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第十三章
ライムフォードー①
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以前からの疑問、叔父であるジオルドの事件について母に尋ねた。今なら王妃位を目前にして気が大きく、油断しているのではと甘い期待をして。
「母上は叔父上の事件をどう思われますか」
突然の話題変えに目を瞬かせたものの、いきなりね、と返答は自然体だった。
「事件を聞いて驚きました。まさか彼がそのような恐ろしい計画を企てるとは思えず、陥れられたと疑いました。ですが騎士団の調査結果は彼の犯行を裏付けたでしょう? 慕っていた貴方には辛い現実ですが貴方は国政を担う立場になるのです。乗り越えなさい。良いですね」
「母上、私は大丈夫です。ですが、どうしてもあの叔父上がランバードの暗殺を企てたとは思えなくて、一度叔父上と話がしたいのです」
一瞬、母の眉間に力が入ったのを見逃さない。
「‥‥ジオルド殿は、聞けば心を病み凶行を思い立ったとか。今は治療が優先ですので許可は下りないでしょう」
暗に治療の邪魔と言われた。
「ジオルド殿とザックバイヤーグラヤス公爵はご友人でした。そのご子息を歯牙にかけたとあれば、何かわたくし達では思いもよらない確執があったのかも知れません。幾ら彼が王位継承権を破棄し王家から遠ざかったといえ、もう少し心を掛けるべきでしたね。もう今となっては遅いでしょうが。‥‥彼が凶行を企てた理由は妄言だと言います。公爵も堪らないでしょうね」
嘘は言っていないと思う。母の関与の可能性はほぼないとみていいだろう。
(ですが侯爵はどうでしょう)
「そうそう、ジオルド殿の領地をエリックが賜ります。領地経営の手腕に長けていたのでしょうね。彼の地は潤っているそうよ。ですから下手な官吏を管理人に据え置くのは勿体ないでしょう? ふふ、ローデリアのお相手に相応しい領地です」
これにはローデリアも驚いて目をぱちくりとさせていた。
「母上、それは誠でしょうか。あ、いえ、知らない話でしたので驚いたのです。まさかそのように譲渡が決定されていたとは思いもよりませんでした。ですがそのような高待遇。家臣達が黙っていないでしょう」
(まさか父上がそのような贔屓を。これでは貴族の反発心を煽るだけではありませんか。エリックもヴァンダイグフも功績らしい功績を上げてはいません、なのに財源の潤う領地を…‥あ、ローデリアをダシに、ヴァンダイグフに利便を図ったのですか)
姑息さが腹立たしくて、奥歯をグッと噛む。
「ええ、みな快く賛同してくれました。序でに教えておきますが、罪人となったジオルド殿の私財は王家に没収され、新たな領主となるエリックは、貴方の後ろ盾となります。勿論、財力面ですよ。彼の者に発言権は与えません。貴方もそれを覚えておきなさい。何か見返りを要求しても安易に応えないでね、良いですかライムフォード」
(成程、私の財源にねえ。叔父上は王家と距離を取り後ろ盾とはなり得ませんでしたが、ですがそれだけで陥れるものでしょうか)
何か裏があると思うも、事は終わってしまった。
遅れを取った自覚はある。
言い訳をする気はないが、自身の研究や神殿の不祥事、その以前はランバードと共に王妃が起こそうとした外患誘致の後始末に翻弄された。目先の功績に飛びついたのは自分だ。そのせいで母や侯爵の暗躍を野放しにしてしまった。功績を積むためとは言え忙殺された過去が恨めしい。所詮、己の力が足りないのだ。
ライムフォードは自分の盤石な地盤作りどころではなくなった。
