8 / 45
冒険者ジルク
冒険者ジルク-4
しおりを挟む
何か戦う方法がないかと考えながら歩き、次の階層へ上る階段に足を乗せようとした瞬間、一つ考えが思いついた。
「生命力による身体強化ならどうだ?」
この世界には生命体が持つ力はいくつかある。魔力、魂、精神力、そして―生命力。
どれも似たような使い方をするとは言われているが、どれか一つしか使えないのが世の常だと言われている。
だがやはり世の常から外れた者もいる。俺もほんの少しだけ外れた一人だ。
使えるのは生命力を少しだけ。通常は魔力を使っており、そちらの方が遥かに多いうえ使い方も上手いため使う機会はほぼなかった。
だが今はそれだけの希望でも十分だ。考えながら必死に使えば使い方は上手くなっていくものなのだから。
息を整えて腹の下あたりに生命力を集める。そして全身へと力を行き渡らせ、従来の魔力による身体強化と同様に身体に載せていく。
「どうだ?」
髪に手を当ててみる。さっきまで触っていた髪とは長さも、髪質も全く変わっていない。
これなら使える。
「少しずつ階段を上っていこう。奴が覗いている可能性は否定できないからな」
一歩ずつ階段を上っていく。生命力による強化の訓練を一気に進めながら。
魔物に対抗できるようになるには間に合うか分からないが、何もないよりかはマシだ。
「クソッ!」
俺がそう言う風に対策するのが分かっていたかのように、階段はすぐになくなり上層が見えてしまった。
そしてミノタウロスがいた時と同様に、広間が広がっていた。同じことが二回続いたということは奴がやりたいことというのはこういうことなのだろう。足は踏みいれず、階段の上がり切る寸前で様子を確かめる。
戦闘を繰り返し、魔術を使わせて感性を近づけさせる。死と隣合わせである以上、使わざるをえない。
そういう筋書きなのだろう。
そうなると広間には魔物が居てしかるべきだ。さっきのミノタウロスのように。
だが魔物の様子は見当たらない。それが示すのは一つ。
「奇襲か」
入った瞬間に奇襲をしかけ、深手を負わせるつもりなのだろう。そうすれば回復魔術を使わざるをえず、そのために距離をとらなければならなくなる。
足が速い魔物ならそこで距離がとれずに死ぬ、だから強化魔術を使う。そこまでの予想を踏まえるなら対策は簡単だ。
「奇襲を防げばいいな」
生命力で身体能力や身体強度を強化し、俺は広間に踏み入った。同時に直情から魔物の気配が現れる。
前方へとダッシュするように走り抜ける。そして振り返って魔物を見据えた瞬間―
俺はサキュバスの魅了に囚われた。
「生命力による身体強化ならどうだ?」
この世界には生命体が持つ力はいくつかある。魔力、魂、精神力、そして―生命力。
どれも似たような使い方をするとは言われているが、どれか一つしか使えないのが世の常だと言われている。
だがやはり世の常から外れた者もいる。俺もほんの少しだけ外れた一人だ。
使えるのは生命力を少しだけ。通常は魔力を使っており、そちらの方が遥かに多いうえ使い方も上手いため使う機会はほぼなかった。
だが今はそれだけの希望でも十分だ。考えながら必死に使えば使い方は上手くなっていくものなのだから。
息を整えて腹の下あたりに生命力を集める。そして全身へと力を行き渡らせ、従来の魔力による身体強化と同様に身体に載せていく。
「どうだ?」
髪に手を当ててみる。さっきまで触っていた髪とは長さも、髪質も全く変わっていない。
これなら使える。
「少しずつ階段を上っていこう。奴が覗いている可能性は否定できないからな」
一歩ずつ階段を上っていく。生命力による強化の訓練を一気に進めながら。
魔物に対抗できるようになるには間に合うか分からないが、何もないよりかはマシだ。
「クソッ!」
俺がそう言う風に対策するのが分かっていたかのように、階段はすぐになくなり上層が見えてしまった。
そしてミノタウロスがいた時と同様に、広間が広がっていた。同じことが二回続いたということは奴がやりたいことというのはこういうことなのだろう。足は踏みいれず、階段の上がり切る寸前で様子を確かめる。
戦闘を繰り返し、魔術を使わせて感性を近づけさせる。死と隣合わせである以上、使わざるをえない。
そういう筋書きなのだろう。
そうなると広間には魔物が居てしかるべきだ。さっきのミノタウロスのように。
だが魔物の様子は見当たらない。それが示すのは一つ。
「奇襲か」
入った瞬間に奇襲をしかけ、深手を負わせるつもりなのだろう。そうすれば回復魔術を使わざるをえず、そのために距離をとらなければならなくなる。
足が速い魔物ならそこで距離がとれずに死ぬ、だから強化魔術を使う。そこまでの予想を踏まえるなら対策は簡単だ。
「奇襲を防げばいいな」
生命力で身体能力や身体強度を強化し、俺は広間に踏み入った。同時に直情から魔物の気配が現れる。
前方へとダッシュするように走り抜ける。そして振り返って魔物を見据えた瞬間―
俺はサキュバスの魅了に囚われた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【完結】元・おっさんの異世界サバイバル~前世の記憶を頼りに、無人島から脱出を目指します~
コル
ファンタジー
現実世界に生きていた山本聡は、会社帰りに居眠り運転の車に轢かれてしまい不幸にも死亡してしまう。
彼の魂は輪廻転生の女神の力によって新しい生命として生まれ変わる事になるが、生まれ変わった先は現実世界ではなくモンスターが存在する異世界、更に本来消えるはずの記憶も持ったまま貴族の娘として生まれてしまうのだった。
