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「切れましたね」
急にヘリオトロープの声が聞こえなくアキレアとシンシアが「えっ、どうしたんだ急に」と機械を見ていると後ろからイベリスの気が抜けるような声が聞こえた。
「まあ、あの量ではこれくらいで切れますよね」
魔法石を機械から取り出し棚になおす。
「もう一度繋げてください。まだ、伝えてないことがあります」
まだ話が終わってないので通信して欲しいと頼むも一刀両断される。
「無理です」
「そこをなんとかお願いします」
「無理です。そもそも、あの神官の神聖力まだあるんですか?無くなったから切れたんですよ。それに今回は奇跡みたいなものだったんです。二度もできるとは思いません」
正論だ。
それがわかるからこれ以上は何も言えない。
「諦めてください。後はあの神官に任せるしかないでしょう。御二方は今自分のできることをやるしかないのでは」
「確かにそうですね。イベリス様、本当にありがとうございました」
アキレアが頭を下げて礼を言うとシンシアもそれに続ける。
「ありがとうございました」
二人はイベリスに感謝する。
「いえ、僕は自分にできることをやっただけなので。これ以上僕には何もできることはないでしょう。頑張ってください」
そう言うと二人が来る前にやっていた研究の続きをする。
「ジェンさん、ジェンさん。聞こえますか?」
「ヘリオか。どうかしたか?」
あまりにも切羽詰まった声で話しかけられて驚く。
「良かった。無事だったんですね」
「ああ」
無事?ヘリオは誰かに襲われたのか?
何が起きているかわからず困惑する。
「ジェンさん。今すぐ王宮に行ってください。神殿には絶対に行かないでください」
「理由を教えてくれ」
「呪術師が神殿に何かしたらしく、神殿にいた神官達が全員意識不明の重体になっているそうです」
「え……は?呪術師?どういうことだ!?」
「すみません。私もよく知らないのです。ただ、神殿とアングレカムが呪術師によって被害に遭ったと報告を受けたました。自分の目で見てないのでなんとも言えませんが、今は神殿には行くべきではないかと」
「ああ、そうだな。神官は何人神殿にいたのだ」
神官を狙ったのなら結構な神官が襲われたのだろう、と念のため何人か確認する。
「私とジェンさんとキキョウさんの三人だけが神殿におらず、残りは全員神殿にいました」
「キキョウにはもう確認したのか」
自分を含めた三人しか無事ではないということに、これからどうすればいいかわからず目の前が真っ暗になる。
「いえ、まだです。なので今の時点では無事なのは私とジェンさんだけです」
「そうか。ヘリオは今すぐ王宮に向かうのか?」
神官としての仕事はもうないのか確認する。
「いえ、今テオールにいるのでアングレカムがどうなっているのか確認して来ようかと思っています」
「もし、報告が事実なら一人で行くのは危ない。私も一緒に行こう」
「いえ。ジェンさんは王宮に向かってください。もし、国王に何かあったらこの国は終わります」
国王に何かあれば王妃と王子に権利が分散されてしまう。
そうなれば、国内で争いが起きる。
こんな状況で争いなど起これば他国に知られ攻められる可能性が高まる。
今一番大事なことは国王の安全を確保すること。
「わかった。充分気をつけるのだぞ。キキョウの安否は私が確認する。こちらのことは心配しなくていい。そちらは任せるぞ」
「はい。ありがとうございます。ジェンさんも充分気をつけてください」
こめかみに手を当てていた手を下ろし通信を終える。
「ギルバート、準備はできたか?」
ヘリオトロープは自分が通信ている間に陣を描くよう指示していた。
「はい。いつでもいけます」
「では、いくぞ」
陣を発動させアングレカムに一瞬で移動しろうとする。
神聖力を陣に注いたが発動することはなく移動できなかった。
「どういうことだ」