父と同じく帝国との関係強化路線。魔力保持者容認派だと周知させたいのに悉く邪魔が入る。陛下にしろ叔父上にしろ、ザックバイヤーグラヤスにしろ、悉く帝国派の頭が抑えられた。
ライムフォードは、王国の魔素不足問題に頭を抱えていた。そこに母達の権力争いに、次から次へと生じる諸問題。翻弄され魔素に関する研究が出来ず内心苛立っていた。
そしてその彼に追い打ちをかけるような、帝国使節団の訪問が待っている。そう問題児の訪問が待ち受けるのだ。
ライムフォードは自分が呪われているのではないかと真剣に考えた。それほど彼を追い詰める使節団。くそと舌打ちしたくなるのを堪えていた。
帝国使節団。
この時期に。きっと何か仕掛けてくるとライムフォードは予想している。
皇帝からレティエルの婚約破棄に対して賠償の猶予を貰ったものの、あちらの狙いは国防技術。それだけでも大事なのに、今度はラムドが殺された。
(ラムドの遺体は火傷で損傷が酷く識別不可能な状態でした。ですので私はラムドが生きていると信じています。ですが、彼の暗殺を企てた首謀者として叔父上は罪人にされてしまいました)
後手後手に回った感は否めない。
ラムドは死者である。そして公爵は表立って謹慎中で、彼等を頼れない。
国家の秘匿技術をそう易々と渡せない。おまけにその国防、神殿と王家の主張は、守護神の加護によるものと公式発表されたものだ。人為的な力ではなく神の加護と人外の力を強調していた。
魔法術か魔道具か、何らかの技術だとは予想を立てても、その痕跡が見当たらない。こうなると神殿の主張が正しいのかと気も迷う。一刻もその技術を解明しなければ、王国は帝国に呑まれる。
ライムフォードはそれでも良いかと思いつつも、母や妹を思うと容易に頷けない。占領された国の王族の末路は悲惨。自治権を与えると言われても非公式の場での口約束。しかも相手はあの皇帝、反故にしそうで鵜呑みにできないでいた。ライムフォードは、守りたい者である母と妹に視線を向けた。
母達は事の重大さを理解しているのかと胡乱な目で見てしまう。
「母上は父上から何かお聞きになられたのでしょうか。叔父上の凶行は帝国を刺激してもおかしくない事柄でした。王国では知られていないようですがランバードは帝国貴族籍を取得しております。それに若手の魔道具技師として皇帝陛下の覚え目出度き人物でした。対応を間違えれば帝国が口出してこないとも言い難く。父上も表立って対策をなさっていない。‥‥母上は何かお聞きではございませんか? もうじき帝国の使節団が到着します。王子として父上の思惑を知っておきたいのですが、何故か父上の面会が許されないのです」
「…‥母は存じません。陛下は女が政治に口を挟むのを殊の外お嫌いです。使節団もですが外交に関わる事であれば家臣達と対策をしているでしょう。貴方が気を病む必要はありません。‥‥使節団を迎えるに辺り陛下もお忙しいのでしょう。彼等の歓待中は難しいでしょうが、そのうち陛下も貴方に会う時間を取って下さるわ。それまで我慢しなさい」
以前、故総神殿長が守護神のご加護を得るには王か王妃、どちらかに魔力が必要と明かされたことがあった。これは魔力の無いライムフォードが次期王と見做されたから伴侶には魔力保持者をと、言いたかったのだろう。
ライムフォードは一つの仮説を立てた。
国防技術が何らかの魔法術であったのなら、王国の魔素が希薄、殆ど発生していない異常現象の説明がつく。今はその検証を行う余裕がない。こんな時にラムドがいればと口惜しくて悶絶しそう。
母の返答で、思索していた意識が戻る。
「はい、ですがもう何か月も父上にお会いできていなくて、少し寂しく思いました」
「あら、お兄様、わたくしだってお父様のお顔を見ていないわ」
