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第一章 マゼンタ王国~皇女の守護魔獣に転生編~
ピロロピロール姫 (★姫視点)
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私はマゼンタ王国第1皇女のピロロピロールである。
なんでも、色素の御加護を強く受けているとかで、次期国王だと周りが騒いでいる。
私はそんなものに、興味はない。むしろ、御加護だなんだといって、私の努力が蔑ろにされるのも嫌いだ。子供の頃はそういわれる度に剣術や学問に打ち込み、認めさせようとした。おかげで、王国一の素質と技術を兼ね備えていると自負している。
私はお城にいるのが、あまり好きではない。
人々の暮らしに接してこそ、わかることがあるのだ。
度々、抜け出す私を最初は諌めていた周りも、諦めたのか最近は何も言わない。この国で私に敵うものがいないのも、あるのだろうが。
町人も最初こそ緊張した面持ちで対応していたが、今では顔馴染みだ。
串焼きやら、たい焼きなどを食べながら、街の様子を観察する。この一時が、唯一の息抜きなのだ。
まぁ、ついつい、町人同士の諍いに首を突っ込み、沙汰を下してしまうのはご愛嬌であろう。
その日も数名の衛兵を連れて、町を散策していた。本当は一人がいいのだが、マドムがどうしても連れていけと言うので仕方ない。
彼らにとっても、いい勉強になるだろうと自ら納得させる。
馴染みの肉屋から、豪快な笑い声が聞こえた。コロッケが美味いので、直々、立ち寄るのだ。気になったので、覗いてみることにした。
「頼もう」
「これはこれは、ピロロ姫様。ちょうど良いところへお越しくださいました」
「所用で近くまで来たのでな。寄ってみたら何やら楽しそうな笑い声がするではないか。私も混ぜてもらおうと顔をだしたのだ」
屈強な男が、スっと商売人の顔になり対応する。この店のオーナーのヤザワである。豪快さに繊細さを併せ持つ、抜け目のない男だ。
ヤザワは肉屋を営む傍ら色素魔獣の目利きも生業にしていた。その正確さは国内随一と謳われ、王家の守護魔獣選びも任されていた。
私の妹であるヴァイオレッタの守護魔獣を選んだのもこの男だ。
ヴァイオレッタは泣き虫で、すぐ母の後ろに隠れてしまう気弱な少女だった。そんな彼女にヤザワは蛇の色素魔獣をあてがった。
皆が手なずけられないだろうと、反対したのだが、当の本人たちは直ぐに打ち解け、無二のパートナーとなった。
内気で泣き虫だった彼女は、たちまち、自信に漲り意見をはっきり言う皇女となった。
守護魔獣の存在が彼女を安心させたのだろう。ヤザワはそこまで見越して選定したのだ。
その一件を見て、私には守護魔獣など不要だと確信した。最強の私に、そんな者はいらんのだ。
ヤザワは度々、私に色素魔獣を紹介した。尽く、突き返してやった。
今回もヤザワは奥から、1匹の色素魔獣を連れて来た。かわいい、不覚にもそう思った。
「珍しいピロロピロール種です。知性も高いので、姫様のお傍におけば必ずや、役に立つと思います」
若い衛兵が動く。確か、どこぞの貴族の子息だったと思う。ヤザワの名声を知らぬようで、好意を無下にする。手を煩わせまいとの行動のようだが、それをしていいのは私だけだ。
ギロりと睨む。そして、衛兵を叱責した。奴は青ざめて、後ろに下がり跪く。
私はヤザワに謝った。畏まって慌てているふりをしているが、動揺していない。
私の行動を予測していたのだろう。出し抜いてやりたくて、色素魔獣の方をむく。そして、衛兵の非礼を詫びた。
周りがざわつく。狙い通り、豪快な笑い声が響いている。
その喧噪に紛れて魔獣に伝える。
「お前かわいいな。今日からお前は私の守護魔獣だ。よろしくな」
件の色素魔獣がキョトンとしている。私は可愛いと思う気持ちに素直になることにした。愛おしくて、守られるのではなく守りたいという気持ちに。