最初は動揺するも悩んでいても、この世界で生まれてしまったからには仕方ないと第二の人生アンとして生きていく事にする。
そして10年の月日が経ち、アンの誕生日に家族旅行で旅客船に乗船するが嵐に襲われ沈没してしまう。
アンが目を覚ますとそこは砂浜の上、人は獣人の侍女ケイトの姿しかなかった。
現在の場所を把握する為、目の前にある山へと登るが頂上につきアンは絶望してしてしまう。
辺りを見わたすと360度海に囲まれ人が住んでいる形跡も一切ない、アン達は無人島に流れ着いてしまっていたのだ。
その後ケイトの励ましによりアンは元気を取り戻し、現実世界で得たサバイバル知識を駆使して仲間と共に救助される事を信じ無人島で生活を始めるのだった。
※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「ノベリズム」さんとのマルチ投稿です。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
サクリファイス・オブ・ファンタズム 〜忘却の羊飼いと緋色の約束〜
たけのこ
ファンタジー
───────魔法使いは人ではない、魔物である。
この世界で唯一『魔力』を扱うことができる少数民族ガナン人。
彼らは自身の『価値あるもの』を対価に『魔法』を行使する。しかし魔に近い彼らは、只の人よりも容易くその身を魔物へと堕としやすいという負の面を持っていた。
人はそんな彼らを『魔法使い』と呼び、そしてその性質から迫害した。
四千年前の大戦に敗北し、帝国に完全に支配された魔法使い達。
そんな帝国の辺境にて、ガナン人の少年、クレル・シェパードはひっそりと生きていた。
身寄りのないクレルは、領主の娘であるアリシア・スカーレットと出逢う。
領主の屋敷の下働きとして過ごすクレルと、そんな彼の魔法を綺麗なものとして受け入れるアリシア……共に語らい、遊び、学びながら友情を育む二人であったが、ある日二人を引き裂く『魔物災害』が起こり――
アリシアはクレルを助けるために片腕を犠牲にし、クレルもアリシアを助けるために『アリシアとの思い出』を対価に捧げた。
――スカーレット家は没落。そして、事件の騒動が冷めやらぬうちにクレルは魔法使いの地下組織『奈落の底《アバドン》』に、アリシアは魔法使いを狩る皇帝直轄組織『特別対魔機関・バルバトス』に引きとられる。
記憶を失い、しかし想いだけが残ったクレル。
左腕を失い、再会の誓いを胸に抱くアリシア。
敵対し合う組織に身を置く事になった二人は、再び出逢い、笑い合う事が許されるのか……それはまだ誰にもわからない。
==========
この小説はダブル主人公であり序章では二人の幼少期を、それから一章ごとに視点を切り替えて話を進めます。
==========
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
境界線のモノクローム
常葉㮈枯
ファンタジー
世界は、白と黒に分たれている。
それぞれ文化が独立した、数多の世界を包括する"白の世界"。
混沌とした荒廃と、砕けた鏡の大地が何処までも続く"黒の世界"。
白の世界に生きる者達が抱えた負の感情は、黒の世界で新たに生を受ける。生まれた命はやがて"鏡像"と呼ばれた。
白の世界の者達は、ヒトの心の汚い部分から生まれた"偽物"の鏡像を忌み嫌う。
鏡像はそんな"本物"達と白の世界そのものを怨望し、羨望し、渇望し、鏡を通して白と黒の境界を超えてヒトを喰らう。
白の世界を守る種族・守護者として生を受けたシリスとヴェルの双子の姉弟は、見習いとしての最終任務を命じられた。
外の世界での簡単な視察任務。それを終えて、初めて見習いは正式に守護者を名乗ることができる。
任じられたのは平和な街。
鏡像はまだ少なく、ヒト同士の争いもない。未熟な見習いには格好の任地。
期限は3日。
快活だが、向こう見ずで体が先に動く姉。
横着だが、勘が良く機転の効く弟。
お互いを補い合うことは誰よりも自信がある。
だからきっと、今回の任務も大きなトラブルもなく終わりを迎える
はず、だった───。
*カクヨム、なろう、ノベプラでも掲載中です。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
竜焔の騎士
時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証……
これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語―――
田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。
会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ?
マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。
「フールに、選ばれたのでしょう?」
突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!?
この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー!
天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる