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エピソード4 失われた装飾品と歴史の謎
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荒野の神殿の壁画には、儀式に必要な触媒が描かれていた。それは、金色の糸で編まれた、中央に大きな青宝石が嵌め込まれた腕輪だった。
「…その腕輪さえあれば、もしかしたら封印を強化できるかもしれない」
シアンは、壁画の腕輪を指しながら言った。だが、問題はそんなものがどこにあるのかだ。おそらく、この神殿のどこかに隠されているのだろうが、荒廃した様子を見る限り、簡単に見つかるような気はしなかった。
数時間かけて、神殿内をくまなく探索してみた。崩落した天井や剥落した壁画を避けながら、埃まみれた部屋や朽ち果てた家具を調べたが、腕輪は見つからない。
日が傾き始めた頃、諦めかけかけた時だった。白い猫が、神殿の一番奥まった部屋の壁の前で、しきりに鳴いていた。シアンがその壁を叩くと、鈍い音がした。どうやら、壁の中に何かが隠されているらしい。
シアンは魔法を使って壁を崩すと、その中から小さな隠し扉が現れた。扉を開けると、中は狭い通路になっていた。懐中電灯の明かりを頼りに通路を進んでいくと、やがて行き止まりになった。
行き止まりには、石でできた台座が置かれており、その上に古びた箱が載っていた。箱には鍵がかかっており、開けることができない。
絶望しかけたその時、白い猫が箱の横にある窪みにすり寄った。その窪みには、何かの彫像が嵌め込まれるようになっていた。猫が鳴きながら、自分の前足を窪みに押し当てた。
その瞬間、箱の鍵が光を放ち、ゆっくりと開いた。中を開けると、そこには金糸で編まれた、見慣れた腕輪が収められていた。
「…本当にあったのか…」
シアンは、驚きと安堵の入り混じった表情で呟いた。腕輪を取り出すと、壁画に描かれたように、私は腕輪を左腕に装着した。
腕輪には、かすかな暖かみが感じられた。そして、壁画と同じ儀式を行うべく、シアンの指示に従って、魔法陣の中心に立ち、壁画に記された呪文を唱え始めた。
最初は、何も起こらなかった。しかし、呪文を唱え続けるうちに、腕輪が激しく光り出し、魔法陣にも青い光が灯った。そして、部屋全体が揺れ始め、天井から埃が大量に降ってきた。
パニックになりそうになった時、シアンが「このまま続けるしかない!」と叫んだ。必死になって呪文を唱え続けると、やがて揺れが収まり、光も消えた。
腕輪の光も弱まり、静寂が訪れた。果たして、封印は強化されたのだろうか? 不安な気持ちで部屋を見回すと、中央にあった黒いオーブが、以前よりも少し明るく輝いているように見えた。
「…成功したかもしれない!」
シアンは、安堵の表情を浮かべた。ひとまず、封印の弱まりを食い止めることはできたようだ。だが、根本的な解決にはなっていない。
壁画には、この儀式を行うだけでなく、さらなる儀式で闇の魔法を完全に消滅させる方法が描かれていた。しかし、その儀式には、複数の上級魔法使いが必要とされており、今の学院では実行できない。
「…このままでは、いつか封印が解けてしまうかもしれない」
シアンは、深刻な表情で呟いた。荒野の神殿を後にし、学院に戻る道中も、ずっと暗い表情をしていた。
学院に戻ると、シアンは早速、学院長に今回の冒険の報告をした。学院長は、無事に帰還できたことを喜びつつも、封印が弱まっていることを聞いて、深刻な表情を浮かべた。
そして、学院長は、あることを私に告げた。それは、かつて失われたとされていた、強力な魔法の使い手が、この世界にまだ存在しているかもしれないということだった。
その魔法使いは、伝説の存在であり、詳細は不明だったが、闇の魔法を完全に消滅させるほどの力を持っていると考えられているという。
「…その魔法使いを探し出すことが、唯一の解決策かもしれません」
学院長の言葉に、私は使命感のようなものを感じた。歴史オタクの私が、まさかこんな重大な役割を担うことになるなんて、かつては想像もしていなかった。
私は、シアンと共に、伝説の魔法使いを探す旅に出ることを決意した。その旅は、きっと危険に満ちているだろう。しかし、異世界に迷い込んだこの出来事が、運命の
「…その腕輪さえあれば、もしかしたら封印を強化できるかもしれない」
シアンは、壁画の腕輪を指しながら言った。だが、問題はそんなものがどこにあるのかだ。おそらく、この神殿のどこかに隠されているのだろうが、荒廃した様子を見る限り、簡単に見つかるような気はしなかった。
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日が傾き始めた頃、諦めかけかけた時だった。白い猫が、神殿の一番奥まった部屋の壁の前で、しきりに鳴いていた。シアンがその壁を叩くと、鈍い音がした。どうやら、壁の中に何かが隠されているらしい。
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その瞬間、箱の鍵が光を放ち、ゆっくりと開いた。中を開けると、そこには金糸で編まれた、見慣れた腕輪が収められていた。
「…本当にあったのか…」
シアンは、驚きと安堵の入り混じった表情で呟いた。腕輪を取り出すと、壁画に描かれたように、私は腕輪を左腕に装着した。
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最初は、何も起こらなかった。しかし、呪文を唱え続けるうちに、腕輪が激しく光り出し、魔法陣にも青い光が灯った。そして、部屋全体が揺れ始め、天井から埃が大量に降ってきた。
パニックになりそうになった時、シアンが「このまま続けるしかない!」と叫んだ。必死になって呪文を唱え続けると、やがて揺れが収まり、光も消えた。
腕輪の光も弱まり、静寂が訪れた。果たして、封印は強化されたのだろうか? 不安な気持ちで部屋を見回すと、中央にあった黒いオーブが、以前よりも少し明るく輝いているように見えた。
「…成功したかもしれない!」
シアンは、安堵の表情を浮かべた。ひとまず、封印の弱まりを食い止めることはできたようだ。だが、根本的な解決にはなっていない。
壁画には、この儀式を行うだけでなく、さらなる儀式で闇の魔法を完全に消滅させる方法が描かれていた。しかし、その儀式には、複数の上級魔法使いが必要とされており、今の学院では実行できない。
「…このままでは、いつか封印が解けてしまうかもしれない」
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