ヘリオトロープは一連の出来事が理解できず困惑する。
使徒達も陣が発動しない事態に動揺する。
陣は完璧で何処にもミスはない。
神聖力も問題なく注げた。
考えられる理由はただ一つ。
呪術士達が結界を張り妨害しているのだろう。
「仕方ない。馬で移動するか」
今の状況を呑み込み臨機応変に対処する。
陣からでて使徒達に指示を出す。
思った以上に厄介な事態になっている。
これほどの呪術師がいたにも関わらず誰も気づくことができなかった。
呪術師だと知られれば死刑になるのに、ここに来て呪術を使ったということはバレても問題はない。
死など恐れていない。
あるいは余程自身があるのだろう。
だから神官にあんなことをしたのだ。
「準備が整い次第出発するぞ」
「はい」
使徒達が急いで出発の準備をする。
ヘリオトロープも準備しようとしたが、その時ジェンシャンから通信が入った。
「ヘリオ、今大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。何かありましたか?」
「ああ、キキョウが呪術師の一味と出会って交戦したらしい。何人かは取り逃がしたらしいが三人捕まえた」
詳しいことはまだ聞いていないらしく、良くわかっていない。
「これから、私は陣でキキョウのところに行く。また、分かり次第連絡する」
「待ってください」
「どうかしたか」
「陣での移動がもしかしたらできないかもしれません」
「どういうことか説明してくれ」
陣での移動は神聖力を結構使うが正しい手順で発動させると望むところに移動できる。
それをできないとヘリオトロープは言う。
これも呪術師の仕業なのかと。
「少し前陣でアングレカムに移動しようとしてのですが、発動できませんでした。何回かやってみたのですが結果は変わらず失敗に終わりました」
「呪術師の仕業と思うか」
「物証はありませんが、間違いないかと。我々神官にそんなことをするのは呪術師だけかと。それに、キキョウさんの前に現れたのも偶然ではないかと思います」
「私もそう思う。一度私も試してみる。何か条件があるかもしれん。一度切るぞ。試してどうだったか後でまた通信で教える」
「わかりました」
そう言うと通信を終えジェンシャンは陣を地面に描き始める。
陣の真ん中に立ち神聖力を注いでいくと陣が光り始め、使徒達が目も開けられないほど眩しく輝くとジェンシャン達はキキョウ達のいる場所へ一瞬で移動した。
急にヘリオトロープの声が聞こえなくアキレアとシンシアが「えっ、どうしたんだ急に」と機械を見ていると後ろからイベリスの気が抜けるような声が聞こえた。
「まあ、あの量ではこれくらいで切れますよね」
魔法石を機械から取り出し棚になおす。
「もう一度繋げてください。まだ、伝えてないことがあります」
まだ話が終わってないので通信して欲しいと頼むも一刀両断される。
「無理です」
「そこをなんとかお願いします」
「無理です。そもそも、あの神官の神聖力まだあるんですか?無くなったから切れたんですよ。それに今回は奇跡みたいなものだったんです。二度もできるとは思いません」
正論だ。
それがわかるからこれ以上は何も言えない。
「諦めてください。後はあの神官に任せるしかないでしょう。御二方は今自分のできることをやるしかないのでは」
「確かにそうですね。イベリス様、本当にありがとうございました」
アキレアが頭を下げて礼を言うとシンシアもそれに続ける。
「ありがとうございました」
二人はイベリスに感謝する。
「いえ、僕は自分にできることをやっただけなので。これ以上僕には何もできることはないでしょう。頑張ってください」
そう言うと二人が来る前にやっていた研究の続きをする。
「ジェンさん、ジェンさん。聞こえますか?」
「ヘリオか。どうかしたか?」
あまりにも切羽詰まった声で話しかけられて驚く。
「良かった。無事だったんですね」
「ああ」
無事?ヘリオは誰かに襲われたのか?
