしたらいいかわかりません。助けてください」
取り乱しながらセリに報告する使徒。
そんな使徒のことなど気にも留めず報告内容に絶句する。
まさか、他の神官達も同じような状態になっているとは。
それに別館が爆発。
どうなっている。
神殿を爆発させるなどどうやって。
あり得ない。
神殿は厳重な結界で守られているはず。
ドォーン!
セリが何も言えず考え込んでいると、今までで一番大きな音が聞こえた。
その音でハッと我にかえる。
「まずは避難誘導だ。神官様達は生きている。必ず守れ。数名は私についてきてくれ。神官様達を運ぶ。残りは安全な場所を確保し、そこに皆を避難させろ」
セリが指示を出すと使徒達は一斉に動き出す。
セリも神官達を運ぶため数名の使徒を引き連れ儀式の部屋まで急いで戻る。
「ーー死んで」
いるのでは、そう言おうとする使徒の言葉を遮るように「生きている」と力強く言う。
その言葉は使徒達に言い聞かせるというよりは自分に向けたものだった。
「急ぐぞ。ここも危ないかもしれん」
神官を担ぎ急いで外へと向かう。
外も危険かもしれないが建物が爆発しているのなら中にいる方が危険。
外に出て別館を見ると半分以上崩壊していた。
セリはこう思ってしまった。
ーー助からない。助けられない。手遅れだ。
もし、中に人がいても神官が動けない今どうしようもできなかった。
仮にいても瓦礫の下敷きで死んでいる。
これ以上被害を出す訳にはいかない。
神官が指示を出せない今、一番目の自分が指示を出さないといけない。
どうすればいいか迷っているとどこからか凛とした声が耳に届いた。
「まずは怪我人の手当て、神官達の状態の確認、被害状況の把握。やることは沢山ある」
声のした方を見るとサルビアがいた。
「何故、ここに公爵様が」
いるはずのない人物。
この国で最も頼りになる人物。
絶望し何もできずにいたセリには希望の光が差し込んできたように見えた。
「お前達は私についてこい」
そう叫ぶと別館へと入っていく。
堂々とつき進むその姿はこの場にいた全員の心を動かし魅了した。
ーーそうだ。やるべきことは沢山ある。立ち止まっている暇はない。
使徒達はサルビアの言葉を思い出し動き出す。
怪我人の手当て、神官達の状態の確認、被害状況を手分けして把握した。
太陽が沈み使徒達からの報告をまとめると、今回の事件は呪術師の可能性が高かった。
別館にいたほとんどは死んでしまったが、一人の神官が爆発に気づき呪いが発動する前に神聖力を放ち三分の一程結界を張れた。
呪いは神聖力を使った瞬間に発動するようできていたので、一瞬で結界を張れた神官はやはりすごいと報告を受け感じた。
本来なら別館の建物は全て崩壊していたが、その神官のお陰で何人かは助かり、別館に何があったのか知ることができた。
流石に子供達や貴族から話を聞く訳にはいかず使徒達から話を聞いた。
本当なら休ませてあげたかったが、事態が思った以上に深刻な為そうもいかなかった。
「四人共、何があったか話してくれ」
ベットの上から降りてセリに挨拶をしようとするのを手で静止し、起きなくていいと言う。
「はい。私達は最後尾にいて子供達の質問に答えながら案内をしていました」
先頭は貴族でその後ろに未来の神官候補で最後はそれ以外のただ単に神殿やそこで働く人に興味があるだけの人達。
わざわざ決めているのは使徒達が対応する相手を明確にしているため。