(帝国と関係強化を目論む父上が叔父上の事件を疎かになさるとは思えません。これは父上に何かあったとみるべきですね。それにしてもラムドの件があっても公爵当主の謹慎は解かないのですか。作戦上秘匿扱いと聞きましたが、一体父上や公爵達は何を計画しているのでしょう)
陛下と四公爵のみで展開された作戦とだけ辛うじて教えられたライムフォード。
これも王太子の内定あってのこと。でなければ蚊帳の外でザックバイヤーグラヤスが何か仕出かしたと信じたことだろう。だが、やり方が気に入らない。これでは王家に連なる公爵家が、王家に背いたと受け取られても仕方がないではないかと憤る。他国に付け入る隙を与えやしないかそれを危惧していた。
今回は使節団への影響を鑑みて、付け込まれる題材は減らしておきたい。
(父上に進言したくとも面会が許されないのは痛いですね。使節団の入国前にはザックバイヤーグラヤス公爵の復帰を願いでなければなりません。これは他の公爵を頼るべきですね)
母には頼れないなと内心で溜息を吐いた。
それにしても―――とライムフォードは空恐ろしさを肌で感じていた。
(異母兄の婚約破棄の件で皇帝陛下は相当お怒りでしたね。夫人の持ち込んだ縁談も深読みすれば、私を拘束し研究を完成させようと画策してのことと思えます。夫人は単に嫌な女と宛がおうとしていただけでしたが。恐らく私の代わりとなったアガサフォードは人質でしょう。まあ、あの子なら私のために命を落としたとしても喜びますね)
帝国との関係性は修復不可能なところまできたかと溜息がでる―――のをグッと堪えた。母たちはその危険性を理解できないでいる。お互いの認識の齟齬が恨めしいと思うも、それは自分が国外に出たから生じたものと理解している。
帝国学院は留学生に門徒を開け、学習しやすい環境を整えてあった。そこに集う若人は才に恵まれた意欲ある者ばかり。留学時代、ライムフォードも大いに影響を受けたのだ。他国の留学生との交流は彼の視野を広げるに充分だった。
もし、留学していなければ母と同じ思想で、母に従うのを善しとし侯爵家の傀儡となっていた。その未来を回避できたとことは僥倖であった。
あの日、ラムドとレティエルに帝国留学の一歩を踏み出すよう背を押された。
二人に救われた。
「母上は叔父上の事件をどう思われますか」
突然の話題変えに目を瞬かせたものの、いきなりね、と返答は自然体だった。
「事件を聞いて驚きました。まさか彼がそのような恐ろしい計画を企てるとは思えず、陥れられたと疑いました。ですが騎士団の調査結果は彼の犯行を裏付けたでしょう? 慕っていた貴方には辛い現実ですが貴方は国政を担う立場になるのです。乗り越えなさい。良いですね」
「母上、私は大丈夫です。ですが、どうしてもあの叔父上がランバードの暗殺を企てたとは思えなくて、一度叔父上と話がしたいのです」
一瞬、母の眉間に力が入ったのを見逃さない。
「‥‥ジオルド殿は、聞けば心を病み凶行を思い立ったとか。今は治療が優先ですので許可は下りないでしょう」
暗に治療の邪魔と言われた。
「ジオルド殿とザックバイヤーグラヤス公爵はご友人でした。そのご子息を歯牙にかけたとあれば、何かわたくし達では思いもよらない確執があったのかも知れません。幾ら彼が王位継承権を破棄し王家から遠ざかったといえ、もう少し心を掛けるべきでしたね。もう今となっては遅いでしょうが。‥‥彼が凶行を企てた理由は妄言だと言います。公爵も堪らないでしょうね」
嘘は言っていないと思う。母の関与の可能性はほぼないとみていいだろう。
(ですが侯爵はどうでしょう)
「そうそう、ジオルド殿の領地をエリックが賜ります。領地経営の手腕に長けていたのでしょうね。彼の地は潤っているそうよ。ですから下手な官吏を管理人に据え置くのは勿体ないでしょう? ふふ、ローデリアのお相手に相応しい領地です」
