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カラン、カラーン
ドアベルが、軽やかになった。
「いらっしゃいませ。
少々お時間をいただきますので、そちらでお待ちください」
右手にある長椅子で待つよう促された。
数名の店員がコの字型に並んだカウンターに立ち作業している。
皆、白いシャツに黒いベストを羽織り、首元に蝶ネクタイをつけ、オシャレにキめていた。
真向いにあるカウンターの上では、沢山の散乱した宝石一つ一つを、店員が丁寧に後方の木棚へと閉まっているところだった。
見守ること、数分。
カウンターの上の宝石はキレイさっぱり、片付けられた。
きっと、そこが片付いたら、呼ばれるのだろう。そう考えていた。
しかしながら、一向に呼ばれない。呼ばれる気配すらない。
向かい側で作業していた店員は、カウンターを片付け終わると、奥へと消えていった。
どうやら、この部屋の奥には工房があるようだ。
他の店員も、書類に没頭したり、宝石の手入れをしたりと、アルネたちの方には見向きもしない。
旦那様の方を、チラリと確認すると、不満げにされているのが、何となくわかった。
当然だ。
ここに来ることは、事前に伝えていたのだから。
つまり、これは、サルヴィア公爵家が訪れたことを知っていながら、敢えてこの対応を取っているということに他ならない。
カラン、カラーン
ドアベルが鳴り、新たな客が入ってきた。
身なりから、結構な高位貴族である事が分かる。
すぐさま店員の一人が、対応に向かった。
「お待ちしておりました。ささっ、こちらへ」
荷物を受け取ると、2階へと案内していく。
あからさまに、態度が違った。
「ちょっと、いいか?」
客が2階へと消えていったあと、
旦那様が、そばに居た店員に声をかけた。
店員がビクッと、固まる。
「俺達の方が、先だったはずだが? 」
「もっ、申し訳ありません。
こちらへどうぞ」
引き攣った笑みで、向かいのカウンターへと案内された。
「こちらの宝石などいかがでしょう。土竜の鱗から造られたものになります」
べっ甲色に輝く宝石を、店員が勧めてきた。
「……まず、鑑定をお願いしたい」
「……も、申し訳ございません。ただいま主人が別件対応中でして、少々お時間が」
「どれぐらいかかる? 」
「明確にはお答えできかねまして……」
「さっきの客か? 」
「……は、はい」
「これを、ローゼン卿に渡せ」
旦那様が、ペンダントを差し出す。それは、高位貴族の当主が、身分証代わり使うものだった。
表側に王家の紋章『宝剣と指輪か』、そして、裏側にはサルヴィア公爵家の家紋が象られたものだった。
「こっ、これはっ!? 」
「ハルク・サルヴィアが来たと伝えろ。事前に鑑定の予約を入れていたはずだが? 」
「しゅ、主人に伝えて参りますっ!! 」
顔を真っ青にした店員が、ドタバタと飛んでいく。
この後に及んで、やっと、サルヴィア公爵閣下本人が来たことに気づいたようだ。
「おおおお、お待たせしましたっーっ!!
