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決戦
決戦-4
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拳をぶつけ合った衝撃の余波で周囲の雲が吹き飛ぶ。
片や魔法という人では操ることが不可能に近い技法を扱い、災害獣の力を惜しみなく精神まで含めてその存在の全てに宿すもの。
片や人を辞め、5万年もの時間を費やし更に限界を超え続け災害獣の力を十全に操りしもの。
そのぶつけ合った威力はほぼ互角。事実としてぶつけ合った拳にどちらにも傷がついていなかった。そして二人の力の源は、どちらも二人からしたら無限にも等しい力の持ち主。戦力が同じ、供給源も同じ量ともなれば戦いは終わらない。
それが分かっているからこそローザリッサは笑い、シアは冷や汗を流し焦り顔になる。
「私の方が優勢なようだな。お前の力は一時的な強化が混じっているだろう?」
「……ふふ、そうかもしれないわね」
ローザリッサの指摘は正しい。フィーアの第一となる眷属であるシアにはそれが分かっている。転移される際に強化された分でようやく対等なのだと。
だがそれだけで戦いの決着とはならない。まだどちらも一手目を叩きつけただけだ。
「けれど残念。ここはフィーア様の支配地。あなたの入り込む隙間は無いわ」
「むっ!?」
ローザリッサの背後から鋭い何かが飛び、そしてローザリッサは感知して回避した。それには邪悪な魔力がシアに及ばないまでも込められており、ローザリッサと言えど不意打ちであれば多少は傷つくものがあった。
そしてそれはシアの背後まで飛ぶと止まり、その姿を人の形にした。
その姿はまるでシアをさらに幼くした者、言うなればシア妹のような者であると予想したローザリッサだったが、それは間違いではなかった。
「シア姉さま」
「リサ、あなた達にも協力してもらうわよ」
「もちろんです。フィーア様の敵は私たちの敵」
いつの間にかローザリッサを囲むように似たような顔をした者たちが浮かんでいた。ローザリッサが感知できなかったわけではない。出てくるなら潰すつもりだったが、出てこないなら何もしない予定だった。
戦いの始めの衝突で出てこなかったためシアは彼らを連れて戦うつもりはなかったと判断していたのだが、不意打ちで扱う予定だったらしい。
随分と甘い算段だ。目にもくれない程度というのがどういう意味なのか理解できていないようだ。
「……新たな眷属だな」
「そう。貴方みたいな一人ぼっちではないわ。そして今の私とあなたの力が同じなら、この子達の分で私たちの方が上になる」
リサと呼ばれた眷属や他の者たちも魔力を展開し始めた。それらは完全に同質のものであり、同調してその影響力を強めていく。
ローザリッサはそこで気づく。シアとリサ達は別物だと。シアの魔力はフィーアの力を源にしているが、同質のものではない。あくまで混じっているだけなのだ。それこそローズと赤い羽根のように、ベースとなる魔力に災害の力が混じっているのだ。
しかしリサ達は違う。完全に同質というのは混じっていないということだ。それが示すのは……シアにジルクの意思が残っているという事実。
「ジルク」
「つぶれて」
同調した魔力はローザリッサを閉じ込めるように球体となり。押し潰すように急速に小さくなっていく。
今のシアとローザリッサが同じだけの力しか持たないというならそこにプラスアルファされた威力には耐え切れない。
そのはずだった。
「今のお前と私の戦力が同じ?。面白い冗談だったな」
もしシアとローザリッサの戦力が同じなら、の話だが。
ローザリッサは自身の魔力を槍の形状に変化させ、一線だけ斬り払った。それだけで球体は切り裂かれ、中から何も変わっていないローザリッサが現れた。
「使われるだけのお前と使い切れる私の力が同じなわけがないだろう」
「何を……!」
さらにもう一線斬り払い、周囲に蔓延していた同調している邪悪な魔力が霧散していく。それを見て霧散していく魔力を回収しようとリサ達が動くも、霧散した魔力は全て燃えていっていた。
「ましてやあのヤギと赤い羽根の力の差は私とお前以上はあるだろうさ。ドラゴンが食糧としているオークに恐れをなすとでも思うのか?」
「侮辱は万死に値すると言った」
ローザリッサの背後に位置していた眷属が一瞬で背中に近づき、魔力でできた鋭いナイフを突き立てる。
しかしそのナイフの刃は溶け、ローザリッサには届いていなかった。一瞬以下の時間で魔力を槍にしていたモノを剣に変え、ナイフを突き立てた眷属を上半身と下半身に別つ。
さらに切られた眷属は燃え、火柱を立てて墜落していった。
「ふんっ。まぁこんなものだろう。つまりは主の格は違う上、受け取った力は扱いきれるのかという差だ。災害から見ても災害のような力を持つ赤い羽根の力を受け取り扱いきる私と、災害の中では強い程度の災害の力に溺れるお前。力の差は明白だ」