「分館を案内し終え、別館へ移動しました。別館には歴代の聖女の代理人の絵が飾られている廊下があります。聖女の絵と聖像は本館に飾ってあり神官と翼以外見ることはできません。なので、この廊下は神殿の見学者する者達には大人気でここでは一時間以上時間をかけて案内します」
そこまで話して使徒は急に息が上がり過呼吸になる。
セリは使徒の背中をさすり落ち着かせようとする。
近くにいた他の使徒に水を持ってくるよう指示した。
「大丈夫だ。水を飲みなさい」
水を受け取り使徒に飲ませる。
「ーーあ、ありがとうございます」
「話せるか」
「はい、大丈夫です」
残りの三人はこれから話す爆発の瞬間を思い出し、手で顔を覆い身を守ろうと小さくなる。
恐怖で体が震える。
目の前で大勢が下敷きになったのを目の当たりにしたのだから当然の反応だ。
瓦礫から助けられた人達の姿を見た使徒達の何人かはその場で吐いた。
セリだってその場では吐かなかったが一人になった瞬間吐いた。
使徒だから死体を見たことはあるが、これほど無残な死体を見たのは初めてだった。
指先が冷たくなっていく感覚がわかる。
ーー言わせたくない、知りたくない。でも、言わせないと、知らないといけない。
「では続きを話してくれ」
一番目の使徒としてどれだけ辛く嫌なことでもやらなければならない。
セリがそう言うとサルビアは「ああ」と相槌をして続きを話すよう促す。
神官達が神聖力を維持する為の儀式をはじめるとセリは無事に儀式が終わるよう補佐する。
神官達が呪文を唱え始めると神聖力が体を纏い、地面に描かれた陣の上を走り、この部屋全体を覆う程の神聖力が溜まっていく。
溜まった神聖力は己の役割を果たそうとこの部屋にいない神官達の元へと向かっていく。
呪文を一日中唱え、新月の夜を超え朝日が登るまで繰り返す。
太陽が真上を通りすぎ沈んでいく時間帯にあの出来事が起きた。
いきなり爆発音が聞こえ何事かと神官達から目を離した。
たった一瞬だった。
突然呪文が聞こえなくなり、神官達に目を向けると禍々しい光を放った陣が神官達を囲うように現れた。
対抗しようと神聖力を放った瞬間、神官達の様子がおかしくなった。
呻き声を上げたと思ったら、倒れ動かなくなる。
急いで傍まで駆け寄ると、体は硬直し髪と肌が真っ白になっていた。
死んではいないが息をしていなかった。
呪われたのか?
でも、こんな呪いなど聞いたことなかった。
自分の知らない呪いが存在していることは知っていたが、神官を呪える程強力なもの。
どうしたらいいかわからず頭が真っ白になりその場から動けなくなる。
セリが動けない間にも悲鳴と爆発音が鳴り響いていた。
暫くして漸く我に返ったセリは神官達を安全な場所に避難させないといけないと近くにいる使徒を呼びにいく。
「セリさん。無事だったんですね」
ちょうどセリ達の所に向かっていた使徒達と会う。
「一体何があった」
「わかりません。急に別館で爆発が起きて、そしたら神官様達が急いで事態を収集しようとしたら急に陣みたいものご浮かび上がり気づいたら倒れたのです。体は硬直し、髪と肌の色が真っ白に変化しました。セリさん。どうしたらいいですか。こんなこと初めてでどうしたらいいかわかりません。助けてください」
取り乱しながらセリに報告する使徒。
そんな使徒のことなど気にも留めず報告内容に絶句する。
まさか、他の神官達も同じような状態になっているとは。
それに別館が爆発。
どうなっている。
神殿を爆発させるなどどうやって。
あり得ない。
神殿は厳重な結界で守られているはず。
ドォーン!