何が起きているかわからず困惑する。
「ジェンさん。今すぐ王宮に行ってください。神殿には絶対に行かないでください」
「理由を教えてくれ」
「呪術師が神殿に何かしたらしく、神殿にいた神官達が全員意識不明の重体になっているそうです」
「え……は?呪術師?どういうことだ!?」
「すみません。私もよく知らないのです。ただ、神殿とアングレカムが呪術師によって被害に遭ったと報告を受けたました。自分の目で見てないのでなんとも言えませんが、今は神殿には行くべきではないかと」
「ああ、そうだな。神官は何人神殿にいたのだ」
神官を狙ったのなら結構な神官が襲われたのだろう、と念のため何人か確認する。
「私とジェンさんとキキョウさんの三人だけが神殿におらず、残りは全員神殿にいました」
「キキョウにはもう確認したのか」
自分を含めた三人しか無事ではないということに、これからどうすればいいかわからず目の前が真っ暗になる。
「いえ、まだです。なので今の時点では無事なのは私とジェンさんだけです」
「そうか。ヘリオは今すぐ王宮に向かうのか?」
神官としての仕事はもうないのか確認する。
「いえ、今テオールにいるのでアングレカムがどうなっているのか確認して来ようかと思っています」
「もし、報告が事実なら一人で行くのは危ない。私も一緒に行こう」
「いえ。ジェンさんは王宮に向かってください。もし、国王に何かあったらこの国は終わります」
国王に何かあれば王妃と王子に権利が分散されてしまう。
そうなれば、国内で争いが起きる。
こんな状況で争いなど起これば他国に知られ攻められる可能性が高まる。
今一番大事なことは国王の安全を確保すること。
「わかった。充分気をつけるのだぞ。キキョウの安否は私が確認する。こちらのことは心配しなくていい。そちらは任せるぞ」
「はい。ありがとうございます。ジェンさんも充分気をつけてください」
こめかみに手を当てていた手を下ろし通信を終える。
「ギルバート、準備はできたか?」
ヘリオトロープは自分が通信ている間に陣を描くよう指示していた。
「はい。いつでもいけます」
「では、いくぞ」
陣を発動させアングレカムに一瞬で移動しろうとする。
神聖力を陣に注いたが発動することはなく移動できなかった。
「どういうことだ」
ヘリオトロープは一連の出来事が理解できず困惑する。
使徒達も陣が発動しない事態に動揺する。
陣は完璧で何処にもミスはない。
神聖力も問題なく注げた。
考えられる理由はただ一つ。
呪術士達が結界を張り妨害しているのだろう。
「仕方ない。馬で移動するか」
今の状況を呑み込み臨機応変に対処する。
陣からでて使徒達に指示を出す。
思った以上に厄介な事態になっている。
これほどの呪術師がいたにも関わらず誰も気づくことができなかった。
呪術師だと知られれば死刑になるのに、ここに来て呪術を使ったということはバレても問題はない。
死など恐れていない。
あるいは余程自身があるのだろう。
だから神官にあんなことをしたのだ。
「準備が整い次第出発するぞ」
「はい」
使徒達が急いで出発の準備をする。
ヘリオトロープも準備しようとしたが、その時ジェンシャンから通信が入った。
「ヘリオ、今大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。何かありましたか?」
「ああ、キキョウが呪術師の一味と出会って交戦したらしい。何人かは取り逃がしたらしいが三人捕まえた」
詳しいことはまだ聞いていないらしく、良くわかっていない。
「これから、私は陣でキキョウのところに行く。また、分かり次第連絡する」
「待ってください」
「どうかしたか」
「陣での移動がもしかしたらできないかもしれません」
「どういうことか説明してくれ」
陣での移動は神聖力を結構使うが正しい手順で発動させると望むところに移動できる。
それをできないとヘリオトロープは言う。
これも呪術師の仕業なのかと。
「少し前陣でアングレカムに移動しようとしてのですが、発動できませんでした。何回かやってみたのですが結果は変わらず失敗に終わりました」
「呪術師の仕業と思うか」
「物証はありませんが、間違いないかと。我々神官にそんなことをするのは呪術師だけかと。それに、キキョウさんの前に現れたのも偶然ではないかと思います」
「私もそう思う。一度私も試してみる。何か条件があるかもしれん。一度切るぞ。試してどうだったか後でまた通信で教える」
「わかりました」
そう言うと通信を終えジェンシャンは陣を地面に描き始める。
陣の真ん中に立ち神聖力を注いでいくと陣が光り始め、使徒達が目も開けられないほど眩しく輝くとジェンシャン達はキキョウ達のいる場所へ一瞬で移動した。
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