異世界に転生したら?(改)

まさ

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第2章、夢の冒険者になりました。

第9話、全力!

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体力と魔力も限界になりながらも、俺達はMPポーションを飲み続け時には壁を作り、時には落とし穴を作り、モンスターに出来るだけのイヤガラセをしながら後退していた。

ちなみにハクヨウの創った長い壁は、オークの猛攻で一点突破された為に魔法で倒しながら後退している。


「う~走る度に腹がチャプチャプする」


ハクヨウはポーションを飲み過ぎて、身体が重くなり飛べなって地面を転がって移動していた。


『ピピピー♪』(わーいらくちーん♪)


我が子が逞しく育ちました。(震え声)


「それにしても多勢に無勢、さすがに厳しいでゴザルな!」

「疲れた!お腹が苦しい!汗をかいたから風呂に入りたい!」

汗と泥で気持ち悪るい!

『ピッピー』(おなかすいたー)

………ハクヨウくん君、お腹がポーションで膨らんでるよ?まだ食欲があるの?

胃袋お化けがいました。


イヤガラセのお陰でモンスター達との距離も少し開き暫しの休憩を入れる。


マップを見て、簡単にモンスターの数を数えて見ると残りは500体ほど。

頑張った俺達!


それでも町まで既に5㎞の所まで押し込まれていた。

この辺まで来れば、見た事があるから町までの距離も大体わかる。


これ以上は町に近付けたくない。


「避難は、どれ位まで進んだかな?」


「どうでゴザルかな?正直、検討もつきませぬな」


「町を出て二日程。もう少し粘りたいな~」


「かなり厳しいでゴザルが、やるしか無いでゴザルな」


俺とコウは笑い合う。

余裕がある訳じゃないけど、こんな時に笑いが出るのは悪くない。

ほどよく緊張と身体の疲労が抜ける気がする。

うん、まだ動ける。



「そうだ。ハクヨウ!町に飛んで避難状況を見て来てくれ。俺達は、また後退しながら時間を稼ぎモンスターを抑える」


『ピピー?』(マスターだいじょーぶ?)


「あぁ、大丈夫だ。絶対にお前を一人にしないから、お前のマスターの俺を!そしてコウを信じろ!」


『ピピッ!』(わかった!)


ハクヨウは町に向かい飛び立つ。

いつの間にかお腹は元に戻っていた。


「さてと、んじゃ行きますか!」


「分かったでゴザル!」


罠や壁のお陰で分散し、小さな部隊で来たモンスターを各個撃破していく俺とコウ。

魔力(MP)は既に切れ剣術のみで攻撃していく。

ポーション飲む暇が無いし、何よりもう飲みたくないからだ。


しかし、粘ること30分くらい。

とうとう体力も限界に近い。


二人とも足が震え進みが止まる。


「やべぇなぁ!」


「そうでゴザルな!」


肩で息をしながらも、迫り来るオークやゴブリンを切り伏せる。


「グ!?」

遂にコウがオークの攻撃に捕まる!

オークの棍棒での攻撃を盾で防ぐも踏ん張りが効かず、コウは数メートル飛ばされた。


「コウ!」


俺は咄嗟にコウの前に立ち、追いかけて来たオークを切り倒す。

だがゴブリンが、オークの後ろから飛び込んできて俺の左腕をダガーで斬りつけた。


「グゥ!」

傷のせいで腕が上がらなくなる。


「マサムネ殿!!」


コウが、何とか立ち上がりそのゴブリンを斬る。

俺とコウは自分の後ろをカバーする様に背中合わせに立つ。


MPも既に空。

ポーションがあっても飲む暇も無い。

どんどん削られて行く俺達。

鎧はボロボロ。

至るところから出血。

既に立っているのがやっと…


それでも気迫だけは、まだある。


腕が足が動かないなら、目で殺す!


俺達の気迫に圧されたのか、モンスター達は俺達から距離をおいた。


また睨み合いか?それなら少し休めるな。

と、考えた瞬間。


森の奥から木を倒す音と地面が揺れる程の足音が響きわたる。

そして、見た事の無い程の巨体を持つオークが現れた。


『グオオォォオ!』


ソイツの声が俺達の身体を駆け抜ける。

身体が硬直したかの様に動かない。


ソイツは、身長は4メートルを超え。

見ている者が死ぬんじゃないかと思う程の鋭い眼光。


俺は残り少ないMPで鑑定をしてみる。




「鑑定」


オークキング変異体(レア度A♂5才)


HP20000

MP1000


【スキル】

・王の咆哮(相手をスタンさせる)

・剛力(力を5倍まで高める)

・金剛(守備力を5倍まで高める)

・激突(自分に触れるモノを破壊しながら突進し大ダメージを与える)

・王の器(下位のモンスターを使役出来る)


【オークキング】変異体レア度A

オークキングは通常レア度Bだが、変異体として成長した個体で通常のオークキングの倍ほどの戦闘力がある。





「変異体……ハハハ。笑うしかないな」


見なきゃ良かった。


「マサムネ殿、楽しそうでゴザルな」


「ちょっと強そうで、テンション上がってる」


「確かに鑑定が無くとも別格なのは分かるでゴザルな」


「でも、まあ……」

「それでも拙者は……」


「「負けない!」」


オークキングに向けて二本の剣が突き付けられた。



オークキングは目の前の2人が、ボロボロなのに目の奥から強い光を感じ苛立っていた。


何故この小さき者共は諦めない?


何故この小さき者共は我に屈しない?


何故この小さき者共は泣き叫ばない?


何故?何故?何故?


圧倒的な不利にも力強く真っ直ぐオークキングを見つめ返す二人に戸惑いと苛立ちにオークキングは、考えるのを止めた。

力でねじ伏せる事にしたのだ。

手に持つ巨大な斧、数百キロは有るであろう理不尽な程の鉄の塊。

かするだけで粉々になりそうな暴力。

その暴力の塊が今、二人に降り下ろされようとしていた。


……俺(拙者)達の思いは繋がる……

既に俺達は限界だ。

もう剣を振れる気がしない。


正真正銘の最後の攻撃。


ありったけの残った力と想いを載せてオークキングに剣を振り下ろす。


「「ハアアア~!」」


想いの力と暴力の力が激突する!



想い暴力の決着が、つこうとしていた。
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