セリが何も言えず考え込んでいると、今までで一番大きな音が聞こえた。
その音でハッと我にかえる。
「まずは避難誘導だ。神官様達は生きている。必ず守れ。数名は私についてきてくれ。神官様達を運ぶ。残りは安全な場所を確保し、そこに皆を避難させろ」
セリが指示を出すと使徒達は一斉に動き出す。
セリも神官達を運ぶため数名の使徒を引き連れ儀式の部屋まで急いで戻る。
「ーー死んで」
いるのでは、そう言おうとする使徒の言葉を遮るように「生きている」と力強く言う。
その言葉は使徒達に言い聞かせるというよりは自分に向けたものだった。
「急ぐぞ。ここも危ないかもしれん」
神官を担ぎ急いで外へと向かう。
外も危険かもしれないが建物が爆発しているのなら中にいる方が危険。
外に出て別館を見ると半分以上崩壊していた。
セリはこう思ってしまった。
ーー助からない。助けられない。手遅れだ。
もし、中に人がいても神官が動けない今どうしようもできなかった。
仮にいても瓦礫の下敷きで死んでいる。
これ以上被害を出す訳にはいかない。
神官が指示を出せない今、一番目の自分が指示を出さないといけない。
どうすればいいか迷っているとどこからか凛とした声が耳に届いた。
「まずは怪我人の手当て、神官達の状態の確認、被害状況の把握。やることは沢山ある」
声のした方を見るとサルビアがいた。
「何故、ここに公爵様が」
いるはずのない人物。
この国で最も頼りになる人物。
絶望し何もできずにいたセリには希望の光が差し込んできたように見えた。
「お前達は私についてこい」
そう叫ぶと別館へと入っていく。
堂々とつき進むその姿はこの場にいた全員の心を動かし魅了した。
ーーそうだ。やるべきことは沢山ある。立ち止まっている暇はない。
使徒達はサルビアの言葉を思い出し動き出す。
怪我人の手当て、神官達の状態の確認、被害状況を手分けして把握した。
太陽が沈み使徒達からの報告をまとめると、今回の事件は呪術師の可能性が高かった。
別館にいたほとんどは死んでしまったが、一人の神官が爆発に気づき呪いが発動する前に神聖力を放ち三分の一程結界を張れた。
呪いは神聖力を使った瞬間に発動するようできていたので、一瞬で結界を張れた神官はやはりすごいと報告を受け感じた。
本来なら別館の建物は全て崩壊していたが、その神官のお陰で何人かは助かり、別館に何があったのか知ることができた。
流石に子供達や貴族から話を聞く訳にはいかず使徒達から話を聞いた。
本当なら休ませてあげたかったが、事態が思った以上に深刻な為そうもいかなかった。
「四人共、何があったか話してくれ」
ベットの上から降りてセリに挨拶をしようとするのを手で静止し、起きなくていいと言う。
「はい。私達は最後尾にいて子供達の質問に答えながら案内をしていました」
先頭は貴族でその後ろに未来の神官候補で最後はそれ以外のただ単に神殿やそこで働く人に興味があるだけの人達。
わざわざ決めているのは使徒達が対応する相手を明確にしているため。
「分館を案内し終え、別館へ移動しました。別館には歴代の聖女の代理人の絵が飾られている廊下があります。聖女の絵と聖像は本館に飾ってあり神官と翼以外見ることはできません。なので、この廊下は神殿の見学者する者達には大人気でここでは一時間以上時間をかけて案内します」
そこまで話して使徒は急に息が上がり過呼吸になる。
セリは使徒の背中をさすり落ち着かせようとする。
近くにいた他の使徒に水を持ってくるよう指示した。
「大丈夫だ。水を飲みなさい」
水を受け取り使徒に飲ませる。
「ーーあ、ありがとうございます」
「話せるか」
「はい、大丈夫です」
残りの三人はこれから話す爆発の瞬間を思い出し、手で顔を覆い身を守ろうと小さくなる。
恐怖で体が震える。
目の前で大勢が下敷きになったのを目の当たりにしたのだから当然の反応だ。
瓦礫から助けられた人達の姿を見た使徒達の何人かはその場で吐いた。
セリだってその場では吐かなかったが一人になった瞬間吐いた。
使徒だから死体を見たことはあるが、これほど無残な死体を見たのは初めてだった。
指先が冷たくなっていく感覚がわかる。
ーー言わせたくない、知りたくない。でも、言わせないと、知らないといけない。
「では続きを話してくれ」
一番目の使徒としてどれだけ辛く嫌なことでもやらなければならない。
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