異世界に転生したら?(改)

まさ

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第2章、破滅に向かう世界。

第9話、残されし者達の戦い。

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拙者が着いた時にはハクヨウ殿とレツガ殿は既に合流しており亜空間にあった予備の熊車を用意して拙者とリリム殿が来るのを待っていたでゴザル。


前回の戦いで、拙者達が作った防壁に冒険者が200名程が防衛しをしていたと聞いたでゴザル。

そんな中、防衛にあたっていた冒険者から連絡が入り、防壁に向って数千のモンスターが再び攻めて来た様でゴザル。


マサムネ殿がいない熊車の中では、お喋り好きなハクヨウ殿すら話すこと無く重苦しい雰囲気に包まれていたでゴザル。

正直な話し、マサムネ殿がいない現状に拙者だけではなく、リリム殿、ハクヨウ殿、レツガ殿も何をすればいいのか。

何を目標とすれば良いのか。

自分で考える事が出来なかったのでゴザル。

うむ。考える事と言うより、マサムネ殿がいない現実を考えない様にしていた。のが正解だと思うでゴザル。


………さすがにゴザルが多いので、ここはゴザルをハショるでゴザル。

そろそろ読者殿達に飽きられそうでゴザルし。






拙者達は無言のままレツガ殿の熊車で移動していく。

その際に拙者達より早く出発していた冒険者や守備隊を追い抜きつつ防壁へと到着した。


既に戦闘は始まっていて防壁を守備していた冒険者達が必死に防衛していた。

数が違うものの防衛を活かしながら何とか凌いでいたが、数の違いが大きすぎて限界に近かったが拙者達は熊車から飛び出て防壁を駆け上がる。



「待たせたでゴザル!後は拙者達が引き受けた!」


すぐさま防壁を乗り越え、拙者とレツガ殿で防壁に近付くモンスターを次々に倒していき、リリム殿とハクヨウ殿は防壁の上から魔法を放って広範囲にわたり攻撃をする。

いつものやり方で戦闘を開始した。


どうやら今回は魔族は居ない様で、それほど強い魔力は感じられず恐らく中級クラスの悪魔が数体いるのでは無いかと思う。



リリム殿とハクヨウ殿で左右の敵を減らしていき拙者とレツガ殿で中央を蹴散らしていく。

そして拙者達に追い付いてきた冒険者や守備隊も戦闘に加わり戦況は確実に拙者達に傾いてきていた。


そんな中、モンスターを率いる者達が現れる。

『ギャギャギャ!雑魚どもがこざかしい!俺様が殺してくれる!』


中級クラスの悪魔が拙者の前へと姿を現す。

石の身体を持ち背中に羽を持つ『ガーゴイル』に似ているが、さすが悪魔のリーダー的な存在、魔力は高い。

さしずめ『ガーゴイルリーダー』とでも呼ぶとするか。

まぁ、覚える必要も無いが。


拙者は即座に『居合の型』をとり、力を貯めていく。

そして目の前の悪魔に向い『参の刃』を発動させ一瞬のウチに一刀両断する。


『カペ?』とおかしな声を上げた後に真っ二つになり消滅する悪魔。

やはり覚える必要は無かった。


そのままの勢いで拙者は2体目、そして3体目と中級悪魔を斬り伏せていく、後ろを見ると司令塔を無くしたモンスターは、もはや脅威とは成らず冒険者達と守備隊でも十分に対応出来ていた。



それを見て、拙者達は合流しモンスターが密集している場所を重点的に殲滅させていく。



モンスターの数も半数以下になり終わりが見え始めた。


突然、新たな気配が近付いてくる。


『グルアァァァア!』


耳を塞がないと鼓膜が破れそうな程の咆哮が空を支配する様に響き渡る。


その声の主が拙者達の前に降りてくる。

30メートルはあるだろう巨体、その全身が黒く鈍い輝きを放つ鱗で被われ、目は紫に輝き拙者達を睨み付けてくる。

口からは簡単に岩をも砕きそうな長い牙を除かせていて、長い尾は防壁も一撃で粉砕出来そうな程に風を巻き起こしながら振られている。


それは正にドラゴンだった。


しかも、古より勇者や英雄達と数々の激戦を繰り広げてきたと言われている伝説の邪悪なる竜。


『エンシェント・ブラックドラゴン』


拙者は鑑定を持っていないが、恐らくそうだろうと思える。

そして、その強さは聞き及んでいる。

『レア度SS』の強力な戦闘力を持っていて、ライオウ殿とも何度も戦ったと聞いた。

だが良く見ると、目の前のブラックドラゴンは、まだ若い個体にも見える。

ライオウ殿と同じ実力とは言い難い。


たぶんあのドラゴンだと『レア度S』クラスだと思う。

されどドラゴン、他のモンスターとは訳が違う。

拙者達でもギリギリの戦いになるだろう。



だけど拙者達は誰一人退く者はいない。

マサムネ殿が命を掛けて守った町、その仲間である拙者達が逃げる訳にはいかない。


今度は拙者達が命を掛けて守る番だ。


確かにドラゴンを前に恐怖を感じる。

だが、何より町を守れない事が、マサムネ殿が守った町が無くなる事が何よりも恐い。

拙者達はマサムネ殿は生きていると信じている。

帰ってくる場所を守る。

そう思わないと、マサムネ殿がいない現実に押し潰されそうになってしまう。

そして、誰よりもマサムネ殿に特別な想いを持つリリム殿は耐えれないと思う。

それ程にリリム殿は、ギリギリ正気を保つている様に見えるのだ。


ともかく、今は目の前の大きいトカゲを倒すのみ。

後の事は後で考えるとしよう。



皆を見ると、同じ気持ちの様だ。

3日間、宿屋に籠っていたメンバーとは思えない程の気迫と覚悟を感じる。



拙者は、ひとまず呼吸を整えると目の前のブラックドラゴンに向い刀を構える。



「皆……今はただ目の前のデカイトカゲを倒す事だけ考えよう、さっさと倒して、また宿屋に籠るとしよう……でゴザル」


皆も笑い出す。

良い感じに力も抜けたようだ。


「我等『森林の伊吹』。いざ推して参る!」



拙者達のマサムネ殿がいないままの戦い。

心に穴が空いた様な寂しい想いを胸に抱きながらも、城塞都市『ウエストレイド』を守る激闘が始まったのだ。





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