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第四章 エロー学術都市~20年越しのざまぁ編~

リケートーク・リターンズ③

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「そう言えば、暴走?と言ったらいいのかな?  君が色素核兵器に飛び込んだ時は、意識があったのかい?  」

 シマさんのフレンチトーストを食べて元気を取り戻した博士が、俺に問いかけてきた。

 ──暴走?

 ああ、あのカフカとか言う奴に、体を乗っ取られた時の事か。

「意識はありました、たぶん……。
 体は動かせませんでしたが、視覚だけは生かされていたようで見えていました。
 聞いくださいよっ!  カフカと言う奴が、ずっと、話しかけてきてウザかったですよ!!  」

 あの声を、今、思い出しただけで、ムカムカしてきた。

「カフカ?  誰だい、それは?  」

「ピロロの魂晶の儀を邪魔した奴だと言っていました。遠隔で俺の体を乗っ取るだなんてこと、可能なんですか?  」

「なっ!?  
 ……そうか。既に、あの時から術が展開されていたのか」

 一人驚き、一人で納得している。

「一人で完結しないでくださいよ。あの時って、魂晶の儀ですか?  」

「ごめんごめん。その通りだ、あの魂晶の儀の接触から全ては計算されていたのだろう」

 博士が説明してくれた。
 魂晶の儀で俺がピロロを守ったとき、どさくさに紛れて、カフカが微量な色素ピグメントを俺の体内に忍ばせたようだ。
 俺が大幅な色素ピグメント不足に陥いると、カフカの色素ピグメントが増殖し体を乗っ取る仕組みであろうと。

「ということは、ヨーメン学術院長も洗脳されていたということですか?  」

「うーん、それはどうだろうなぁ。あの人は、元々あんなタイプの人だならな。私と学術院長の関係性を探れば、君に手を出すことは容易に想像出来ただろうし。
 学術院長が狙い通り動けばそれを利用し、そうでなければ別の作戦を企てるつもりだったのかもな」

 学術院長が亡くなった今、真実を知ることは難しいようだ。

「ところで、体を乗っ取られていたということだが、色素核兵器に飛び込んだのは、君を確実に倒そうというカフカの命令かね?  」

「いいえ、違います。
 アイツ、俺にピロロを攻撃させようとしたんです。その言葉を聞いたら頭に血が登っちゃって。
 その一瞬だけ、奴の支配から解放されたんです。
 そうこうする内に、色素核兵器が発射されて……。
 気づいたらピロロとアミちゃんを守りたい一心で、突っ込んでいました」

「あんな化け物兵器を、どうやって防いだんだ?  」

「ピロロとアミちゃんの力も借りて、只管、多重結界を張りまくりました。
 色素核兵器にたどり着く手前で、また、奴に主導権を奪われて絶望したんです。
 その時、ピロロとアミちゃんが俺に色素ピグメントを分けてくれて、カフカが俺の体から締め出されました。
 あっ、違うのか。俺の体が色素ピグメントで満たされたから、カフカの色素ピグメントが抑え込まれたんだ。カフカも突然のことで締め出されるって叫んでいたけど……」

「なるほどな。互いに互いを守りたいという君達の強い想いが、あの爆発に打ち勝ったのだ。
 ピロロピロール姫の色素ピグメントが君の暴走を解き、アミちゃんの色素ピグメントが、彼女らを守るために展開した君の結界に加わることで、色素核兵器に含まれる同種の色素ピグメント攻撃を中和したわけだ」

 博士がしみじみと言った。

 そーいえば、体内に残ったカフカの色素ピグメントは、今、どうなっているんだ?
 あれっ!?  俺って、また再暴走する可能性を秘めているんじゃないか?

「大幅な色素ピグメント不足で体を乗っ取られるということは、また暴走する可能性があるんですかっ!?  」

 最悪な可能性に思い当たり、博士に叫んでしまった。

「安心したまえ。
 君は既に、再暴走している」

「へっ!?  」

 博士の思わぬ返答に、奇声をあげてしまった。

 2人を守り切った俺は、再度色素ピグメント不足に陥り、再暴走したらしい。
 博士を盛大に投げ飛ばしたと言われたが、全く、記憶にございません……。

 ラキノン国王陛下の朱雀が俺の体内に取り込まれ、焼き尽くしてくれたようだ。

「国王陛下の登場シーン、格好よかったなぁ」

 博士がうっとりとしながら、恍惚の表情でそう言った。
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