片や魔法という人では操ることが不可能に近い技法を扱い、災害獣の力を惜しみなく精神まで含めてその存在の全てに宿すもの。
片や人を辞め、5万年もの時間を費やし更に限界を超え続け災害獣の力を十全に操りしもの。
そのぶつけ合った威力はほぼ互角。事実としてぶつけ合った拳にどちらにも傷がついていなかった。そして二人の力の源は、どちらも二人からしたら無限にも等しい力の持ち主。戦力が同じ、供給源も同じ量ともなれば戦いは終わらない。
それが分かっているからこそローザリッサは笑い、シアは冷や汗を流し焦り顔になる。
「私の方が優勢なようだな。お前の力は一時的な強化が混じっているだろう?」
「……ふふ、そうかもしれないわね」
ローザリッサの指摘は正しい。フィーアの第一となる眷属であるシアにはそれが分かっている。転移される際に強化された分でようやく対等なのだと。
だがそれだけで戦いの決着とはならない。まだどちらも一手目を叩きつけただけだ。
「けれど残念。ここはフィーア様の支配地。あなたの入り込む隙間は無いわ」
「むっ!?」
ローザリッサの背後から鋭い何かが飛び、そしてローザリッサは感知して回避した。それには邪悪な魔力がシアに及ばないまでも込められており、ローザリッサと言えど不意打ちであれば多少は傷つくものがあった。
そしてそれはシアの背後まで飛ぶと止まり、その姿を人の形にした。
その姿はまるでシアをさらに幼くした者、言うなればシア妹のような者であると予想したローザリッサだったが、それは間違いではなかった。
「シア姉さま」
「リサ、あなた達にも協力してもらうわよ」
「もちろんです。フィーア様の敵は私たちの敵」
いつの間にかローザリッサを囲むように似たような顔をした者たちが浮かんでいた。ローザリッサが感知できなかったわけではない。出てくるなら潰すつもりだったが、出てこないなら何もしない予定だった。
戦いの始めの衝突で出てこなかったためシアは彼らを連れて戦うつもりはなかったと判断していたのだが、不意打ちで扱う予定だったらしい。
随分と甘い算段だ。目にもくれない程度というのがどういう意味なのか理解できていないようだ。
「……新たな眷属だな」
「そう。貴方みたいな一人ぼっちではないわ。そして今の私とあなたの力が同じなら、この子達の分で私たちの方が上になる」
リサと呼ばれた眷属や他の者たちも魔力を展開し始めた。それらは完全に同質のものであり、同調してその影響力を強めていく。
ローザリッサはそこで気づく。シアとリサ達は別物だと。シアの魔力はフィーアの力を源にしているが、同質のものではない。あくまで混じっているだけなのだ。それこそローズと赤い羽根のように、ベースとなる魔力に災害の力が混じっているのだ。
しかしリサ達は違う。完全に同質というのは混じっていないということだ。それが示すのは……シアにジルクの意思が残っているという事実。
「ジルク」
「つぶれて」
同調した魔力はローザリッサを閉じ込めるように球体となり。押し潰すように急速に小さくなっていく。
今のシアとローザリッサが同じだけの力しか持たないというならそこにプラスアルファされた威力には耐え切れない。
そのはずだった。
「今のお前と私の戦力が同じ?。面白い冗談だったな」
もしシアとローザリッサの戦力が同じなら、の話だが。
ローザリッサは自身の魔力を槍の形状に変化させ、一線だけ斬り払った。それだけで球体は切り裂かれ、中から何も変わっていないローザリッサが現れた。
「使われるだけのお前と使い切れる私の力が同じなわけがないだろう」
「何を……!」
さらにもう一線斬り払い、周囲に蔓延していた同調している邪悪な魔力が霧散していく。それを見て霧散していく魔力を回収しようとリサ達が動くも、霧散した魔力は全て燃えていっていた。
「ましてやあのヤギと赤い羽根の力の差は私とお前以上はあるだろうさ。ドラゴンが食糧としているオークに恐れをなすとでも思うのか?」
「侮辱は万死に値すると言った」
ローザリッサの背後に位置していた眷属が一瞬で背中に近づき、魔力でできた鋭いナイフを突き立てる。
しかしそのナイフの刃は溶け、ローザリッサには届いていなかった。一瞬以下の時間で魔力を槍にしていたモノを剣に変え、ナイフを突き立てた眷属を上半身と下半身に別つ。
さらに切られた眷属は燃え、火柱を立てて墜落していった。
「ふんっ。まぁこんなものだろう。つまりは主の格は違う上、受け取った力は扱いきれるのかという差だ。災害から見ても災害のような力を持つ赤い羽根の力を受け取り扱いきる私と、災害の中では強い程度の災害の力に溺れるお前。力の差は明白だ」
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