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タケノコドンⅡ 〜タケノコドンVSスペースコーン〜
鉄火場
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7月7日午前10時18分、北海道は大雪山国立公園。白く眩い朝の陽光が照らす山岳部の裾野には巨大なコーンが立ち竦み、周辺平野には無数に増殖した小型コーンが生え渡っている。それに対峙する様に青函トンネルを強行突破した陸上自衛隊の大部隊が陣を張り、遠く沿岸には残存した海自と在日米軍の艦隊が集結していた。本陣の指揮所では司令官上條一尉が直々に出向き陣頭指揮を執っていた。今正に激しい戦いが始まろうとしているそんな時、通信官が驚きの声を上げる。
「はっ⁉︎ …………了解。終わり。司令、対策本部より緊急通達です」
「どうした?」
「富士山頂にてタケノコドン活動を再開。猛烈な速度で北を目指して爆進中との事」
「タケノコドン⁉︎」
「まさかここへ来るのか? 宇宙コーンと戦う為に」
このタイミングでのタケノコドンの出現と北上の報せを聞き、期待せざるを得ない想像が皆の脳裏に浮かぶのか指揮所内は響めき立った。しかしその中でも上條だけは平静を保ったまま表情を崩さない。
(北野から連絡を受け上層部が便宜を図ったと聞いたが……まさか本当に成し遂げるとは。見上げた子供達だ)
「浮かれるなっ! 不確定分子に期待を寄せるは愚の骨頂。防人たるもの、先ず己の全力を尽くせ。猫の手でも化け物の手でも借りるのはその後だ」
――――10分後
「……3……2……1……」
「1030時、作戦開始!」
作戦開始の号令を受け、灼熱の戦いの火蓋が切られた。10発の焼夷弾が宇宙コーンに命中し、その全体を赤い炎が包み燃え上がった。続けて戦闘ヘリが飛び立ち、燃えるコーンの周囲を取り囲み機銃の引鉄に指をかけながら次の焼夷弾発射を待つ。
「そうだ、燃えている内は奴は蟲体を放出出来ない。もし次弾装填に不備や着弾点を外しても、弾幕を張り外殻を開かせなければいい。これで完全に目標を封じ込め熱を加え続ければいずれ内部爆発を誘発する」
「本当に誘爆しますか? もし上昇して高空から爆撃されたら……」
「その為に艦隊にはトマホークを始め巡航ミサイルの発射体制を整えて貰っている。それに、見ろ……」
そう上條が促す先のモニターには、宇宙コーンが周囲の土砂を巻き上げ自身に纏い始めた。
「土を使って消火を図っている。やはり熱攻撃は効果が有る可能性が極めて高くなったと見ていい」
「しかし、これでは燃焼させ続ける事は不可能では?」
「火は消せても火元の油は無くならない。ここからは根比べだ。砲撃開始!」
焼夷弾を挟み、戦車砲とミサイルの攻撃が絶え間無く続いた。身に纏いかけた土砂を弾き飛ばし残留した油は再び炎を上げ、それは次第に大きく更に勢いを増していった。長期戦を見越していた上條はここで次の奇策を切る。上空に現れた輸送機が燃料を入れたタンクやドラム缶を直接投下したのだ。上條曰く――「落として燃えるならガソリンでも焼夷弾でも一緒だ。兎に角燃える物掻き集めて落としまくれ」――元々焼夷弾の用意が無かった日本に出来る苦肉の策と言える。
炎は4時間も燃え続け、相当な熱が蓄積し内部に浸透していると思われる。このまま思惑通りにいくかと淡い期待が過ぎり始めた時だった。突然、宇宙コーンが地面から浮き上がり移動し始めたのだ。向かう先は園内唯一の水源、然別湖。一気に落水し全身を湖へと沈めてしまった。水面が湯立ち、湯気が霧の様に薄く周囲に広がっていく。
「司令……」
「想定内だ。今の内に態勢を整え再攻撃に備えよ。ここからが本番だ……総員、一層の鉄火場を覚悟しろ」
不安を煽る様なその言葉は十数分後現実の物となる。急に湖面が波打ったかと思えば、まるで湖面全体が弾けたかの様に飛沫が上がり大量の小型蟲体が飛び出して来た。宙に舞う羽虫の塊の様に群がりながら部隊に向け飛来する蟲体群。しかしこれを予見していた上條は、機銃と歩兵大隊による広域掃射によって対応。群れが分散しきる前に誘爆させ、部隊に接触する前に次々と撃ち落としていく。更に、要請してあった空爆機が湖上空から機雷を投下。水中で爆発、生じた衝撃波が伝わりまだ水中に居た蟲体を一斉に誘爆。湖全体が爆発したかの様に一気に弾け、途端に静かになった。
「……どうしたんでしょう?」
「外殻を開けた状態で誘爆の衝撃をモロに受けたのだろう。このまま水中に籠城するか或いは……」
そんな推測を立てるまでも無く、湖面がゆっくりとせり上がり宇宙コーンが飛び出し、高く上昇する事もせず戦場を確認する様に暫くゆらゆらと浮遊するとやがて静かに元居た場所に着陸した。
「こう来るか……攻撃再開しろ」
「どういう事でしょうか?」
「奴も腹を括ったという事だ。奴は目の様な感覚器官は見られないが、確かに周囲の状況を知覚している。しかしそれは目視程度の範囲で水中からでは外の状況まで把握出来ず、再び機雷による誘爆を危惧し離脱した。だが奴はこの場から離れる事も出来るのにそうしなかった……それは何故か? 奴もまた状況を読み、高度に分析しているからだ。宇宙の長旅、アメリカとモンゴルでの消耗とダメージ……これらは一朝一夕で回復出来るものではない。あの地面に立つ体勢が地中から何かしら資源や養分を補給しているものと推測するが、あれだけ大量の生体を生成し重力を操るには相当なエネルギーと資源が必要な筈。消耗している証拠に、湖を離脱する際水を保持したまま移動しなかった。もしかしたら長距離移動するエネルギーすらもう残ってないのかもしれない」
「だとすれば、このまま攻め続ければ勝機が有るという事ですね」
「いいや。また同じ戦法を繰り返せば、奴もまた湖で冷やすだけだ。それに、もし敢えて持久戦を狙っていたとすれば……やはり奴は予想以上に高度な知能を持っている事になる。只でさえ限られた輸送路で持ち込めた弾薬も少ないというのに、奴が守りの姿勢を崩さずこのまま悪戯に消耗させられれば、いつか隙が生じ反撃に転じた瞬間我々は全滅だ。そうしてこの国から戦力を一掃すれば、後は悠々とこの場所で回復と増殖を進める事が出来るという訳だ」
「そうか……行く先々で新たな戦力とぶつかって堂々巡りするより、一ヶ所を完全に占拠して強固な拠点にした方が良いと気付いたと」
「核さえ無ければ最初からそうしてただろう。消耗戦を強いられた今、奴が根負けして撤退するかエネルギーを枯渇させない限り我々に勝利は無い」
その仮説を聞き、指揮所内は重い空気に包まれる。航空部隊は飛行場に戻り再出撃の為補給を受けている最中だが、地上部隊の弾薬はもうそれ程多くはない。特に特製焼夷弾は残り僅かだ。これを使い切ると一気に消耗が激しくなり戦線が瓦解する。容易に想像出来る結末に絶望感を抱き始める者も居ただろう。
「っ、司令! 目標が土砂を引き付けたまま急上昇! 外殻開きます!」
「いかん! 一斉射! 1匹も取り零すなっ‼︎」
身を覆う炎が弱まった一瞬の隙を突き急上昇した宇宙コーンは弾幕が追い付く前に外殻を解放、蟲体を拡散し反撃に転じた。全力を挙げこれに対応するも、航空部隊が引き上げたタイミングで戦力が足らず空から押し寄せる群れを処理しきれない。
「全航空部隊に繰り上げ支援要請、急げ!」
「しかし、まだ燃料の補給が」
「片道分あればいい! どうせもう弾薬も残り少ない。撃ち尽くしたら安全圏に離れ機体を捨てて脱出させろ」
