上 下
3 / 81

十八歳

しおりを挟む
「マーガレット、少しいいかしら」

朝食を終え部屋に戻ろうとしていたところをカトレアから声をかけられた。

「はい。大丈夫です」

きっといきなりパーティーに行くと言ったからから心配してるのだと思い大丈夫だと返事する。

「庭で少し話さない?」

「はい」

カトレアは使用人に庭までお茶を持ってくるよう指示する。



「マーガレット。どうして、いきなりパーティーに行こうと思ったのか聞いてもいいかしら」

お茶を一口飲んで一息ついてからマーガレットに尋ねる。

さて、どうしたものかとマーガレットは困った顔をする。

本当の事は言えないし、母親を心配させず納得させる理由が思いつかず黙り込んでしまう。

「……友達が欲しいと思ったのです。パーティーに行けばできるかもと、そう思ったのです」

少しもそんな事を思った事などないが、カトレアにこれ以上聞かれない様それらしい理由を言う。

「そう、そうなのね。なら、目一杯お洒落して行かないとね」

カトレアはマーガレットの言葉に一応は納得するも、本当は違う理由があるのではないかと疑ってしまう。

少し前まで友達が欲しいとは思ってないと言っていたから。

マーガレットは町の人達からは尊敬され好かれているが、友達と呼べるような関係の子はいなかった。

そもそもマーガレットはパーティーよりも町の人達と話す方が好きだとよく言っていたので貴族の人達と関わるのに興味がないと思っていた。

でも、もしかしてら本当はずっと友達が欲しかったのに寂しい思いをさせていたのか、と思うと申し訳なくなる。

嘘かもしれないが友達が欲しいというマーガレットの願いを叶える為にも全力でサポートすることを決意する。

「はい」

「ドレスはアイリスに頼むつもりよ。何か要望はあるかしら」

「恥ずかしいんですが、今どんなドレスが流行っているのかわからなくて、お任せしようかと思ってるんです」

嘘。

本当は何が流行っているのか知っている。

これから何が流行するかも知っている。

でも、それを自分のアイディアみたいに提案して作らせるのは違う。

それはアイリスが考えたもの。

寝る間も惜しんで苦労して作ったもの。

その評価をされるのはアイリスであって私ではない。

それに、アイリスが作るドレスは間違いないので任せても問題ない。

「マーガレットなら何着ても美しいから大丈夫よ。でも、そうね。私も最近はどんなドレスが流行っているのかよく知らないわ。まぁ、でも彼女に頼めば確実だから問題ないわね」

「はい。私もそう思います」

それから二人はたわいもない話をして暫くしてから家の中に入る。





「さてと、状況を整理しよう」

紙とペンを用意する。

今マーガレットがいるのは前回より一年前の十八歳のとき。

さっき六月十七日にパーティーがあった年を思い出した。

何故前回の回帰より一年前に今回はきたのかわからないが、きっと理由があるはずだ。

今はわからなくてもいつか時がくればわかるだろう、と思い理由を考えるのは後回しにする。

「十八歳のときって何があったかしら」

前回の人生は十九歳からだったので最初の人生の頃の記憶を必死で思い出す。

「あっ!ランドゥーニ国との関係が悪化した年だわ!」

ランドゥーニ国。

その国はこの国の隣にある国。

別名、竜(ドラゴン)の国と呼ばれている。

ランドゥーニ国は大昔から竜を神として崇めている。

国に危険が及ぶと竜が現れ災いから守ってくれる、という言い伝えがある。

そのため、数年前まではどの国よりも力があると恐れられていて誰も手を出すことができなかった。

だが、ここ数年でその考えが変わってきた。

ーー竜を見たものは誰もいない。攻められないための嘘ではないか。本当は竜の加護などないのではないか。

この国をはじめ多くの国がそう思いはじめている。

これまで我々を騙していた罪を償わせるべきだと言って、八月にランドゥーニ国を招いた王宮パーティーで王妃をはじめ一部の貴族がランドゥーニ国の王、シオンを侮辱したのだ。