サルヴィア公爵家からのお問い合わせということで、こちらから、お伺いする旨を伝えに向かわせたのですが、行き違いになったようで ……」
2階から転げるように降ってきた男──ローゼン卿──が、額に脂汗を浮かせながら早口でまくしたてた。
「そうか。それは悪い事をしたな」
旦那様が凍える声で返した。
「いえいえいえ。
閣下?……ご直々にご来店いただけるとは、恐悦至極にござきます」
「……それで、鑑定はして貰えるんだな? 」
「と、当然にございます。
しかし、公爵閣下の鑑定でしたら、以前、お済みですよね? そちらに、何か問題でも? 」
「今回は俺ではない。
妻の、アルネリアを頼みたい」
「奥様のアルネリア、様? 」
視線がアルネに向く。
「フランク公……」
「俺の妻だ」
旦那様が断言する。
「これは、失礼しました。
取り敢えず、こちらへお掛けください」
カウンター席へと案内された。
「鑑定をご希望ということで、よろしいですか? 鑑定を行えば、……その、魔力適正が明らかになってしまいますが……」
ローゼン卿がアルネを見た。
『暴走令嬢』に言っているのだ。
今まで、魔力適性が無いと断言されてたことはなかった。
もし、それが断言されてしまったら……。
「!? 」
そっと、右手を握られた。
知らず知らずの内に握りしめていた拳を、旦那様の大きな手が包み込んでいた。
「頼む。
アルネリアには、1番似合う宝石を選びたい」
手を握ったまま、旦那様が店主に言う。
どんな結果でも大丈夫。そう、言われているようで、うれしかった。
「承知しました。
準備がございますので、少々お待ちください」
時計をちらちら確認しながら、ローゼン卿が言った。
アルネが断ることを、望んでいたようだ。
程なくして奥から台座に乗った、大きな水晶が運ばれてきた。
「こちらに、手をかざしてください」
言われるがままに、左手を差し出した。
右手は相変わらず、優しく握られたまま、だ。
その温もりが、心臓が飛び出そうな程の緊張を解してくれる。
でも、怖くて目は開けては居られなかった。
「おおっ」
旦那様の歓声と共に、瞼の裏が明るくなる。
ゆっくり目を開けると、水晶が赤く輝やいていた。
「お、おめでとうございますっ!
奥様には、火元素の適正が……は? 」
店主の言葉をかき消すように、右側から青い輝きが広がり出し、赤を呑み込んでいく。
「えっ、ええっ!?」
赤を完全に呑み込むかのように思われた青から、今度は黄金が滲みだし蝕んでゆく。
赤も負けじと、青を押し返していた。
「な、なんとっ!! 」
さらに、下から緑が渦を巻きながら、他の三色を呑み込み始めた。
「は、ふぇっ!? 」
ついには、店主が声にならない声を上げた。
せめぎ合う4色が、水晶の中心へと集まっていったからだ。
「……」
そして、遂には見えなくなった。
「……残念ながら、やはり、奥様には魔力の適性がないようです」
少し様子をみていたローゼン卿が、痺れをきらせたように断言した。
「しかし、輝いていたではないか。魔力適性が無い者が、あんな風に輝かせられるのか? 」
「えーっと、ありえます。
鑑定においては、結果が全てです。
以上になります」
ちらちらと2階を気にかけながら、ローゼン卿がいう。早く終わらせたい。態度がそう物語っていた。
思わず俯いてしまう。
イレギュラーがあったとはいえ、少しでも期待した自分が馬鹿だった。
なにせ『魔の劣等生で、暴走令嬢』であるのだから。
右手が、ぎゅっと握られた。
「ま、まて」
きっと、元気づけられているのだろう。
そう思った矢先、旦那様が声をあげた。
水晶を片付けようとしていた店員が動きを止める。
「いい加減にしてくださいっ!
次のお客様がお待ちになっております」
ローゼン卿がイラただしげに言った。
魔力の才が無いものになど興味はない。
そう言っているような態度だった。
「水晶の中心を見ろ! ほらっ、小さいが、白く輝いている」
「そんな馬鹿……なっ、なんとっ!? 」