「そんな無茶苦茶な!」
「無茶でも何でも、今この瞬間を乗り切れなければ全て終わりだ!」
このまま物量で押し切られるのも時間の問題かと思われた。が、その時、通信官に一報が届く。
「司令、入電です! 我、合衆国海軍残存艦隊旗艦空母パイナップルボーイ艦長ヘイヤー。遅参申し訳無い。我々にも仇討ちの栄誉を賜る機会を与えて頂きたい……です」
「返信しろ。こちら司令官上條、貴殿らの参戦心より歓迎する。存分に討たれたし」
「返信。忝い……終わり」
「よし、残存艦隊と連携し今一度奴を押し込めるぞ! 人間の底力、宇宙外来種に教えてやれ!」
空母から発艦した艦載機編隊と艦隊から発射されるミサイルによって蟲体群は大幅に減少。警戒した宇宙コーンは再び外殻を閉じ地上静止状態に入るも、そこに米軍のナパーム爆撃が着弾、炎上する。再度封じ込めに成功した日米混成軍は再々消耗戦に突入した。勝機が見えず時間と弾薬を消耗するだけの戦いに疲弊は募り、参戦した自衛官並びに兵士の多くはこの時が一番長く辛かったと後に語る。彼らはその状態で5時間もの間宇宙コーンの自由を許さず動きを封じ続けたのだ。しかし、もう自衛隊の弾薬は尽きかけ、空自部隊は機体を乗り捨て残機無し。米軍もミサイルを撃ち尽くした。
「いよいよ打つ手が無くなってきたか」
「司令……そろそろ神頼みしてもよろしいでしょうか?」
「許す……と言いたいところだが、もうひと踏ん張りしようじゃないか」
「しかし……」
「忘れたか? もうじきアレが来る」
「あれ……アレですか⁉︎」
「タケノコドン現着!」
夕陽が地平線に沈みかけようとしているその時、彼方から地響きを立ち鳴らせ巨大な影が大雪山の地に脚を踏み入れた。巨獣はその視線の先に立つ敵を認めると立ち止まり、燃え滾る戦意をぶつける様に威嚇の咆哮を轟かせた。
グォアアアアアアォォン‼︎‼︎
「総員に通達! 残る全火力を以ってタケノコドンを援護せよ」
『了解』『了解』
「司令、奴の手は借りないんじゃなかったのですか?」
「既に人事は尽くした。それに状況を利用するのも戦術の内だ。勝つ為には臨機応変に、その都度最善の手を打つ。それが他力本願だろうと、日本を守る為なら意地でも恥でも捨ててやる」
「はっ⁉︎ …………了解。終わり。司令、対策本部より緊急通達です」
「どうした?」
「富士山頂にてタケノコドン活動を再開。猛烈な速度で北を目指して爆進中との事」
「タケノコドン⁉︎」
「まさかここへ来るのか? 宇宙コーンと戦う為に」
このタイミングでのタケノコドンの出現と北上の報せを聞き、期待せざるを得ない想像が皆の脳裏に浮かぶのか指揮所内は響めき立った。しかしその中でも上條だけは平静を保ったまま表情を崩さない。
(北野から連絡を受け上層部が便宜を図ったと聞いたが……まさか本当に成し遂げるとは。見上げた子供達だ)
「浮かれるなっ! 不確定分子に期待を寄せるは愚の骨頂。防人たるもの、先ず己の全力を尽くせ。猫の手でも化け物の手でも借りるのはその後だ」
――――10分後
「……3……2……1……」
「1030時、作戦開始!」
作戦開始の号令を受け、灼熱の戦いの火蓋が切られた。10発の焼夷弾が宇宙コーンに命中し、その全体を赤い炎が包み燃え上がった。続けて戦闘ヘリが飛び立ち、燃えるコーンの周囲を取り囲み機銃の引鉄に指をかけながら次の焼夷弾発射を待つ。
「そうだ、燃えている内は奴は蟲体を放出出来ない。もし次弾装填に不備や着弾点を外しても、弾幕を張り外殻を開かせなければいい。これで完全に目標を封じ込め熱を加え続ければいずれ内部爆発を誘発する」
「本当に誘爆しますか? もし上昇して高空から爆撃されたら……」
「その為に艦隊にはトマホークを始め巡航ミサイルの発射体制を整えて貰っている。それに、見ろ……」
