10 / 13
仲直り後は超素直
しおりを挟む
「けーたー」
「…………」
「……なあって」
今回はちょっと長引いた。まともに口をきいたのも確か十日ぶりくらい。だからこれは、喧嘩の後にしばしば起こる反動的現象。
さっきから恵太が俺の腰に抱きついたまま離れない。
「そろそろ離さねえ?」
「……離さねえ」
おーおーおー。お兄さんよお。
「……熱烈な告白してくれやがったところに悪いんだけどさ。俺が重い」
ソファーに座っている俺。すぐ傍で床に腰を下ろしている恵太。
一段低い位置から腰に腕を巻きつけられて、バキボキと骨が鳴りそうな勢いできつく抱きしめられているから身動きもロクにとれない。
やれやれと、宥めるように恵太の頭を撫でつけた。こうなってしまったらあと小一時間はこのままだろう。経験上の予測もついている。
「恵太」
「……おう」
「泣いとく?」
「……泣かねえよアホが」
めんどくせえな。どこの困ったちゃんだこいつは。
ぽんぽんぽんぽんと肩やら頭やらを適当に撫でて落ち着かせる。これは母親が子供を寝かしつけるときの動作に近いものがあると、途中で思ってしまったせいで微妙な気分に陥った。
外はいい感じに日も傾きかけている。普段は見る事のできない恵太のつむじを上から見下ろしながら、一度ゆっくり瞬きをした後にいつもの調子で問いかけた。
「夕飯何食いたい?」
「道哉」
「そういうのいらねえんだよ。どっか食い行く?」
「ここでお前を食う」
「…………」
素でこれを言えてしまう男は凄いよ。迷惑な意味で最強だろうよ。
更に強い力でぎゅーっと抱きついてくる。さっきからもう何度目かも分からないような溜め息が出てきた。加減しろよ。痛ぇから。
「道哉……」
「んー」
「…………」
なんも用はないんかいっ。
ただ呼んだだけな恵太の髪をサラサラと梳き、意外と柔らかなそれの感触を指先に馴染ませていく。
俺の腹に顔を埋めているこいつが、いっそこのまま窒息死でもしてくれたら楽しいのに。そんな事になったら指さして笑ってやる。
なんて思っていたら、恵太の手が俺の手をやんわりと取った。甘えるみたいに、ぎゅっと握りしめてくる。
「…………」
可愛いとか。
まったく思ってませんけど。
「……バカ恵太」
「うっせ、アホ道哉」
俺らのレベルは小学生。
ちょっと和んだなんて、絶対に言わない。
「…………」
「……なあって」
今回はちょっと長引いた。まともに口をきいたのも確か十日ぶりくらい。だからこれは、喧嘩の後にしばしば起こる反動的現象。
さっきから恵太が俺の腰に抱きついたまま離れない。
「そろそろ離さねえ?」
「……離さねえ」
おーおーおー。お兄さんよお。
「……熱烈な告白してくれやがったところに悪いんだけどさ。俺が重い」
ソファーに座っている俺。すぐ傍で床に腰を下ろしている恵太。
一段低い位置から腰に腕を巻きつけられて、バキボキと骨が鳴りそうな勢いできつく抱きしめられているから身動きもロクにとれない。
やれやれと、宥めるように恵太の頭を撫でつけた。こうなってしまったらあと小一時間はこのままだろう。経験上の予測もついている。
「恵太」
「……おう」
「泣いとく?」
「……泣かねえよアホが」
めんどくせえな。どこの困ったちゃんだこいつは。
ぽんぽんぽんぽんと肩やら頭やらを適当に撫でて落ち着かせる。これは母親が子供を寝かしつけるときの動作に近いものがあると、途中で思ってしまったせいで微妙な気分に陥った。
外はいい感じに日も傾きかけている。普段は見る事のできない恵太のつむじを上から見下ろしながら、一度ゆっくり瞬きをした後にいつもの調子で問いかけた。
「夕飯何食いたい?」
「道哉」
「そういうのいらねえんだよ。どっか食い行く?」
「ここでお前を食う」
「…………」
素でこれを言えてしまう男は凄いよ。迷惑な意味で最強だろうよ。
更に強い力でぎゅーっと抱きついてくる。さっきからもう何度目かも分からないような溜め息が出てきた。加減しろよ。痛ぇから。
「道哉……」
「んー」
「…………」
なんも用はないんかいっ。
ただ呼んだだけな恵太の髪をサラサラと梳き、意外と柔らかなそれの感触を指先に馴染ませていく。
俺の腹に顔を埋めているこいつが、いっそこのまま窒息死でもしてくれたら楽しいのに。そんな事になったら指さして笑ってやる。
なんて思っていたら、恵太の手が俺の手をやんわりと取った。甘えるみたいに、ぎゅっと握りしめてくる。
「…………」
可愛いとか。
まったく思ってませんけど。
「……バカ恵太」
「うっせ、アホ道哉」
俺らのレベルは小学生。
ちょっと和んだなんて、絶対に言わない。
41
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる