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代行者 獅子座
しおりを挟む「あの狸いつか必ずこの手で殺してやる」
そう言ってドカッとソファに座り込むレオン。
「ウェル」
レオンがだるそうに呼ぶと「お呼びでしょうか、レオン様」と言って下級神ウェルが姿を現す。
「今すぐ人類の中から俺に似た人間を見つけてこい」
「レオン様に似た人間をですか」
そんな人間絶対いないと心の中でつっこむウェル。相変わらず無茶な命令に泣きそうになる。
「ああ、そうだ。なるべく早く見つけろ」
そう言うと話すことは何もないと横になる。
「あの、レオン様」
「なんだ」
目を閉じて鬱陶しそうに返事をするレオン。
「こちらはどうされますか」
そう言って八本の赤い薔薇を見せる。
「はぁ。今日もか」
だるそうに起き上がり、よこせと命じる。
「では、私はこれで失礼します」
赤い薔薇をレオンに渡し部屋から出て行くウェル。
ウェルが出て行った後レオンは赤い薔薇に神力を注ぐ。そうすると、花びらが散り跡形もなく消え去ると八神の女神達が現れた。
赤い薔薇を女神達がウェルに託すのはレオンへの誘いの証。レオンがそれを受け入れるならその薔薇に神力を注ぎ女神達を自分の所へと呼ぶ。
「レオン様」
女神達がレオンに抱きつく。
十九日後。
「レオン様、お待たせしました」
美しい顔立ちのウェルだがレオンの無茶苦茶な命令のせいで今は大分やつれた顔をしている。
「何がだ」
自分がウェルに命じたことをすっかり忘れてそう言うレオン。
「似た人間を数名見つけてまいりました」
いつものことなので特に気にせず報告する。
ウェルのその言葉でようやく何のことか思い出した。早く見せろとレオンが手で合図をするが、これまで黙っていた女神達が「レオン様」と甘えるように抱きついてくる。
内心鬱陶しいと思っているが、今は相手をするのも面倒くさいのでされるがままの状態でウェルの話しを聞く。
そんなレオンの態度が気に入らなかった一神の女神が「レオン様」と言ってキスをしようとすると「どけ」と言って振り払う。
「貴様らいつまでここにいるつもりだ。用は済んだはすだ。さっさと消えろ」
数分前まで幸せだった女神達はレオンの冷たい態度に泣きながら部屋を出て行く。
「続けろ」
ウェルは途中で止まった報告を再開する。少しでもレオンに似ていると思った人間を一人ずつ報告していく。
「…以上です」
「もういいぞ」
レオンからそう言われようやく終わったと安心するウェル。自分の部屋に戻って少し休もうと考える。
「さて、誰にするか」
ウェルが選んだ人間達の顔を並べて誰を自分の代行者にするか少し考える。
「こいつにするか」
一人の男の顔をみてそう言う。
代行者を誰にするか決めたのでさっさと人間界に降りようとしたら、トントンと扉を叩く音が聞こえた。
「レオン様。いらっしゃいますか」
声からして女だとわかる。
「誰だ」
レオンの部屋に直接通ることができるのはそれなりの相手。ウェルが何の報告もしないとなるとウェルに謁見を求める必要のない高貴な女神。
そんな女神がレオンのところに来た理由など一つしかない。
さっきまで人間界に降り立とうとしていたが予定を変更することにした。
神力を使って扉を開けるとフードを深く被りマントで体全体を隠した格好で女神が入ってくる。
「アーリーです」
フードをぬぎ顔をレオンに見せる。
アーリーの顔は女神の中でも上位にはいる美しい顔立ちだった。
「何のようだ」
レオンがそう尋ねると「お願いがあってまいりました」と言うアーリー。
「俺に何をしてほしい」
アーリーの望みが何かわかった上です知らないフリをするレオン。
「一晩私をあなたの女にして下さい」
「ほう。一晩か。それは大きくでたな。貴様一人で俺を満足させられると」
妖しく微笑むレオン。
「はい。後悔はさせません」
マントを脱ぎ捨てレオンに跨るアーリー。
マントの下は今天界で最も神を喜ばせる下着として人気のものをつけていた。
見た目と違って大胆なのだなと感心するレオン。今までの女神達とは少し違うためアーリーに興味が湧く。
人間のところに行くのはこの女神を抱いた後でいいだろうと自分の欲を優先させる。
「レオン様」
その声で目を覚ますレオン。隣で寝ているアーリーが目でもう一回と訴えてくるがそれを無視して風呂場へと向かう。
後ろから「レオン様」とアーリーが呼ぶも聞こえないふりを決め込む。
この後、人間界に降りないといけないので少ししたら上がるかと考えお湯に浸かる。
いつもより早く上がって降りる準備をしようとするとアーリーが「レオン様」と言って抱きついてくる。
「(まだいたのか)」
心の中で失敗したなと思うレオン。
レオンは天界で三名景の一人として有名だが、その中で最も女神を駄目にする神として有名。
[三名景とは天界の中で最も女遊びが酷い神である三神を指す言葉]
抱きつくアーリーを邪魔だなと思うレオン。
「レオン様。また来てもいいですか」
レオンに愛されていると勘違いしたアーリーはそう尋ねる。
はぁー、と深いため息をついた後「いつまでここにいるつもりだ。早く消えろ」とアーリーの問いには答えず冷たく言い放つ。
「レオン様。私は…」
アーリーが話している途中にも関わらず指を鳴らして適当な場所にとばす。
「はぁー。朝から最悪な気分だ」
パチン。指を鳴らして代行者の前に降りるレオン。
「きぁーーーー」
裸のまま外にとばされ手で体を隠すアーリー。昨日着ていた下着とマントは傍にある。
近くに数神がいて裸を見られる。高貴な女神が裸を見られるのは神の名を剥奪されるのと同じ意味をもつ。
アーリーはまさにその状態。この出来事は一瞬で天界に知れ渡るだろう。
「絶対許さない。この私をこんな目に合わすなんて」
レオンに復讐を誓うアーリー。
マントを掴み体に巻いて急いで自分の屋敷へと戻る。
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