旦那様の声とともに白い輝きは光を増し、水晶全体に広がった。
「おい、ローゼン卿。これは、どういう意味だ」
旦那様の声掛けで、口をパクパクとさせていたローゼン卿が我に返った。
「白い輝きは……」
「初代女王陛下と同じ、四元素全てに適性があることの、証」
「おっしゃる通りにございます。
おいっ、何をしている。この御二方を奥の部屋にご案内しろ」
「時間は大丈夫なのか? 次のご客人がお待ちなんだろう? 」
「サルヴィア公爵閣下を差しおいて、他の客など。それに、ウチには優秀なモノが沢山おります。そちらは、彼らに任せるとしましょう」
ローゼン卿が、両手をもみもみしながら答える。
先程からころころと変わる態度は、流石である。
アルネ達を、店員が2階の奥の部屋まで案内していく。
「あの男は、あんなのだが、鑑定の腕だけは確かなんだ」
旦那様に、そっと耳打ちされた。
「なにっ!? 御二方にお茶もお出ししていないのか? まったく、何をしているっ!! 」
背後ではローゼン卿が、わざとらしく、大声で叫んでいるのが聞こえた。
ドアベルが、軽やかになった。
「いらっしゃいませ。
少々お時間をいただきますので、そちらでお待ちください」
右手にある長椅子で待つよう促された。
数名の店員がコの字型に並んだカウンターに立ち作業している。
皆、白いシャツに黒いベストを羽織り、首元に蝶ネクタイをつけ、オシャレにキめていた。
真向いにあるカウンターの上では、沢山の散乱した宝石一つ一つを、店員が丁寧に後方の木棚へと閉まっているところだった。
見守ること、数分。
カウンターの上の宝石はキレイさっぱり、片付けられた。
きっと、そこが片付いたら、呼ばれるのだろう。そう考えていた。
しかしながら、一向に呼ばれない。呼ばれる気配すらない。
向かい側で作業していた店員は、カウンターを片付け終わると、奥へと消えていった。
どうやら、この部屋の奥には工房があるようだ。
他の店員も、書類に没頭したり、宝石の手入れをしたりと、アルネたちの方には見向きもしない。
旦那様の方を、チラリと確認すると、不満げにされているのが、何となくわかった。
当然だ。
ここに来ることは、事前に伝えていたのだから。
つまり、これは、サルヴィア公爵家が訪れたことを知っていながら、敢えてこの対応を取っているということに他ならない。
カラン、カラーン
ドアベルが鳴り、新たな客が入ってきた。
身なりから、結構な高位貴族である事が分かる。
すぐさま店員の一人が、対応に向かった。
「お待ちしておりました。ささっ、こちらへ」
荷物を受け取ると、2階へと案内していく。
あからさまに、態度が違った。
「ちょっと、いいか?」
客が2階へと消えていったあと、
旦那様が、そばに居た店員に声をかけた。
店員がビクッと、固まる。
「俺達の方が、先だったはずだが? 」
「もっ、申し訳ありません。
こちらへどうぞ」
引き攣った笑みで、向かいのカウンターへと案内された。
「こちらの宝石などいかがでしょう。土竜の鱗から造られたものになります」
べっ甲色に輝く宝石を、店員が勧めてきた。
「……まず、鑑定をお願いしたい」
「……も、申し訳ございません。ただいま主人が別件対応中でして、少々お時間が」
「どれぐらいかかる? 」
「明確にはお答えできかねまして……」
「さっきの客か? 」
「……は、はい」
「これを、ローゼン卿に渡せ」
旦那様が、ペンダントを差し出す。それは、高位貴族の当主が、身分証代わり使うものだった。
表側に王家の紋章『宝剣と指輪か』、そして、裏側にはサルヴィア公爵家の家紋が象られたものだった。
「こっ、これはっ!? 」
「ハルク・サルヴィアが来たと伝えろ。事前に鑑定の予約を入れていたはずだが? 」
「しゅ、主人に伝えて参りますっ!! 」
顔を真っ青にした店員が、ドタバタと飛んでいく。
この後に及んで、やっと、サルヴィア公爵閣下本人が来たことに気づいたようだ。
「おおおお、お待たせしましたっーっ!!
