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サルビア

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「我が国の偉大なる太陽、国王陛下にご挨拶申し上げます。この度は急な謁見をお許しいただき感謝致します」

美しい礼をし国王に挨拶する。

国王は手でそれ以上はいいと静止する。

「公爵。先程部下から公爵が呪術師が現れたとおっしゃったと報告を受けました。何があったのか説明してください」

ジギタリス家当主のヴォルフが最初に質問する。

本来それは王が言うべき言葉であって、侯爵が公爵に大して言うべきではない。

まあ、そんなこと今はどうでもいいし気にしない。

それに元々そのつもりだったので、手間が省けてちょうどいいと説明する。

「ええ、もちろんです。私はこの目でしかと呪術の陣を確認したので、国王にご報告に上がったのです」

呪術の陣。

サルビアがその言葉を発した瞬間、これまで「公爵の見間違いでは」「きっと何かの勘違いだろう」とヒソヒソ話していた者達が黙り込み国王の声だけが響き渡る。

「全て話してくれ」

入ったときから顔色が悪かったがさらに悪くなった国王がサルビアにそう命じた。

「はい。全ては一週間前娘のマーガレットから報告を受けたことがきっかけです」

夜中にいきなり泥まみれで帰ってきたマーガレットの姿を思い出した。

娘に嫌なことをさせてしまい、何がなんでもあの日自分が行けばよかったと後悔した。



マーガレットが帰ってくる数分前。

サルビアは自室に籠もっていつものように仕事をしていた。

最近妙に盗賊の被害報告があがってきているのでそれの対処におわれていた。

ひと段落して休憩しようとしたら、何やら外が騒がしいことに気づき何事かと席をたとうとしたらタイミングよく誰かが扉を叩いた。

「入ってかまん」

中に入ってきた人物を見て目を見開く。

この場にいるはずのないマーガレットがいた。

「お父様。今すぐ報告したいことがあります」

顔を見てすぐに察した。

とんでもないことが起きる、いや起こっているのだと。

下手をすれば死ぬことになるかもしれない、と。

これまで命の危険を感じたことは多々あるが、この件は解決するまでずっと命を狙われることになるとこれまでの経験からわかった。

「何があった」

緊張しているのか自分でも驚くほど声が硬くなる。

部屋の空気が一気に重くなる。

マーガレットからの報告を聞き終わる頃には部屋の空気はさらに重くなっていた。

これからのことを頭の中で整理し指示を出そうと口を開いたが、それより早くにマーガレットが指示を出したのでそれに従うことにした。

我が娘の成長を見れて嬉しく思うも、今は非常事態なので心から喜べないのが残念だった。

「わかった。任せよう」

マーガレット達がでていきすぐにサルビアも部屋からでていく。

とりあえずまだ起きている騎士達に今すぐ商人達の家に言って食料の調達をするように伝える。

残りの騎士達に公爵家にある食料をすぐに運べるよう準備するよう指示を出す。

全ての準備が整い今すぐに出発できるとなった頃には空は明るくなり太陽が出始めていた。

マーガレット達は上手くいったかと考えたと同時に使用人の一人が自分を呼びに来た。



「この二人が私の手紙を盗んだのか」

床に座り込み震えている二人を見て問いかける。

「はい」

「何故盗んだ。誰に頼まれた。何のためにこんなことをした。何が目的なのだ」

問いかけに二人は答えることはなくただ許して欲しいと懇願するだけだった。

今は時間がないというのに、こんな茶番に付き合う暇はない。

そう思い公爵家当主として罪を犯した者に罰を与えることにした。

「何も話すつもりはないみたいだな。なら、その舌は要らないだろ。人の手紙を盗んでしまうなら、その手は要らないだろ」

その声と口調は酷く冷たくその場にいた全員が金縛りにあったみたいに動けなくなる。

「あの二人の舌と手を斬り落とせ」

「はっ」

サルビアに命令された瞬間、騎士達は二人を取り押さえ舌と腕を斬り落とそうとする。

言われた通りに動く騎士達は、まるでサルビアの操り人形にでもなった気分になる。

だが、それでいいのだ。

自分達は公爵家を守る騎士。

公爵家を脅やかす者は排除するのが役目。

サルビアが捕まえろと言えば捕まえ、殺せと言えば殺す。

それが自分達の仕事。

「お辞めください。どうかお許しください」

騎士の一人に腕を斬られそうになり漸く話すことを決意する。

「なら、話すか。これ以上謝罪はいらん。話す気がないなら黙って罰を受け入れろ」

「旦那様。全てお話しします。だから、どうか命だけはお助けください」

二人のやり取りを見ていたジョンははシーラが手を斬られそうなところを見て話さないと自分もそうなると思い頭を下げて懇願する。

二人の話を聞き終えると思ったよりも事態は深刻で複雑だった。

その中でも一番はシルバーライス家がこの件に関わっているかもしれないということだった。

最悪現国王の弟が今回の件を裏で操っているということになる。

これを聞いたとき自分の首が跳ねられるのが見えた。

未来で起きることかもしれないと。

あまりに鮮明すぎる光景に吐き気がしたが、皆の前でそんな姿を晒すことなどできず必死に耐えた。

すぐにこの場にいる全員に許可するまで誰にも話すことを禁じた。

下手をすれば全員死ぬことがわかっているのか全員了承した。

その後すぐに屋敷をでて町へと向かった。

町につくなり領主であるアスターに簡単な報告を聞き詳しい話は娘とするよう指示して、自分は呪術の陣を探しに向かう。

サルビアは町の惨状をみて「ここは地獄か」と思うほど酷かった。

土は枯れ、川の水は消え、美しい緑に囲まれた町の面影はどこにもなかった。

町の至るところに死体があり死臭がした。

人々の顔から笑顔が消え去り、絶望しただ死を待つだけの表情をしていた。

原因を早く見つけ助けなければ。

馬を走らせくまなく呪術の陣を探した。

夜になると流石に危険なので一旦詮索は中止しマーガレット達がいるアスターの屋敷へと向かう。

見た限り呪術の陣は本物のだった。

マーガレットが何故呪術に気づけたのかは疑問はあるが、それを考える時間すら今はないので後回しにする。

とりあえず、この町を救うには神官の力が必要不可欠。

今すぐにでも神殿に向かいたいが、それには国王とその臣下達を納得したさせる必要がある。

こうしている間にも人が死んでいると思うとどうしようもなく、呪術師達にたいする怒りがこみ上げてくる。

「どんな手を使っても必ず全員地獄に堕としてやる」

その声は近くにいる者の耳にも届かなかったが、遠く離れた町にいたアネモネの耳には確かにその声が届き後ろをバッと振り返る。

フードを深く被りその場から逃げ出すように走り去っていく。
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