そう上條が促す先のモニターには、宇宙コーンが周囲の土砂を巻き上げ自身に纏い始めた。
「土を使って消火を図っている。やはり熱攻撃は効果が有る可能性が極めて高くなったと見ていい」
「しかし、これでは燃焼させ続ける事は不可能では?」
「火は消せても火元の油は無くならない。ここからは根比べだ。砲撃開始!」
焼夷弾を挟み、戦車砲とミサイルの攻撃が絶え間無く続いた。身に纏いかけた土砂を弾き飛ばし残留した油は再び炎を上げ、それは次第に大きく更に勢いを増していった。長期戦を見越していた上條はここで次の奇策を切る。上空に現れた輸送機が燃料を入れたタンクやドラム缶を直接投下したのだ。上條曰く――「落として燃えるならガソリンでも焼夷弾でも一緒だ。兎に角燃える物掻き集めて落としまくれ」――元々焼夷弾の用意が無かった日本に出来る苦肉の策と言える。
炎は4時間も燃え続け、相当な熱が蓄積し内部に浸透していると思われる。このまま思惑通りにいくかと淡い期待が過ぎり始めた時だった。突然、宇宙コーンが地面から浮き上がり移動し始めたのだ。向かう先は園内唯一の水源、然別湖。一気に落水し全身を湖へと沈めてしまった。水面が湯立ち、湯気が霧の様に薄く周囲に広がっていく。
「司令……」
「想定内だ。今の内に態勢を整え再攻撃に備えよ。ここからが本番だ……総員、一層の鉄火場を覚悟しろ」
不安を煽る様なその言葉は十数分後現実の物となる。急に湖面が波打ったかと思えば、まるで湖面全体が弾けたかの様に飛沫が上がり大量の小型蟲体が飛び出して来た。宙に舞う羽虫の塊の様に群がりながら部隊に向け飛来する蟲体群。しかしこれを予見していた上條は、機銃と歩兵大隊による広域掃射によって対応。群れが分散しきる前に誘爆させ、部隊に接触する前に次々と撃ち落としていく。更に、要請してあった空爆機が湖上空から機雷を投下。水中で爆発、生じた衝撃波が伝わりまだ水中に居た蟲体を一斉に誘爆。湖全体が爆発したかの様に一気に弾け、途端に静かになった。
「……どうしたんでしょう?」
「外殻を開けた状態で誘爆の衝撃をモロに受けたのだろう。このまま水中に籠城するか或いは……」
そんな推測を立てるまでも無く、湖面がゆっくりとせり上がり宇宙コーンが飛び出し、高く上昇する事もせず戦場を確認する様に暫くゆらゆらと浮遊するとやがて静かに元居た場所に着陸した。
「こう来るか……攻撃再開しろ」
「どういう事でしょうか?」
「奴も腹を括ったという事だ。奴は目の様な感覚器官は見られないが、確かに周囲の状況を知覚している。しかしそれは目視程度の範囲で水中からでは外の状況まで把握出来ず、再び機雷による誘爆を危惧し離脱した。だが奴はこの場から離れる事も出来るのにそうしなかった……それは何故か? 奴もまた状況を読み、高度に分析しているからだ。宇宙の長旅、アメリカとモンゴルでの消耗とダメージ……これらは一朝一夕で回復出来るものではない。あの地面に立つ体勢が地中から何かしら資源や養分を補給しているものと推測するが、あれだけ大量の生体を生成し重力を操るには相当なエネルギーと資源が必要な筈。消耗している証拠に、湖を離脱する際水を保持したまま移動しなかった。もしかしたら長距離移動するエネルギーすらもう残ってないのかもしれない」
「だとすれば、このまま攻め続ければ勝機が有るという事ですね」
「いいや。また同じ戦法を繰り返せば、奴もまた湖で冷やすだけだ。それに、もし敢えて持久戦を狙っていたとすれば……やはり奴は予想以上に高度な知能を持っている事になる。只でさえ限られた輸送路で持ち込めた弾薬も少ないというのに、奴が守りの姿勢を崩さずこのまま悪戯に消耗させられれば、いつか隙が生じ反撃に転じた瞬間我々は全滅だ。そうしてこの国から戦力を一掃すれば、後は悠々とこの場所で回復と増殖を進める事が出来るという訳だ」
