掌編・短編集

4．ヒヨコとハト

ひよ子は可愛い。
鳩はアホっぽい所が好きだ。
　

幼馴染から真剣にそんな告白を受けた場合、ここは真剣に答えるべきか、はたまた笑って返してやるべきか。
　
正直なところ、全力で聞き流したい。


「なあ聞いてる?」


空気の読めない相手を前にしてシカト行為は何よりも無力だった。この内容でなぜ真剣になれるのかは不明だが、詰め寄られて俺は頷く。

　
「ひよ子と鳩が好きなんだろ」
「そ。で、どっち飼えばいいかと思って」
「……飼うの?」

　
ひよ子か、鳩を。

　
「…………寝ぼけてる?」
「超起きてる」

　
いや、寝ている。この男は普段から頭が起きていない。どちらの鳥も飼えないことはないのだろうけど、ペットとして最初の選択肢にその二種類を持ってくる人間は稀だ。

　
「動物飼いたいんだったら犬とかは?　鳥にこだわるなら文鳥とか色々いるだろ。ひよ子も鳩もそんなにいないよね、ペットショップに。俺、見たことないよ」


ひよ子は養鶏場に行って譲り受ける。鳩は庭で捕まえる。
　
この幼馴染が考えそうな、突飛な発想と言えばこんなものか。次に切り返される言葉を頭の中で想像していたが、返ってきたのは思いのほか寂しそうな反応だった。


「ひよ子か鳩じゃなきゃ意味がない……」


そんなしょぼくれた声を出されても。

対処に困る落ち込みように、どうしたものかと考える。しかしこの幼馴染は真面目な顔でさらに続けた。


「饅頭とサブレだし」
「…………ん?」
「あー、そっか。両方飼って夢のコラボってのもアリだな」


ナシだろう。


「うん、よし。決めた。ヒヨ子は養鶏場行って貰ってきて、鳩は庭で捕まえて……。ひよ子っていつまでひよ子?　ニワトリに育ったら銘菓コラボ終わっちゃうよ」
「…………」


幸か不幸か幼馴染。この変人の考えを理解できてしまう自分が嫌だ。

かくして新たに追加された幼馴染の悩みに、俺は最後まで付き合わされた。