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王妃
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「陛下。正気ですか。サルビアに神官十人も連れて行くのを許可したと言うのは」
貴族達が頼った人物はこの国で四番目に偉い王妃ロベリアだった。
この国では一番偉いのは聖女とされてあり、国王よりも上。
次に国王がきて、三番目に聖女の代理人。
そしてその次が王妃。
現在、聖女と代理人は現れていない。
国王に意見を言えるとしたら王妃かいない。
貴族達が頼れる人物は王妃だけ。
そろそろ来る頃だと思っていたが、ノックもせずに入ってくるとは。
頭が痛くなる。
何故自分はこんな女と再婚したのかと。
あの時なんとしてでも断るべきだった。
日に日に後悔が募る。
国の為にこの結婚は正しいと自分に言い聞かせたのは何だったのかと後悔するくらい、ロベリアとの結婚は間違いだったと今では考えている。
「だとしたらなんだ。私の決定に文句でもあるのか」
ロベリアがブローディア家を嫌っているのは知っている。
事あるごとに嫌がらせをしているのも。
何度謝罪をしたことか。
娘のナーシサスがマーガレットを社交界から追い出したときも謝罪した。
王宮のパーティーに誘ったがあの日以来一度も訪れてこない。
他のパーティーにも参加しなくなったと聞く。
最初の妻とのときにできた息子二人は立派に育ったと言うのに。
ロベリアの娘というだけで嫌ってはいけないと思い息子二人と変わらず接していたが、だんだん歳を取るた王妃に似ていき、実の娘だが生理的に受け付けなくなっていた。
決定打はマーガレットがパーティーに現れていないと噂を聞いたときだった。
それ以降ロベリアにもナーシサスにも権力を使えないよう根回しをしたが、実の弟の が後ろについていてあまり効果がなかった。
「それは……、ですが、十人は多すぎるかと。一つの町に神官が十人も訪れれば他の町から避難が殺到します」
「だったら、そいつら全員アングレカムに連れて行けばいい。それでも同じことが言えるのなら私が直々に話を聞こう」
遠回しにお前も見てから言え、と言っていた。
「陛下。ですが、今この国は聖女も聖女の代理人もいません。神官が神殿を守っているのです。もし、神殿が襲われでもしたらどうするおつもりですか」
なんとしてでも、神官を連れて行くのを阻止しようとする。
「それがどうした」
「どうしたって、陛下、自分が何をおっしゃったかわかっておられるのですか」
「だから、それがどうした。お前の方こそ今の状況がわかっているのか。呪術師が復活したのだぞ。何百年も現れなかった呪術師が今この時代に現れたのだ。並大抵のものではない」
ロベリアに言い聞かせるというより自分に言い聞かせるように続きを話す。
「呪術師が恐れられ討伐されるようになった者と同等の力をもっているかもしれないんだぞ。呪術師が討伐できたのは聖女がいたからだ。今この国に聖女も代理人もいない。神官が必死に神殿を守っても、もし同等の力をもった呪術師だったらこの国は滅ぶのだ。わかるな。この国を神殿を本当の意味で守れるのはただ一人。聖女だけ。聖女がいない今神官達がやらねばいけないことは国を守る為に尽力することだ。それを邪魔するというのなら、お前はこの国の敵になるということだ」
「……」
ロベリアは何も言い返せず悔しそうに唇を噛み黙って話を聞き続けた。
これ以上話すことはない、と出て行くよう手を振る。
「呪術師が現れたというのに……」
ため息を吐きこの国の貴族達に呆れて頭を抱える。
「聖女、いや代理人でもいい。早く現れてくれ」
祈るように呟く。
「いつも、いつも、ブローディア、ブローディア。そんなにブローディア家が大切なの!」
自室に戻るなり近くにあった物を投げていく。
使用人達はロベリアが機嫌が悪くなるとすぐものに当たるのに慣れているが、今回は使用人の一人の頭に当たり怪我をさした。
そのときちょうどトントントン、と扉を叩く音が部屋に響いた。
「誰」
「私です。サティラです」
ロベリアの弟のパルサティラが声をかける。
「入りなさい」
「失礼します。何かあったのですか」
「何もないわ。気にしないで」
パルサティラに座るよう促し、使用人達に出て行くよう命じる。
「姉上。また、あの男が原因ですか」
使用人達が出ていくとロベリアに声をかける。
返事をしないのを肯定とり話を続ける。
「姉上。計画を早めますか」
「パルサティラ!」
「申し訳ありません」
「ここは王宮よ。誰が聞き耳を立てているかわからないのよ。言葉には気をつけなさい」
計画を早める、だけでは例え誰に聞かれても問題はないが疑われるような行動は出来るだけ避けなくては実行できない。
ロベリアに怒鳴られ落ち込むパルサティラに近くに来るようにいい頭を撫でる。
「あともう少しで全てが手に入るのよ。今はまだ我慢しなければならないときよ。いい?サティラ。これは絶対に失敗してはいけないの」
「はい、姉上」
「今日はもう帰りなさい。これから貴族達と会わねばならないの」
国王との会話を報告しどうするか話し合わねばならない。
「わかりました」
失礼します、と部屋の外で待機している使用人達がいるのに気づき、社交界用の愛想笑いをして「すみませんが、後はよろしくお願いします」とロベリアの機嫌をとるよう頼む。
「はい。パルサティラ様」
パルサティラの愛想笑いに顔赤らめる。
部屋の中に入っていく使用人達を嘲笑うかのようにフッと鼻で笑い王宮を出て行く。