そして、退屈凌ぎにヤザワの思惑に付き合うことにしたのだ。
なんでも、色素の御加護を強く受けているとかで、次期国王だと周りが騒いでいる。
私はそんなものに、興味はない。むしろ、御加護だなんだといって、私の努力が蔑ろにされるのも嫌いだ。子供の頃はそういわれる度に剣術や学問に打ち込み、認めさせようとした。おかげで、王国一の素質と技術を兼ね備えていると自負している。
私はお城にいるのが、あまり好きではない。
人々の暮らしに接してこそ、わかることがあるのだ。
度々、抜け出す私を最初は諌めていた周りも、諦めたのか最近は何も言わない。この国で私に敵うものがいないのも、あるのだろうが。
町人も最初こそ緊張した面持ちで対応していたが、今では顔馴染みだ。
串焼きやら、たい焼きなどを食べながら、街の様子を観察する。この一時が、唯一の息抜きなのだ。
まぁ、ついつい、町人同士の諍いに首を突っ込み、沙汰を下してしまうのはご愛嬌であろう。
その日も数名の衛兵を連れて、町を散策していた。本当は一人がいいのだが、マドムがどうしても連れていけと言うので仕方ない。
彼らにとっても、いい勉強になるだろうと自ら納得させる。
馴染みの肉屋から、豪快な笑い声が聞こえた。コロッケが美味いので、直々、立ち寄るのだ。気になったので、覗いてみることにした。
「頼もう」
「これはこれは、ピロロ姫様。ちょうど良いところへお越しくださいました」
「所用で近くまで来たのでな。寄ってみたら何やら楽しそうな笑い声がするではないか。私も混ぜてもらおうと顔をだしたのだ」
屈強な男が、スっと商売人の顔になり対応する。この店のオーナーのヤザワである。豪快さに繊細さを併せ持つ、抜け目のない男だ。
ヤザワは肉屋を営む傍ら色素魔獣の目利きも生業にしていた。その正確さは国内随一と謳われ、王家の守護魔獣選びも任されていた。
私の妹であるヴァイオレッタの守護魔獣を選んだのもこの男だ。
ヴァイオレッタは泣き虫で、すぐ母の後ろに隠れてしまう気弱な少女だった。そんな彼女にヤザワは蛇の色素魔獣をあてがった。
皆が手なずけられないだろうと、反対したのだが、当の本人たちは直ぐに打ち解け、無二のパートナーとなった。
内気で泣き虫だった彼女は、たちまち、自信に漲り意見をはっきり言う皇女となった。
守護魔獣の存在が彼女を安心させたのだろう。ヤザワはそこまで見越して選定したのだ。
その一件を見て、私には守護魔獣など不要だと確信した。最強の私に、そんな者はいらんのだ。
ヤザワは度々、私に色素魔獣を紹介した。尽く、突き返してやった。
今回もヤザワは奥から、1匹の色素魔獣を連れて来た。かわいい、不覚にもそう思った。
「珍しいピロロピロール種です。知性も高いので、姫様のお傍におけば必ずや、役に立つと思います」
若い衛兵が動く。確か、どこぞの貴族の子息だったと思う。ヤザワの名声を知らぬようで、好意を無下にする。手を煩わせまいとの行動のようだが、それをしていいのは私だけだ。
ギロりと睨む。そして、衛兵を叱責した。奴は青ざめて、後ろに下がり跪く。
私はヤザワに謝った。畏まって慌てているふりをしているが、動揺していない。
私の行動を予測していたのだろう。出し抜いてやりたくて、色素魔獣の方をむく。そして、衛兵の非礼を詫びた。
周りがざわつく。狙い通り、豪快な笑い声が響いている。
その喧噪に紛れて魔獣に伝える。
「お前かわいいな。今日からお前は私の守護魔獣だ。よろしくな」
件の色素魔獣がキョトンとしている。私は可愛いと思う気持ちに素直になることにした。愛おしくて、守られるのではなく守りたいという気持ちに。
そして、退屈凌ぎにヤザワの思惑に付き合うことにしたのだ。
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