サルヴィア公爵家からのお問い合わせということで、こちらから、お伺いする旨を伝えに向かわせたのですが、行き違いになったようで ……」
2階から転げるように降ってきた男──ローゼン卿──が、額に脂汗を浮かせながら早口でまくしたてた。
「そうか。それは悪い事をしたな」
旦那様が凍える声で返した。
「いえいえいえ。
閣下?……ご直々にご来店いただけるとは、恐悦至極にござきます」
「……それで、鑑定はして貰えるんだな? 」
「と、当然にございます。
しかし、公爵閣下の鑑定でしたら、以前、お済みですよね? そちらに、何か問題でも? 」
「今回は俺ではない。
妻の、アルネリアを頼みたい」
「奥様のアルネリア、様? 」
視線がアルネに向く。
「フランク公……」
「俺の妻だ」
旦那様が断言する。
「これは、失礼しました。
取り敢えず、こちらへお掛けください」
カウンター席へと案内された。
「鑑定をご希望ということで、よろしいですか? 鑑定を行えば、……その、魔力適正が明らかになってしまいますが……」
ローゼン卿がアルネを見た。
『暴走令嬢』に言っているのだ。
今まで、魔力適性が無いと断言されてたことはなかった。
もし、それが断言されてしまったら……。
「!? 」
そっと、右手を握られた。
知らず知らずの内に握りしめていた拳を、旦那様の大きな手が包み込んでいた。
「頼む。
アルネリアには、1番似合う宝石を選びたい」
手を握ったまま、旦那様が店主に言う。
どんな結果でも大丈夫。そう、言われているようで、うれしかった。
「承知しました。
準備がございますので、少々お待ちください」
時計をちらちら確認しながら、ローゼン卿が言った。
アルネが断ることを、望んでいたようだ。
程なくして奥から台座に乗った、大きな水晶が運ばれてきた。
「こちらに、手をかざしてください」
言われるがままに、左手を差し出した。
右手は相変わらず、優しく握られたまま、だ。
その温もりが、心臓が飛び出そうな程の緊張を解してくれる。
でも、怖くて目は開けては居られなかった。
「おおっ」
旦那様の歓声と共に、瞼の裏が明るくなる。
ゆっくり目を開けると、水晶が赤く輝やいていた。
「お、おめでとうございますっ!
奥様には、火元素の適正が……は? 」
店主の言葉をかき消すように、右側から青い輝きが広がり出し、赤を呑み込んでいく。
「えっ、ええっ!?」
赤を完全に呑み込むかのように思われた青から、今度は黄金が滲みだし蝕んでゆく。
赤も負けじと、青を押し返していた。
「な、なんとっ!! 」
さらに、下から緑が渦を巻きながら、他の三色を呑み込み始めた。
「は、ふぇっ!? 」
ついには、店主が声にならない声を上げた。
せめぎ合う4色が、水晶の中心へと集まっていったからだ。
「……」
そして、遂には見えなくなった。
「……残念ながら、やはり、奥様には魔力の適性がないようです」
少し様子をみていたローゼン卿が、痺れをきらせたように断言した。
「しかし、輝いていたではないか。魔力適性が無い者が、あんな風に輝かせられるのか? 」
「えーっと、ありえます。
鑑定においては、結果が全てです。
以上になります」
ちらちらと2階を気にかけながら、ローゼン卿がいう。早く終わらせたい。態度がそう物語っていた。
思わず俯いてしまう。
イレギュラーがあったとはいえ、少しでも期待した自分が馬鹿だった。
なにせ『魔の劣等生で、暴走令嬢』であるのだから。
右手が、ぎゅっと握られた。
「ま、まて」
きっと、元気づけられているのだろう。
そう思った矢先、旦那様が声をあげた。
水晶を片付けようとしていた店員が動きを止める。
「いい加減にしてくださいっ!
次のお客様がお待ちになっております」
ローゼン卿がイラただしげに言った。
魔力の才が無いものになど興味はない。
そう言っているような態度だった。
「水晶の中心を見ろ! ほらっ、小さいが、白く輝いている」
「そんな馬鹿……なっ、なんとっ!? 」
旦那様の声とともに白い輝きは光を増し、水晶全体に広がった。
「おい、ローゼン卿。これは、どういう意味だ」
旦那様の声掛けで、口をパクパクとさせていたローゼン卿が我に返った。
「白い輝きは……」
「初代女王陛下と同じ、四元素全てに適性があることの、証」
「おっしゃる通りにございます。
おいっ、何をしている。この御二方を奥の部屋にご案内しろ」
「時間は大丈夫なのか? 次のご客人がお待ちなんだろう? 」
「サルヴィア公爵閣下を差しおいて、他の客など。それに、ウチには優秀なモノが沢山おります。そちらは、彼らに任せるとしましょう」
ローゼン卿が、両手をもみもみしながら答える。
先程からころころと変わる態度は、流石である。
アルネ達を、店員が2階の奥の部屋まで案内していく。
「あの男は、あんなのだが、鑑定の腕だけは確かなんだ」
旦那様に、そっと耳打ちされた。
「なにっ!? 御二方にお茶もお出ししていないのか? まったく、何をしているっ!! 」
背後ではローゼン卿が、わざとらしく、大声で叫んでいるのが聞こえた。
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