早くロベリアをこの世で最も尊い存在にする為にも計画を早めなければと急いで秘密の場所に向かう。
貴族達が頼った人物はこの国で四番目に偉い王妃ロベリアだった。
この国では一番偉いのは聖女とされてあり、国王よりも上。
次に国王がきて、三番目に聖女の代理人。
そしてその次が王妃。
現在、聖女と代理人は現れていない。
国王に意見を言えるとしたら王妃かいない。
貴族達が頼れる人物は王妃だけ。
そろそろ来る頃だと思っていたが、ノックもせずに入ってくるとは。
頭が痛くなる。
何故自分はこんな女と再婚したのかと。
あの時なんとしてでも断るべきだった。
日に日に後悔が募る。
国の為にこの結婚は正しいと自分に言い聞かせたのは何だったのかと後悔するくらい、ロベリアとの結婚は間違いだったと今では考えている。
「だとしたらなんだ。私の決定に文句でもあるのか」
ロベリアがブローディア家を嫌っているのは知っている。
事あるごとに嫌がらせをしているのも。
何度謝罪をしたことか。
娘のナーシサスがマーガレットを社交界から追い出したときも謝罪した。
王宮のパーティーに誘ったがあの日以来一度も訪れてこない。
他のパーティーにも参加しなくなったと聞く。
最初の妻とのときにできた息子二人は立派に育ったと言うのに。
ロベリアの娘というだけで嫌ってはいけないと思い息子二人と変わらず接していたが、だんだん歳を取るた王妃に似ていき、実の娘だが生理的に受け付けなくなっていた。
決定打はマーガレットがパーティーに現れていないと噂を聞いたときだった。
それ以降ロベリアにもナーシサスにも権力を使えないよう根回しをしたが、実の弟の が後ろについていてあまり効果がなかった。
「それは……、ですが、十人は多すぎるかと。一つの町に神官が十人も訪れれば他の町から避難が殺到します」
「だったら、そいつら全員アングレカムに連れて行けばいい。それでも同じことが言えるのなら私が直々に話を聞こう」
遠回しにお前も見てから言え、と言っていた。
「陛下。ですが、今この国は聖女も聖女の代理人もいません。神官が神殿を守っているのです。もし、神殿が襲われでもしたらどうするおつもりですか」
なんとしてでも、神官を連れて行くのを阻止しようとする。
「それがどうした」
「どうしたって、陛下、自分が何をおっしゃったかわかっておられるのですか」
「だから、それがどうした。お前の方こそ今の状況がわかっているのか。呪術師が復活したのだぞ。何百年も現れなかった呪術師が今この時代に現れたのだ。並大抵のものではない」
ロベリアに言い聞かせるというより自分に言い聞かせるように続きを話す。
「呪術師が恐れられ討伐されるようになった者と同等の力をもっているかもしれないんだぞ。呪術師が討伐できたのは聖女がいたからだ。今この国に聖女も代理人もいない。神官が必死に神殿を守っても、もし同等の力をもった呪術師だったらこの国は滅ぶのだ。わかるな。この国を神殿を本当の意味で守れるのはただ一人。聖女だけ。聖女がいない今神官達がやらねばいけないことは国を守る為に尽力することだ。それを邪魔するというのなら、お前はこの国の敵になるということだ」
「……」
ロベリアは何も言い返せず悔しそうに唇を噛み黙って話を聞き続けた。
これ以上話すことはない、と出て行くよう手を振る。
「呪術師が現れたというのに……」
ため息を吐きこの国の貴族達に呆れて頭を抱える。
「聖女、いや代理人でもいい。早く現れてくれ」
祈るように呟く。
「いつも、いつも、ブローディア、ブローディア。そんなにブローディア家が大切なの!」
自室に戻るなり近くにあった物を投げていく。
使用人達はロベリアが機嫌が悪くなるとすぐものに当たるのに慣れているが、今回は使用人の一人の頭に当たり怪我をさした。
そのときちょうどトントントン、と扉を叩く音が部屋に響いた。
「誰」
「私です。サティラです」
ロベリアの弟のパルサティラが声をかける。
「入りなさい」
「失礼します。何かあったのですか」
「何もないわ。気にしないで」
パルサティラに座るよう促し、使用人達に出て行くよう命じる。
「姉上。また、あの男が原因ですか」
使用人達が出ていくとロベリアに声をかける。
返事をしないのを肯定とり話を続ける。
「姉上。計画を早めますか」
「パルサティラ!」
「申し訳ありません」
「ここは王宮よ。誰が聞き耳を立てているかわからないのよ。言葉には気をつけなさい」
計画を早める、だけでは例え誰に聞かれても問題はないが疑われるような行動は出来るだけ避けなくては実行できない。
ロベリアに怒鳴られ落ち込むパルサティラに近くに来るようにいい頭を撫でる。
「あともう少しで全てが手に入るのよ。今はまだ我慢しなければならないときよ。いい?サティラ。これは絶対に失敗してはいけないの」
「はい、姉上」
「今日はもう帰りなさい。これから貴族達と会わねばならないの」
国王との会話を報告しどうするか話し合わねばならない。
「わかりました」
失礼します、と部屋の外で待機している使用人達がいるのに気づき、社交界用の愛想笑いをして「すみませんが、後はよろしくお願いします」とロベリアの機嫌をとるよう頼む。
「はい。パルサティラ様」
パルサティラの愛想笑いに顔赤らめる。
部屋の中に入っていく使用人達を嘲笑うかのようにフッと鼻で笑い王宮を出て行く。
早くロベリアをこの世で最も尊い存在にする為にも計画を早めなければと急いで秘密の場所に向かう。
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