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第十四章 王が住まう場所
一休み
しおりを挟む「お義兄様、作業の邪魔はしませんから傍で見ててもいいですか? わたくしお義兄様が無理をするのではないかと心配なのです」
オネダリはカワイアザト系で決めるのがコツ。きゅるん、とな。
これだけで義兄はレティエルのお願いを断ることはできなくなるのだ。ふっふっふっ。
「うわぁ…お嬢様…」
こら、そこ。両腕を摩らないの。
さてさて。作業場と化した寝室にお邪魔しま~す。わくわく。
「うぇ…ナニコレ…」
扉を開けてみれば、我が目を疑う惨状にちょっと引いた。
ベットの上には本や巻物が散乱してて、至るところに空き瓶が。あ、回復薬の瓶ね。ナニカの角とか爪とか怪しげな色した液体の入った瓶だとか。奇妙な物体が所狭しと置かれてる。うえ、あれって燃えカスなの? え…黒っぽいナニカが見える。
「あ、お部屋きれいに使われてますね~。これなら後片付けも楽です~」
は?! これでキレイなの?!
義兄…いやなにその勝ち誇った顔…
ちょっとレティエルは奇麗好きなんだからね。ちゃんとお掃除してよ。
足の踏み場もないのでジェフリーが片付けしてくれてる間にちょこっと雑談を。
「お義兄様、空を飛ぶものには何があります?」
王国は勿論、周辺諸国で飛行機みたいな重航空機は見たことも聞いたこともないからね。存在しないのって知ってた。でも、気球とかグライダーな軽航空機ぐらいあってもいいんじゃない? と思ってた。
「飛行型の魔物だね」
くっ、そうきたか。
うん、わかってた。薄々そうじゃないかなって、思ってた。
この世界、魔法ありありなのに箒でお空を飛ぶファンタジー界の鉄板がない。
だから、喋る黒猫と会話しながら宅配なんてしないしできない。飛ぶボールを奪い合って得点を競うチームバトル戦もあり得ない。うう、夢がないわー。
「お空が飛べたら夢が広がると思うのですが…ないのですね」
鳥ちゃんになりたい人間がコンテスト開いたりしないの? 盛り上がるよ?
それで実用化できれば勿怪の幸いじゃん。
「お嬢様~空をホイホイ飛んでると恰好の魔物の餌になっちゃいますよ~」
俺の野心を読んだのか、にやにやのにやつき顔で言われるとムッとしちゃう。
が、その内容は笑えない。
ヒッ〇コック映画かよ。怖いわ。
でも魔物を寄せ付けない王国ならいけるかも…。
「ふふ、レティ、飛行技術は失われた技術だよ。嘗てこの大陸を支配していた文明が編み出した技術だと主張する研究者がいるよ」
「机上の空論、御伽噺だ~って夢のない学者もいますよね~」
「ふぁー、失われた技術!」
うわお! キタキタ、ロストテクノロジー! ちょっと心擽る響き! 冒険の旅に出たい気持ちになるね。
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