国王がいればそんな愚かな行為を許したりはしなかったが、そのとき国王は体調を崩してパーティーに参加することができなかった。

そのせいで、ランドゥーニ国との関係は修復不可能なところまで落ちてしまい、三年もの間ずっと戦争が続いてしまった。

マーガレットは二十二歳で殺された。

戦争はマーガレットが殺される時にはまだ終わっていなかったので、どちらが勝利したのかは知らない。

一回目も二回目も同じくらいに殺された。

そして、殺された理由にランドゥーニ国が深く関係していた。

両親はランドゥー日国が食料危機に陥ったとき真っ先に手を差し伸べ食料を届けた。

マーガレットは最初の人生で出会ったランドゥーニ国の老婆と仲良くなり言語と踊りを教えてもらった。

ランドゥーニ国との交流はそれだけだったが、それを理由にあることないことをでっち上げられ、マーガレット達は死ぬことになった。

「関わらないようにするべきだよね……」

そう頭ではわかっているのに、助けたいと思っている自分がいる。

関わればまた言いがかりをつけられ、殺される理由を与えてしまう。

それでも、あの時初めて友達と呼べる存在ができた。

彼女と彼女の国の人達は何も悪くないのに……

「戦争は国外ではなく国内でするのよ」

馬鹿な王妃達のせいで戦争なんて起こさせない。

沢山の人が死ぬところをもう見たくはない。

三度目の人生では国同士の戦争をおこさせない。

どんな手を使っても阻止してみせる。

そのためには、第一条件としてあの男を手にいれなければならない。

二度目の人生で私を殺した男。

この国の英雄と言われる男。

カラント・フェイスフル。



二度目の人生で最後に見たカラントの格好を思い出す。

あの服装はあの女がカラントの為に作った騎士団のものだった。

つまり、カラントはいずれアネモネの元にいく。

騎士団が設立されたのはマーガレットが死ぬ約一年半前。

二十歳のとき。

カラントは団長と呼ばれていたので設立されたときからいたのであろう。

いつからカラントがアネモネに目をつけていたかは知らないが、前回より一年前に回帰したのでタイムリミットは一年あるはずだ。

その一年でアネモネより早く手元におかないといけない。

但しこれはアネモネが今回は一緒に回帰してないことを前提にしている作戦。

マーガレットが復讐を果たすにはどれだけアネモネから人を奪えるかで決まる。

そのためにも絶対にカラントを手に入れないといけない。

「カラント、貴方には今回の人生では私の犬となってもらうわよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】婚約破棄にて奴隷生活から解放されたので、もう貴方の面倒は見ませんよ?

かのん
恋愛
 ℌot ランキング乗ることができました! ありがとうございます!  婚約相手から奴隷のような扱いを受けていた伯爵令嬢のミリー。第二王子の婚約破棄の流れで、大嫌いな婚約者のエレンから婚約破棄を言い渡される。  婚約者という奴隷生活からの解放に、ミリーは歓喜した。その上、憧れの存在であるトーマス公爵に助けられて~。  婚約破棄によって奴隷生活から解放されたミリーはもう、元婚約者の面倒はみません!  4月1日より毎日更新していきます。およそ、十何話で完結予定。内容はないので、それでも良い方は読んでいただけたら嬉しいです。   作者 かのん

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は

だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。 私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。 そのまま卒業と思いきや…? 「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑) 全10話+エピローグとなります。

【完結】大聖女の息子はやり直す

ゆるぽ
ファンタジー
大聖女の息子にして次期侯爵であるディート・ルナライズは義母と義姉に心酔し破滅してしまった。力尽き倒れた瞬間に15歳の誕生日に戻っていたのだ。今度は絶対に間違えないと誓う彼が行動していくうちに1度目では知らなかった事実がどんどんと明らかになっていく。母の身に起きた出来事と自身と実妹の秘密。義母と義姉の目的とはいったい?/完結いたしました。また念のためR15に変更。/初めて長編を書き上げることが出来ました。読んでいただいたすべての方に感謝申し上げます。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...