転生先は小説の‥…。

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第十四章 王が住まう場所

敵認定ー②

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「・・・気が付かれましたか。ご当主様、ご気分は如何でしょう」

「・・・・・・ああ、ハイデか。大丈夫だ・・・が、?」

「はっ。多勢に無勢の上、我らの存在が知られてはまずいと思い気を失わせる薬を散布致しました。無毒ですので体に害はございません」

「・・・ファーレンの薬か? 恐ろしいな。それにしてもよくもまあ、これだけの人数を相手に。で、効果時間は?」

「一時ほど。個人差はありますがそう長くはありません。そのうち目を覚ますかと。如何致しましょう、眠らせましょうか?」

「ふむ。・・・逆心者どもは?」

「ご当主様、既に捕縛済みです」

「そうか。ライオネルよくやった。そやつらはそのまま眠らせておけ。後で尋問する。だがその前にお前達、誰の指示でここに来た?」

「お嬢様ですが、ご当主様の危険を予測なさったはお嬢様でございました。それでーーーーーーーーーーーー邸に侵入したのですが、情けないことに侵入経路を見失い、外に出ることも連絡を取ることも出来ず閉じ込められた状態です」

「侵入経路がか? う・・・・・む。あの子は大人しく待っていると思うか?」
「あ・・・それは、何とも・・・」

「機動力の高い方なので、時間の問題かと」

「はぁ、時折、振り切った行動に出るからな、あの子は。むむむ、アレはそのためのお目付け役なのだが、何をやっておるのだ」

「(チラッ)・・・・・」

「(チラッ)・・・・・」

「ああ、もうよい。時間が惜しい。仕方がない。ライムフォード殿下にお目覚めいただくしかないな。事情を説明しお前達の酌量を願わねばな。殿下の所有邸に無断侵入と薬を使用したのだ。とはいえ殿下であれば気になさらぬが、まあ体裁は必要だ」








ーーーーーーーーー

ーーー魔法術を解術し邸に侵入したレティエル達は、中庭で忙しなく動くライオネル達と合流した。


「え? 侵入経路ですか? んー、建物から魔力を感じたので吸っちゃったら普通に入れましたわ。うふふ、お陰で魔力た~んまり。お腹いっぱいですわ」

「おお、そうか・・・ん? お腹一杯??」

「義父上、レティは元気一杯と言いたかったのです」

「・・・・・・まあよい。ここは殿下が所有なさる邸だ。問題がなければそれでよい・・・レティエル、なぜ目を反らす?」

「・・・・・・オホホ、嫌ですわ、お父様。気のせいですわ。オホホ。あっ、ほらほらハイデ、皆さまのご様子を見に行きましょう。ささ、行くわよ!」

「・・・・・・ランバード、説明せい」

「義父上、何も問題ございません。魔法陣は肝心の魔力が底を尽き、作動停止しました。単なる魔力切れです。ええ、。ふふ、お陰で手持ちの空カラ魔石も満杯です。元は充分取れました」

「・・・相分かった。魔力切れか。そういうことにしておこう」

「はい、魔力が底をついたのは事実ですから。・・・それにしても、個人の邸にしては常軌を逸する仕掛けですね」

「殿下だろうか?」

「いえ、処罰された前所有者と考えるのが妥当かと。魔法術も特異ですし、かなり高度な他国の技術ではないでしょうか。精査してみないと確かなことは申せませんが、敷地内を囲繞した魔法術は無人を装う認識阻害だと考えられます。しかも邸の中には迷路の幻影術。侵入者を捕らえるのに迷路を選ぶ感覚はよくわかりませんが・・・。そういえば、前所有者の趣味は狩猟だとか。ふふ、何を狩っていたのか怪しさを感じますが、邸の中での出来事は知りようがありませんし」

「死人に口なしか。まあ、よいわ。・・・外の様子は?」

「静かなものです。伏兵もいません。・・・隠匿術を使われていなければですが」

「うむ、それもこれから聞き出せば自白剤飲ませろよかろう」

「お任せください。ハイデの調合は秀逸です」



「それにしても比較的王都に近い場所とはいえ、夜会当日に視察を行うのは違和感しかありません。しかも年寄り公は不参加となれば。これでは仕組まれていたと勘繰られても仕方ありませんね」

「視察は仕組まれていたとみるか?」

「はい。仕組まれていたかと。・・・義父上これをお読みください」

・・・・・

・・・・

・・・

・・



遠くで人の話声がする。

夢現のライムフォードでは語る内容まで把握できない。漠然と耳で音を拾う状態だった。段々と複数の声音は大きくなる。雑多な音が少し騒がしい。

だが、雑多な音の中に慣れ親しんだ声を聞き取ったライムフォードは慕わしい感情が揺さぶられ、朧気な意識がゆらゆらと揺れ動いた。


『仕組まれていたかと』

薄ぼんやりなライムフォードは、あたかも声音に導かれたように記憶の渦に引き込まれていく。

『仕組まれていた』

そう仕組んだとライムフォードは思い出していた。




「わっ、お義兄様、殿下に何を飲ませてもしや自白剤?ますの? それ不敬では・・・」

「ふふ、殿下は何もかも抱え込む性質だからね。少しその負担を軽くしてあげたくて気分が少々昂る薬だよ。高揚すると、多少は口が軽くなるからね。ふふ、時間短縮だよ。半覚醒の今なら使用されたことすら気付かないよ」

「えぇーーー。(鬼かよ)」






「魔素研究施設の視察を提案したのは誰です」

「うわお。(悪魔のささやき。怖っ)」

ランバードがライムフォードに耳打ちするように。尋問者の声だけを響かせるために耳元で囁く。

「し・・・さ・・つは・・・・」

ライムフォードは言葉に誘導され記憶を呼び起こす。


『皇帝の機嫌をとるのは癪に障るが、こればかりは王妃の約定がある以上致し方あるまい。ライムフォードよ。兄の尻拭いをお前がやれ。それもこれも下らぬ王座争いを始めた母親達が原因だ』

『はい、陛下。・・・あの、お教え下さい。どうしてレティエル嬢の婚約者を挿げ替えなかったのでしょうか。私かもしくは異母弟と婚約を結び直せば少なくとも帝国への賠償責任は生じませんでした。さすればこのような無茶な依頼などなかった』

『・・・守護神のお告げよ。レティエルには別の使い道がある』

『な、何を仰っているのでしょうか、父上』

『よいな、これは命令だ』


『特に第四皇子殿下はライムフォード殿下と親睦を深めたいとお望みです。折角手に入れた研究施設にお招きなされば、皇子殿下も大層お喜びなさるでしょう。あの場所は狩猟を愉しむために設えたと聞きます。近場に湖畔もあり景観が宜しいかと。もてなすに適しております。なに、公爵達に同行させれば上手く立ち回るでしょう。はは、ご心配には及びません』

『ええ、確かにあの地は良いでしょう。ですがヴァンダイグフ何もその日にしなくとも』


『毒を食らわば皿までですぞ、殿下』

『わかっています、公』

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