「そうか……行く先々で新たな戦力とぶつかって堂々巡りするより、一ヶ所を完全に占拠して強固な拠点にした方が良いと気付いたと」
「核さえ無ければ最初からそうしてただろう。消耗戦を強いられた今、奴が根負けして撤退するかエネルギーを枯渇させない限り我々に勝利は無い」
その仮説を聞き、指揮所内は重い空気に包まれる。航空部隊は飛行場に戻り再出撃の為補給を受けている最中だが、地上部隊の弾薬はもうそれ程多くはない。特に特製焼夷弾は残り僅かだ。これを使い切ると一気に消耗が激しくなり戦線が瓦解する。容易に想像出来る結末に絶望感を抱き始める者も居ただろう。
「っ、司令! 目標が土砂を引き付けたまま急上昇! 外殻開きます!」
「いかん! 一斉射! 1匹も取り零すなっ‼︎」
身を覆う炎が弱まった一瞬の隙を突き急上昇した宇宙コーンは弾幕が追い付く前に外殻を解放、蟲体を拡散し反撃に転じた。全力を挙げこれに対応するも、航空部隊が引き上げたタイミングで戦力が足らず空から押し寄せる群れを処理しきれない。
「全航空部隊に繰り上げ支援要請、急げ!」
「しかし、まだ燃料の補給が」
「片道分あればいい! どうせもう弾薬も残り少ない。撃ち尽くしたら安全圏に離れ機体を捨てて脱出させろ」
「そんな無茶苦茶な!」
「無茶でも何でも、今この瞬間を乗り切れなければ全て終わりだ!」
このまま物量で押し切られるのも時間の問題かと思われた。が、その時、通信官に一報が届く。
「司令、入電です! 我、合衆国海軍残存艦隊旗艦空母パイナップルボーイ艦長ヘイヤー。遅参申し訳無い。我々にも仇討ちの栄誉を賜る機会を与えて頂きたい……です」
「返信しろ。こちら司令官上條、貴殿らの参戦心より歓迎する。存分に討たれたし」
「返信。忝い……終わり」
「よし、残存艦隊と連携し今一度奴を押し込めるぞ! 人間の底力、宇宙外来種に教えてやれ!」
空母から発艦した艦載機編隊と艦隊から発射されるミサイルによって蟲体群は大幅に減少。警戒した宇宙コーンは再び外殻を閉じ地上静止状態に入るも、そこに米軍のナパーム爆撃が着弾、炎上する。再度封じ込めに成功した日米混成軍は再々消耗戦に突入した。勝機が見えず時間と弾薬を消耗するだけの戦いに疲弊は募り、参戦した自衛官並びに兵士の多くはこの時が一番長く辛かったと後に語る。彼らはその状態で5時間もの間宇宙コーンの自由を許さず動きを封じ続けたのだ。しかし、もう自衛隊の弾薬は尽きかけ、空自部隊は機体を乗り捨て残機無し。米軍もミサイルを撃ち尽くした。
「いよいよ打つ手が無くなってきたか」
「司令……そろそろ神頼みしてもよろしいでしょうか?」
「許す……と言いたいところだが、もうひと踏ん張りしようじゃないか」
「しかし……」
「忘れたか? もうじきアレが来る」
「あれ……アレですか⁉︎」
「タケノコドン現着!」
夕陽が地平線に沈みかけようとしているその時、彼方から地響きを立ち鳴らせ巨大な影が大雪山の地に脚を踏み入れた。巨獣はその視線の先に立つ敵を認めると立ち止まり、燃え滾る戦意をぶつける様に威嚇の咆哮を轟かせた。
グォアアアアアアォォン‼︎‼︎
「総員に通達! 残る全火力を以ってタケノコドンを援護せよ」
『了解』『了解』
「司令、奴の手は借りないんじゃなかったのですか?」
「既に人事は尽くした。それに状況を利用するのも戦術の内だ。勝つ為には臨機応変に、その都度最善の手を打つ。それが他力本願だろうと、日本を守る為なら意地でも恥でも捨ててやる」
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