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十八歳
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「マーガレット、少しいいかしら」
朝食を終え部屋に戻ろうとしていたところをカトレアから声をかけられた。
「はい。大丈夫です」
きっといきなりパーティーに行くと言ったからから心配してるのだと思い大丈夫だと返事する。
「庭で少し話さない?」
「はい」
カトレアは使用人に庭までお茶を持ってくるよう指示する。
「マーガレット。どうして、いきなりパーティーに行こうと思ったのか聞いてもいいかしら」
お茶を一口飲んで一息ついてからマーガレットに尋ねる。
さて、どうしたものかとマーガレットは困った顔をする。
本当の事は言えないし、母親を心配させず納得させる理由が思いつかず黙り込んでしまう。
「……友達が欲しいと思ったのです。パーティーに行けばできるかもと、そう思ったのです」
少しもそんな事を思った事などないが、カトレアにこれ以上聞かれない様それらしい理由を言う。
「そう、そうなのね。なら、目一杯お洒落して行かないとね」
カトレアはマーガレットの言葉に一応は納得するも、本当は違う理由があるのではないかと疑ってしまう。
少し前まで友達が欲しいとは思ってないと言っていたから。
マーガレットは町の人達からは尊敬され好かれているが、友達と呼べるような関係の子はいなかった。
そもそもマーガレットはパーティーよりも町の人達と話す方が好きだとよく言っていたので貴族の人達と関わるのに興味がないと思っていた。
でも、もしかしてら本当はずっと友達が欲しかったのに寂しい思いをさせていたのか、と思うと申し訳なくなる。
嘘かもしれないが友達が欲しいというマーガレットの願いを叶える為にも全力でサポートすることを決意する。
「はい」
「ドレスはアイリスに頼むつもりよ。何か要望はあるかしら」
「恥ずかしいんですが、今どんなドレスが流行っているのかわからなくて、お任せしようかと思ってるんです」
嘘。
本当は何が流行っているのか知っている。
これから何が流行するかも知っている。
でも、それを自分のアイディアみたいに提案して作らせるのは違う。
それはアイリスが考えたもの。
寝る間も惜しんで苦労して作ったもの。
その評価をされるのはアイリスであって私ではない。
それに、アイリスが作るドレスは間違いないので任せても問題ない。
「マーガレットなら何着ても美しいから大丈夫よ。でも、そうね。私も最近はどんなドレスが流行っているのかよく知らないわ。まぁ、でも彼女に頼めば確実だから問題ないわね」
「はい。私もそう思います」
それから二人はたわいもない話をして暫くしてから家の中に入る。
「さてと、状況を整理しよう」
紙とペンを用意する。
今マーガレットがいるのは前回より一年前の十八歳のとき。
さっき六月十七日にパーティーがあった年を思い出した。
何故前回の回帰より一年前に今回はきたのかわからないが、きっと理由があるはずだ。
今はわからなくてもいつか時がくればわかるだろう、と思い理由を考えるのは後回しにする。
「十八歳のときって何があったかしら」
前回の人生は十九歳からだったので最初の人生の頃の記憶を必死で思い出す。
「あっ!ランドゥーニ国との関係が悪化した年だわ!」
ランドゥーニ国。
その国はこの国の隣にある国。
別名、竜(ドラゴン)の国と呼ばれている。
ランドゥーニ国は大昔から竜を神として崇めている。
国に危険が及ぶと竜が現れ災いから守ってくれる、という言い伝えがある。
そのため、数年前まではどの国よりも力があると恐れられていて誰も手を出すことができなかった。
だが、ここ数年でその考えが変わってきた。
ーー竜を見たものは誰もいない。攻められないための嘘ではないか。本当は竜の加護などないのではないか。
この国をはじめ多くの国がそう思いはじめている。
これまで我々を騙していた罪を償わせるべきだと言って、八月にランドゥーニ国を招いた王宮パーティーで王妃をはじめ一部の貴族がランドゥーニ国の王、シオンを侮辱したのだ。
国王がいればそんな愚かな行為を許したりはしなかったが、そのとき国王は体調を崩してパーティーに参加することができなかった。
