異世界に転生したら?(改)

まさ

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第2章、破滅に向かう世界。

第13話、英雄の帰還。

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マサムネが居なくなって五日目の朝。


ウエストレイドを守る最後の砦になっている10㎞にも及ぶ防壁、予備兵として町に残っていた500名が加わり、今残る最大戦力の1700名が各々の武器を持ち、そしてモンスターが来るであろう荒野に視線を向けていた。


「野郎共!恐らく今日が最後の戦いになるだろう!」

ギルドマスターの激が飛ぶ。


「だが我等は負けるつもりは無い!何故ならば!昨日も言った通り、ここに居る者達はウエストレイドを守る最強の戦士達!それに立ち向かう勇気は伝説の勇者にも劣ってはいない!」


次第にその場の熱が上がっていくかの様に全員の闘志が漲っていく。



「絶対に諦めるな!目の前で仲間が倒れても足を止めるな!我等には、これまで倒れていった仲間達の思いが!そして魂が我等に力を与えてくれている!だからこそ足を止めるわけにはいかない!」


これから始まる戦いは圧倒的な数の違いがある戦いになる、恐らく多くの命が消える事になるだろう………恐れもあるだろう、それでも自分達が住む町、そして守りたい人が居る。

自分達が負ければ、その全てが無くなってしまう、その事実が恐れる心を奥深くに押し留めていく。



「我等は絶対に勝つ!例えこの腕が無くなっても今度は足で踏み潰し!足が無くなったら口で噛み千切り!最後の最後まで戦い続ける!モンスターどもは、この壁から1歩も通すな!勝つのは我等だ!!」



「「「「オオー!!!」」」」



戦いに挑む男達の声が辺りに響き渡っていた。




そして1時間後、防壁から見つめる男達の目にモンスターの軍勢が現れる。


後が見えない程の密度で近付いてくる。


「ゴクッ」


誰かが思わず喉をならす。



『ゴアアア!』

『グゲゲゲゲ!』

『ゴハハハハ!』


異形の者達の声が徐々に大きくなる。



壁を背に迎え撃つ1500名の戦士達。
200名は壁の上に残り、弓と魔法で攻撃をする。

そして今まさに襲い掛かろうとするモンスターの軍勢、約8000、その中には巨体を持つモンスターの姿も300体ほど見える。

巨大なモンスターに対抗できる者は冒険者や守備隊には数える程の人数しか居ない。

その中でもコウ達は最大戦力になる。



だからこそコウ達は自分達が何をするべきかを考え、自分達が思うよりも重圧が精神を圧迫していた。

その重圧は身体の動きにも影響を及ぼす。

連日の疲労も重なって身体をいつもの何倍にも重く感じさせている。


そんなプレッシャーを感じつつも、自分達が何とかしないと。と言う気持ちが普段よりも重く感じる身体を動かす。



「リリム殿、ハクヨウ殿、レツガ殿、この戦いは相当厳しいモノになるでゴザろう……なれども、誰一人欠ける事無く勝ってまた皆と祝勝会を上げるでゴザルよ!」

「ハイ!」

『うん!美味しいモノを沢山食べる!』

『グルアアア!!』(負けない!!)



マサムネの事を口にする事は無かったが、皆考えている事は同じだった。


『マサムネともう一度逢いたい』


その想いを力に変えて無理矢理、身体を動かし進んでいく。




そして開戦の時が来る。

大きい魔力を持つ存在、上位の魔族が指揮をとっている様だ。

それだけ本気で攻めてきているんだろう。


『ククククク……脆弱な人間風情が、我等、魔王軍に抵抗するなど、身の程を知るが良い!』


右手を上に上げ、モンスターへ突撃の合図を出そうと構える。

その手が前に振られる時、最後になるだろう戦闘が始まる。





だが、その魔族の手が振られる事は無かった。


何故なら、その振る為の腕が既に無かったからだ。


『ギャアァァ!!腕が~!!この私の腕が~!!』


残った左手で傷口を押さえながら激痛に声を上げる魔族。

それを見てモンスター達も何が起きたのか分からずに慌てふためいている。


「こ、コウさん、何が有ったのでしょうか?」

「分からぬでゴザル、あの魔族の悲鳴を聞いたと思ったら、魔族の腕が無かったでゴザル」


今まさに始まろうとしていた戦い。


突然の出来事にその場に居た誰もが、呆気に取られ、ただ魔族の叫び声だけが響いていた。



『あれ?』

「どうしたの?ハクヨウちゃん?」


リリムが、ハクヨウの反応を見て、ハクヨウに話しかける。


『ん~~?何だろ?ちょっと懐かしい気配がする?』

「懐かしい?どう言うこと?」

『ん~とね~確かこの気配は……………あ!!』

「ハクヨウちゃん!?」


突然ハクヨウは何かを思い出したのか、急にモンスターの軍勢の方に向かって飛び立つ。

「コウさん!レツガちゃん!」

「オウ!」

『グア!』(了解!)


その後を追うために、コウは走り出し、リリムはレツガの背に乗るとレツガが走り出す。



『ワーイ♪マスタ~だぁ♪』


「「え?!」」


『グア!?』(この臭いは!?)




「ギャーギャーウルセーよ!コイツらモンスター達の頭なんだろ?情けねぇな」


その声の後に魔族の体は二つに切り裂かれ。

その後、消滅した。


そして消えた後に人影が浮かぶ。


「お?皆、元気そうだな?久しぶり~」


「「マサムネ殿!?(さん!?)」」

『マスター!!』

『グルアアア!!』(マスター!!)


そこに居たのは、五日前に姿を消したマサムネだった。


*ここからマサムネ視点に戻ります。



「おう!俺だ!忘れちゃった?ハハハ……グェ!?」

俺の鳩尾にハクヨウがタックルをかまして来たから、俺は思わずガマガエルの様な声を上げてしまった。


「マサムネ殿…「マサムネさん!!」」

「リリム?グボラ!?」

更にリリムがタックルをして、俺はそのまま背中から地面へ倒れた。


「イテテテテ」


倒れた時に頭を打ち、必死に頭を擦る。

だがリリムとハクヨウはマサムネに抱きついたまま離れる様子はない。


「あの……ハクヨウ?それとリリムさん?」


マサムネは、恐る恐るリリムに声を掛ける。


「………何ですか?」


マサムネの胸に顔を埋めながら返事をするリリム。

ハクヨウは何故かマサムネの服の中に入り込んで匂いを嗅いでいる。


「とりあえず、場所が場所だから、こう言うのは後にしない?それとハクヨウは出てこい!」


ムンズとハクヨウを掴み、そのまま放り出す。

そして俺に言われ、今の状況を思い出し、慌てて離れるリリム。


「ふぇええ?!あ、あのえっと!?ハニャア~」


シューと音が聞こえそうな位に真っ赤になるリリム、それを見ていたコウとレツガは、いつも通りの光景に思わず笑みが零れていた。



モンスター達も、それを呆然と見ていたのは仕方ないだろう。


間違いなく、鈍感な主人公マサムネよりは空気が読めたのだ。



こうして再び揃った『森林の伊吹』、大群のモンスターの前に対峙する。



そしてきちんと空気を読んだモンスター達も再び、戦意を上げていく。




今まさに『ウエストレイド』を巡る最後の戦いが始まろうとしていた。
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