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終章
後日談
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数年後のマゼンタ王国にて。
トゥルルルル、トゥルルルルル。
「はい、こちら『てのひらモータース』です。
え、スラリーが言うことを聞かない?
すみませんが、少しご質問をいいですか? ここ、1ヶ月ぐらいで『顔ペチャ』はどのくらい有りました? なにっ? ゼロですか?
それは、大変です。早急に代替スラリーを派遣しますから、オタクのスラリーをこちらに預けてください。そして、普段からスラリーを可愛がってあげて下さい。
いいえ、この1回はオプションにより無料です。はい、次回から有料になりますので、ご注意ください」
ガチャ
電話を切り、即、ティルスさんに指示をだす。
「ティルスさん、漁師のタナカさんのところに、元気なスラリー一体を派遣して。で、タナカさんところの、スラリーを保養所に入れる手配をお願いします」
「社長、承知しました」
トゥルルルル、トゥルルルルル。
「はい、こちら『てのひらモータース』です。海遊スラリーのご予約ですね。18日に、5名様。はい、ご予約可能です。料金は……。」
トゥルルルル、トゥルルルルル。
「はい、こちら『てのひらモータース』です。スラリータクシーのご予約ですね。21日に、3名様。どちらまでですか? エローまで。お迎えはいらず、こちらにお越しくださる。
はい、ご予約可能です。料金は……。」
俺は今、会社を経営している。
スラリーを用いた海運事業だ。
主な事業内容は、漁船へのスラリー貸与、スラリーのタクシー・郵便事業、スラリーに乗って海を楽しめる海遊事業、あと、スラリーのための保養施設の運営である。
ここ数年で、ピグミア大陸の運河は大幅に整備された。小さな河川が街の中まで通されたので、タクシーや郵便の需要は鰻登りだった。
漁船へのスラリー貸与に関しては、うちに頼らなくとも野生のスライムを捕まえれば可能だ。
しかしながら、言うことを聞かせるのが中々難しい。その点、うちはサービスが充実している。お世話の仕方のレクチャー、1度のみ代替スラリーの貸出無料、及び、1度のみスラリー保養所利用無料と、神対応なのだ。
そんなわけで、とても、充実した社長生活を行っている。
ふっふっふっ。
社名からもお分かりの通り、かの有名な『てのひらぐらし』とタイアップも果たし、我社は今や、飛ぶ鳥も落とさん勢いのベンチャー企業なのである。
えっ! 化学?
もちろん、未だに週一で教壇にも立たせていただいてますよ。首輪クローゼットは怖いですからね。ごくたーーまに、実験もしています。
「よしっ、今日の仕事は終わりっ!!」
「今日はこのままルブルム城へお戻りですか?
」
ティルスさんが尋ねてくる。
俺の会社、兼、保養所は湖の近くにあるのだ。
「いや、今から保養所でお風呂に入って帰る」
「それでは、私が……」
「結構ですっ!! 」
ティルスさんの申し出を全力で拒否し、そそくさと社長室を後にした。社員の発言を予想出来るなんて、我ながら社長の鏡だと思う。
俺は鼻歌交じりに、隣の温泉施設へとむかった。引き戸を空けると、ドーンッと大浴場がある。ちゃちゃっと体を洗い、赤い湯船に飛び込む。
ざっぶーーーんっ!
頭まで浸かる。
(苦しっくなーーい♪)
はいっ! お察しの通りスライム風呂である。
頭まで浸かっても苦しくない上、温度はスラリーが適温にしてくれる。そして、脱水症状になる心配もない。さらにさらに、老廃物はスラリーが全吸収だ。
本当にいい事ずくめである。
目下、これも事業化計画中だ。
この中でホットヨガするのもいいかもしれない。
そんなことを考えていると、ニヤニヤが止まらなくなってきた。
若干の難点が、無数の視線に晒されることと、快適過ぎて出れなくなってしまうことぐらいだ。
俺の色素魔獣人生は、まだまだ、無限の可能性をひめているっ!!
マゼンタ王国にお越しの際は、ぜひ、スパランドスラリアンズに、お立ち寄りくださいっ!!
──完──
えっ? 皆はどうしてるかって?
こっちの皇女様とあっちの皇帝様がいい感じだとか、あっちの総司令とあっちの副総司令がもうすぐゴールしそうだとか、どこでもモテモテの教帝聖下だとか、相変わらずマッドな独身貴族だとか、俺が知ってるのはそれぐらい、かな?
