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同級生
リョウの場合
しおりを挟む知らねえんだろうな。お前はきっと。
物忘れ?
スマホ依存症?
どれもハズレ。本当は全部お前といるための口実。
「マジで割り勘かよ」
不満を垂れるアキの隣。ラーメン屋を出てチャリを押しながら、だいぶ暗くなった道を二人で歩く。
「次にバイト代入ったら好きなもん食わせてやるって」
「寿司。回らないやつ」
「ムリ」
「使えねえ」
こうして一緒にいられる時間を増やせたのは、俺の努力が報われた結果だ。
アキのチャリで一緒に帰りたいから、朝は必ず歩いて登校している。放課後は何かしら机の中に置き忘れ、帰路を半分以上過ぎた頃になってから「しまった」と。どこ吹く風で呟いて。
そんなことばっかりしている俺。
そんなことばっかりしている俺に、なんだかんだ言いながらも、アキが付き合ってくれなかったことはない。
「スマホは? 今度は持ったか?」
アホな作戦でどんなに時間を引き延ばしても、最後にやってくるのは分かれ道だ。
アキにチャリを返すと確認されて、大丈夫だと俺は笑った。
「へーき、へーき。ちゃんと持ってる」
「帰ってからラーメン屋に財布忘れたとか言っても知らねえぞ」
突き放す様に言って、ほんの少しだけ笑うアキ。実はその手も試行済みだ。
帰り際に盗られて困るものだけ抜いて。お互い家に着いた頃、スマホ越しに財布忘れたと泣きついた。それはもう、いけしゃあしゃあと。
自分一人で取りに行けと文句をつけるアキだったけど。あの時も結局は一緒に来てくれた。
初めて会った頃からずっとそうだ。アキはいつだって、俺に優しい。
「じゃあな。なんかあっても呼び出すなよ」
「んー……。頑張る」
「アテになんねえな」
今度こそ。チャリに乗ったアキを俺は見送った。
また明日会える。
そう思って耐えるこの瞬間が一番ツライ。今すぐ駆け寄って引き止めたい。
知らねえだろ。俺がどう思ってるかなんて。
気づかせてなんかやらねえよ。
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