そのせいで、ランドゥーニ国との関係は修復不可能なところまで落ちてしまい、三年もの間ずっと戦争が続いてしまった。
マーガレットは二十二歳で殺された。
戦争はマーガレットが殺される時にはまだ終わっていなかったので、どちらが勝利したのかは知らない。
一回目も二回目も同じくらいに殺された。
そして、殺された理由にランドゥーニ国が深く関係していた。
両親はランドゥー日国が食料危機に陥ったとき真っ先に手を差し伸べ食料を届けた。
マーガレットは最初の人生で出会ったランドゥーニ国の老婆と仲良くなり言語と踊りを教えてもらった。
ランドゥーニ国との交流はそれだけだったが、それを理由にあることないことをでっち上げられ、マーガレット達は死ぬことになった。
「関わらないようにするべきだよね……」
そう頭ではわかっているのに、助けたいと思っている自分がいる。
関わればまた言いがかりをつけられ、殺される理由を与えてしまう。
それでも、あの時初めて友達と呼べる存在ができた。
彼女と彼女の国の人達は何も悪くないのに……
「戦争は国外ではなく国内でするのよ」
馬鹿な王妃達のせいで戦争なんて起こさせない。
沢山の人が死ぬところをもう見たくはない。
三度目の人生では国同士の戦争をおこさせない。
どんな手を使っても阻止してみせる。
そのためには、第一条件としてあの男を手にいれなければならない。
二度目の人生で私を殺した男。
この国の英雄と言われる男。
カラント・フェイスフル。
二度目の人生で最後に見たカラントの格好を思い出す。
あの服装はあの女がカラントの為に作った騎士団のものだった。
つまり、カラントはいずれアネモネの元にいく。
騎士団が設立されたのはマーガレットが死ぬ約一年半前。
二十歳のとき。
カラントは団長と呼ばれていたので設立されたときからいたのであろう。
いつからカラントがアネモネに目をつけていたかは知らないが、前回より一年前に回帰したのでタイムリミットは一年あるはずだ。
その一年でアネモネより早く手元におかないといけない。
但しこれはアネモネが今回は一緒に回帰してないことを前提にしている作戦。
マーガレットが復讐を果たすにはどれだけアネモネから人を奪えるかで決まる。
そのためにも絶対にカラントを手に入れないといけない。
「カラント、貴方には今回の人生では私の犬となってもらうわよ」
朝食を終え部屋に戻ろうとしていたところをカトレアから声をかけられた。
「はい。大丈夫です」
きっといきなりパーティーに行くと言ったからから心配してるのだと思い大丈夫だと返事する。
「庭で少し話さない?」
「はい」
カトレアは使用人に庭までお茶を持ってくるよう指示する。
「マーガレット。どうして、いきなりパーティーに行こうと思ったのか聞いてもいいかしら」
お茶を一口飲んで一息ついてからマーガレットに尋ねる。
さて、どうしたものかとマーガレットは困った顔をする。
本当の事は言えないし、母親を心配させず納得させる理由が思いつかず黙り込んでしまう。
「……友達が欲しいと思ったのです。パーティーに行けばできるかもと、そう思ったのです」
少しもそんな事を思った事などないが、カトレアにこれ以上聞かれない様それらしい理由を言う。
「そう、そうなのね。なら、目一杯お洒落して行かないとね」
カトレアはマーガレットの言葉に一応は納得するも、本当は違う理由があるのではないかと疑ってしまう。
少し前まで友達が欲しいとは思ってないと言っていたから。
マーガレットは町の人達からは尊敬され好かれているが、友達と呼べるような関係の子はいなかった。
そもそもマーガレットはパーティーよりも町の人達と話す方が好きだとよく言っていたので貴族の人達と関わるのに興味がないと思っていた。
でも、もしかしてら本当はずっと友達が欲しかったのに寂しい思いをさせていたのか、と思うと申し訳なくなる。
嘘かもしれないが友達が欲しいというマーガレットの願いを叶える為にも全力でサポートすることを決意する。
「はい」
「ドレスはアイリスに頼むつもりよ。何か要望はあるかしら」
「恥ずかしいんですが、今どんなドレスが流行っているのかわからなくて、お任せしようかと思ってるんです」
嘘。
本当は何が流行っているのか知っている。
これから何が流行するかも知っている。
でも、それを自分のアイディアみたいに提案して作らせるのは違う。
それはアイリスが考えたもの。
寝る間も惜しんで苦労して作ったもの。