俺? 俺は相変わらず、みんなのマスコット『てのひらぐらし』のピロルだよ。
そんじゃー、またねー♪
トゥルルルル、トゥルルルルル。
「はい、こちら『てのひらモータース』です。
え、スラリーが言うことを聞かない?
すみませんが、少しご質問をいいですか? ここ、1ヶ月ぐらいで『顔ペチャ』はどのくらい有りました? なにっ? ゼロですか?
それは、大変です。早急に代替スラリーを派遣しますから、オタクのスラリーをこちらに預けてください。そして、普段からスラリーを可愛がってあげて下さい。
いいえ、この1回はオプションにより無料です。はい、次回から有料になりますので、ご注意ください」
ガチャ
電話を切り、即、ティルスさんに指示をだす。
「ティルスさん、漁師のタナカさんのところに、元気なスラリー一体を派遣して。で、タナカさんところの、スラリーを保養所に入れる手配をお願いします」
「社長、承知しました」
トゥルルルル、トゥルルルルル。
「はい、こちら『てのひらモータース』です。海遊スラリーのご予約ですね。18日に、5名様。はい、ご予約可能です。料金は……。」
トゥルルルル、トゥルルルルル。
「はい、こちら『てのひらモータース』です。スラリータクシーのご予約ですね。21日に、3名様。どちらまでですか? エローまで。お迎えはいらず、こちらにお越しくださる。
はい、ご予約可能です。料金は……。」
俺は今、会社を経営している。
スラリーを用いた海運事業だ。
主な事業内容は、漁船へのスラリー貸与、スラリーのタクシー・郵便事業、スラリーに乗って海を楽しめる海遊事業、あと、スラリーのための保養施設の運営である。
ここ数年で、ピグミア大陸の運河は大幅に整備された。小さな河川が街の中まで通されたので、タクシーや郵便の需要は鰻登りだった。
漁船へのスラリー貸与に関しては、うちに頼らなくとも野生のスライムを捕まえれば可能だ。
しかしながら、言うことを聞かせるのが中々難しい。その点、うちはサービスが充実している。お世話の仕方のレクチャー、1度のみ代替スラリーの貸出無料、及び、1度のみスラリー保養所利用無料と、神対応なのだ。
そんなわけで、とても、充実した社長生活を行っている。
ふっふっふっ。
社名からもお分かりの通り、かの有名な『てのひらぐらし』とタイアップも果たし、我社は今や、飛ぶ鳥も落とさん勢いのベンチャー企業なのである。
えっ! 化学?
もちろん、未だに週一で教壇にも立たせていただいてますよ。首輪クローゼットは怖いですからね。ごくたーーまに、実験もしています。
「よしっ、今日の仕事は終わりっ!!」
「今日はこのままルブルム城へお戻りですか?
」
ティルスさんが尋ねてくる。
俺の会社、兼、保養所は湖の近くにあるのだ。
「いや、今から保養所でお風呂に入って帰る」
「それでは、私が……」
「結構ですっ!! 」
ティルスさんの申し出を全力で拒否し、そそくさと社長室を後にした。社員の発言を予想出来るなんて、我ながら社長の鏡だと思う。
俺は鼻歌交じりに、隣の温泉施設へとむかった。引き戸を空けると、ドーンッと大浴場がある。ちゃちゃっと体を洗い、赤い湯船に飛び込む。
ざっぶーーーんっ!
頭まで浸かる。
(苦しっくなーーい♪)
はいっ! お察しの通りスライム風呂である。
頭まで浸かっても苦しくない上、温度はスラリーが適温にしてくれる。そして、脱水症状になる心配もない。さらにさらに、老廃物はスラリーが全吸収だ。
本当にいい事ずくめである。
目下、これも事業化計画中だ。
この中でホットヨガするのもいいかもしれない。
そんなことを考えていると、ニヤニヤが止まらなくなってきた。
若干の難点が、無数の視線に晒されることと、快適過ぎて出れなくなってしまうことぐらいだ。
俺の色素魔獣人生は、まだまだ、無限の可能性をひめているっ!!
マゼンタ王国にお越しの際は、ぜひ、スパランドスラリアンズに、お立ち寄りくださいっ!!
──完──
えっ? 皆はどうしてるかって?
こっちの皇女様とあっちの皇帝様がいい感じだとか、あっちの総司令とあっちの副総司令がもうすぐゴールしそうだとか、どこでもモテモテの教帝聖下だとか、相変わらずマッドな独身貴族だとか、俺が知ってるのはそれぐらい、かな?
俺? 俺は相変わらず、みんなのマスコット『てのひらぐらし』のピロルだよ。
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面白かった!
中盤以降は一気読みしてしまった。
ざっす!
ランナー?