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第四章 エロー学術都市~20年越しのざまぁ編~
アミの思惑 (★アミ視点)
しおりを挟む「さっ、最近、調子はどうだい」
「うーん、センセーのお陰で、じゅんちょー」
あたしの返答にクラテス先生が弱々しく笑った。本人は笑顔のつもりなのだろうけど、全然笑えていない。おまけに、会う度ごとに顔色がどんどん悪くなっていっている。
「センセーこそだいじょーぶ? 顔色、滅茶苦茶悪いよ」
「はははっ、担当患者に心配されたら、お終いだな」
センセーがきまり悪そうに言った。
センセーはあたしの主治医だ。
あたしは、ある時から学校に行けなくなった。よく有る人間カンケーてやつだ。心配した周りがセンセーを探してきた。こんな見た目でも、とても有名な先生らしい。
センセーはあたしに、無理強いをしなかった。
「君の好きな時に、来たらいい」
数回カウンセリングしたのち、センセーはそう言った。
それからは好きな時にここを尋ねて、テキトーに話して帰る、そんな日々が続いた。センセーは、テキトーに相槌を打つだけだった。
何故だか、それがとても心地よかった。
あたしは、ここに入り浸るようになった。センセーに話を聴いてもらって、居ないときは、看護師さんと女子トークをして、たまに、勉強をみて貰って、心が少しずつ癒されていった。
結局、ガッコーには行けてないけど、バイトを始めたりして新しい友達もできた。
「何かあるなら、アタシが相談にのるよ」
疲れているセンセーが心配だ。
「……こっ、これを、応接室に寝ている黒い髪の男の子に、飲ませてくれ」
センセーが、震える手で白い錠剤を差し出す。
「これは何? 」
「……精神安定剤だ」
「なんで、センセーが飲ませないの」
「……彼は薬嫌いなんだ。気付かれないように、そっと飲ませてやってくれ」
センセーの目が泳いでる。
これは飲ませちゃいけないヤツなんだ。
「わかった。あたしに任せて! 」
笑顔でいい、錠剤を受け取った。
何でもないことを、引き受けるみたいに。
軽い挨拶をして、部屋を後にした。扉が閉まる寸前、センセーが安堵の溜息をついたのが聞こえた。
廊下にある椅子に腰を下ろす。
応接室からは、ここを通らないと外へは出られない。だから、ここで待つことにした。
センセーの依頼を受けたのには、2つ理由がある。1つはセンセーのため。あたしが辛い時、センセーが助けてくれた。今度は、あたしが助ける番だ。
そして、もう1つが例の男の子に興味が湧いため。実は先程、トイレの帰りに応接室で眠る男の子を偶然見つけていた。たぶん歳上であろう彼は、黒髪に端正な顔立ちだった。この世界では中々、黒髪男子には出会えない。
きっと、何か裏があるはずだ。
センセーの為にも、彼とのデートを楽しむことに決めた。
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