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第二章 シアニン帝国~緑士ノ乱平定編~

潰える野望

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「ジンク皇子、貴様は皇帝陛下一族を殺害し私の手により葬られるのだ。
    帝国民が貴様の罪を許しはしまい。そして、私が英雄王として歴史に名を刻むのだ。
    ふははははははははっ!  」

    インディゴ卿が扉の外にまで聞こえる大声で、長々と演説している。

    俺達は今、帝王の間の扉の前にいた。ここに着くまでに、俺は心の中で『いいね』を連打しまくっていた。その結果、仲間は総勢50名ほどにまで膨れ上がっている。

    ラズワルド卿が俺に目配せをした。        

    俺がそれに頷き返す。
    と、同時に扉を押し明け、中に飛び込んだ。瞬時に結界を展開し、皇帝陛下一族とジンク皇子の部隊を包み込む。

    ラズワルド卿が、呆気に取られて動けない青士団を尻目に、インディゴ卿の背後に周り、その首に剣を翳した。   
     仲間の50名が一気になだれ込み、周りの青士団を抑える。

「一歩でも動けば、此奴を切る」
    
    ラズワルド卿はそう言い放った。さらに、部下にインディゴ卿を縛るように言いつけた。

「くっ!!」

    一瞬をついて、インディゴ卿がラズワルド卿の部下を蹴り飛ばし、ラッパを高々と鳴らした。
ラズワルド卿が剣を振りかざす。

「ラズワルド、その剣を下ろせ!  今に、ここに青死団大軍が押し寄せる。私を殺せば奴らを制御できる者がいなくなり、皆殺しだぞ」

    ラズワルド卿が悔しそうに剣を下げた。インディゴ卿に命じられ、その場に跪く。さらに、俺に結界を解くように命じた。俺は頑として聞き入れない。

「まぁ、良い。青死団手勢が到着したらその鮮やかな毛皮を剥いで、ここに飾ってやろう」

    インディゴ卿が俺を睨みながら言った。

    次第に部屋が振動しだした。大群の歩みで城が揺れているのだ。インディゴ卿が勝利を確信し、微笑んでいる。勝者の余裕だろうか、はたまた、自分の手は汚したくないのかもしれない。ラズワルド卿には手を下さず、青死団が来てから捕えさせるようだ。

    勢いよく扉が開いた。青士団が一斉になだれ込んでくる。そして、皆の周りを埋めつくした。

「ラズワルド、後一歩だったな。後一歩で敬愛なる皇帝陛下をお守りできたのに。
    お主はいつも、詰めが甘いのだ。知恵が足らぬとも言えるな。力だけでは勝てぬのだ。
    ジンク皇子とともに謀反に加担したことにして、さらし首にしてやろう。   まぁ、ここで命を落とすお主には、どうでも良いことだがな。
    ふははははははははっ!  」

    インディゴ卿はそう高笑いすると、青士団にラズワルド卿を捕らえるように命令した。暫しの沈黙が流れた。誰も動かない。

「何をしているのだ!さっさと捕らえよ!  」

    インディゴ卿が苛立たしげに怒鳴った。それでも、誰も微動打にしない。

「インディゴを捕らえよ」

    体の芯に響く荘厳な美声が、帝王の間に木霊した。フサロ皇帝陛下の命令に、青士団が一斉に切っ先を、インディゴ卿へ向けた。その場で縛り上げられる。同時にインディゴ卿の側近たちも捕えられた。

「なっ、なんだとっ!!
    こっ、皇帝陛下、お待ちくださいっ!  これは何かの間違いですっ!
    わ、私は……、わ、私目は……」

    事態を飲み込めないインディゴ卿が、あたふたしている。ご自慢の知恵を巡らせ、必死に言い訳を考えているようだ。

「インディゴ見苦しいぞ、お主も誇り高き青士であるならば、罪を認め償え。
    其奴を地下牢へ連れて行け。青士道を大きく踏み外したとは言え、シアニン帝国の礎を築くのに多大な功績を残したのも、また事実。
    最期まで丁重に扱ってやれ」
    
    皇帝フサロが静かにいった。

    それを聞き、インディゴ卿が咽び泣く。

 「私は何処で間違ったのか」
    そう力なく呟いた。

    皇帝陛下を支え礎を築き、帝国を牛耳った男の最期は、余りにも儚いものだった。
    皇帝陛下への尊敬や羨望が、いつしか嫉妬に変わり、澄んだ青をどす黒く呑み込んでいった。
    そこを、ニガレオス帝国皇帝ボン・ブラックに付け込まれたのであった。
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