その評価をされるのはアイリスであって私ではない。
それに、アイリスが作るドレスは間違いないので任せても問題ない。
「マーガレットなら何着ても美しいから大丈夫よ。でも、そうね。私も最近はどんなドレスが流行っているのかよく知らないわ。まぁ、でも彼女に頼めば確実だから問題ないわね」
「はい。私もそう思います」
それから二人はたわいもない話をして暫くしてから家の中に入る。
「さてと、状況を整理しよう」
紙とペンを用意する。
今マーガレットがいるのは前回より一年前の十八歳のとき。
さっき六月十七日にパーティーがあった年を思い出した。
何故前回の回帰より一年前に今回はきたのかわからないが、きっと理由があるはずだ。
今はわからなくてもいつか時がくればわかるだろう、と思い理由を考えるのは後回しにする。
「十八歳のときって何があったかしら」
前回の人生は十九歳からだったので最初の人生の頃の記憶を必死で思い出す。
「あっ!ランドゥーニ国との関係が悪化した年だわ!」
ランドゥーニ国。
その国はこの国の隣にある国。
別名、竜(ドラゴン)の国と呼ばれている。
ランドゥーニ国は大昔から竜を神として崇めている。
国に危険が及ぶと竜が現れ災いから守ってくれる、という言い伝えがある。
そのため、数年前まではどの国よりも力があると恐れられていて誰も手を出すことができなかった。
だが、ここ数年でその考えが変わってきた。
ーー竜を見たものは誰もいない。攻められないための嘘ではないか。本当は竜の加護などないのではないか。
この国をはじめ多くの国がそう思いはじめている。
これまで我々を騙していた罪を償わせるべきだと言って、八月にランドゥーニ国を招いた王宮パーティーで王妃をはじめ一部の貴族がランドゥーニ国の王、シオンを侮辱したのだ。
国王がいればそんな愚かな行為を許したりはしなかったが、そのとき国王は体調を崩してパーティーに参加することができなかった。
そのせいで、ランドゥーニ国との関係は修復不可能なところまで落ちてしまい、三年もの間ずっと戦争が続いてしまった。
マーガレットは二十二歳で殺された。
戦争はマーガレットが殺される時にはまだ終わっていなかったので、どちらが勝利したのかは知らない。
一回目も二回目も同じくらいに殺された。
そして、殺された理由にランドゥーニ国が深く関係していた。
両親はランドゥー日国が食料危機に陥ったとき真っ先に手を差し伸べ食料を届けた。
マーガレットは最初の人生で出会ったランドゥーニ国の老婆と仲良くなり言語と踊りを教えてもらった。
ランドゥーニ国との交流はそれだけだったが、それを理由にあることないことをでっち上げられ、マーガレット達は死ぬことになった。
「関わらないようにするべきだよね……」
そう頭ではわかっているのに、助けたいと思っている自分がいる。
関わればまた言いがかりをつけられ、殺される理由を与えてしまう。
それでも、あの時初めて友達と呼べる存在ができた。
彼女と彼女の国の人達は何も悪くないのに……
「戦争は国外ではなく国内でするのよ」
馬鹿な王妃達のせいで戦争なんて起こさせない。
沢山の人が死ぬところをもう見たくはない。
三度目の人生では国同士の戦争をおこさせない。
どんな手を使っても阻止してみせる。
そのためには、第一条件としてあの男を手にいれなければならない。
二度目の人生で私を殺した男。
この国の英雄と言われる男。
カラント・フェイスフル。
二度目の人生で最後に見たカラントの格好を思い出す。
あの服装はあの女がカラントの為に作った騎士団のものだった。
つまり、カラントはいずれアネモネの元にいく。
騎士団が設立されたのはマーガレットが死ぬ約一年半前。
二十歳のとき。
カラントは団長と呼ばれていたので設立されたときからいたのであろう。
いつからカラントがアネモネに目をつけていたかは知らないが、前回より一年前に回帰したのでタイムリミットは一年あるはずだ。
その一年でアネモネより早く手元におかないといけない。
但しこれはアネモネが今回は一緒に回帰してないことを前提にしている作戦。
マーガレットが復讐を果たすにはどれだけアネモネから人を奪えるかで決まる。
そのためにも絶対にカラントを手に入れないといけない。
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