これにはローデリアも驚いて目をぱちくりとさせていた。
「母上、それは誠でしょうか。あ、いえ、知らない話でしたので驚いたのです。まさかそのように譲渡が決定されていたとは思いもよりませんでした。ですがそのような高待遇。家臣達が黙っていないでしょう」
(まさか父上がそのような贔屓を。これでは貴族の反発心を煽るだけではありませんか。エリックもヴァンダイグフも功績らしい功績を上げてはいません、なのに財源の潤う領地を…‥あ、ローデリアをダシに、ヴァンダイグフに利便を図ったのですか)
姑息さが腹立たしくて、奥歯をグッと噛む。
「ええ、みな快く賛同してくれました。序でに教えておきますが、罪人となったジオルド殿の私財は王家に没収され、新たな領主となるエリックは、貴方の後ろ盾となります。勿論、財力面ですよ。彼の者に発言権は与えません。貴方もそれを覚えておきなさい。何か見返りを要求しても安易に応えないでね、良いですかライムフォード」
(成程、私の財源にねえ。叔父上は王家と距離を取り後ろ盾とはなり得ませんでしたが、ですがそれだけで陥れるものでしょうか)
何か裏があると思うも、事は終わってしまった。
遅れを取った自覚はある。
言い訳をする気はないが、自身の研究や神殿の不祥事、その以前はランバードと共に王妃が起こそうとした外患誘致の後始末に翻弄された。目先の功績に飛びついたのは自分だ。そのせいで母や侯爵の暗躍を野放しにしてしまった。功績を積むためとは言え忙殺された過去が恨めしい。所詮、己の力が足りないのだ。
ライムフォードは自分の盤石な地盤作りどころではなくなった。
父と同じく帝国との関係強化路線。魔力保持者容認派だと周知させたいのに悉く邪魔が入る。陛下にしろ叔父上にしろ、ザックバイヤーグラヤスにしろ、悉く帝国派の頭が抑えられた。
ライムフォードは、王国の魔素不足問題に頭を抱えていた。そこに母達の権力争いに、次から次へと生じる諸問題。翻弄され魔素に関する研究が出来ず内心苛立っていた。
そしてその彼に追い打ちをかけるような、帝国使節団の訪問が待っている。そう問題児の訪問が待ち受けるのだ。
ライムフォードは自分が呪われているのではないかと真剣に考えた。それほど彼を追い詰める使節団。くそと舌打ちしたくなるのを堪えていた。
帝国使節団。
この時期に。きっと何か仕掛けてくるとライムフォードは予想している。
皇帝からレティエルの婚約破棄に対して賠償の猶予を貰ったものの、あちらの狙いは国防技術。それだけでも大事なのに、今度はラムドが殺された。
(ラムドの遺体は火傷で損傷が酷く識別不可能な状態でした。ですので私はラムドが生きていると信じています。ですが、彼の暗殺を企てた首謀者として叔父上は罪人にされてしまいました)
後手後手に回った感は否めない。
ラムドは死者である。そして公爵は表立って謹慎中で、彼等を頼れない。
国家の秘匿技術をそう易々と渡せない。おまけにその国防、神殿と王家の主張は、守護神の加護によるものと公式発表されたものだ。人為的な力ではなく神の加護と人外の力を強調していた。
魔法術か魔道具か、何らかの技術だとは予想を立てても、その痕跡が見当たらない。こうなると神殿の主張が正しいのかと気も迷う。一刻もその技術を解明しなければ、王国は帝国に呑まれる。
ライムフォードはそれでも良いかと思いつつも、母や妹を思うと容易に頷けない。占領された国の王族の末路は悲惨。自治権を与えると言われても非公式の場での口約束。しかも相手はあの皇帝、反故にしそうで鵜呑みにできないでいた。ライムフォードは、守りたい者である母と妹に視線を向けた。
母達は事の重大さを理解しているのかと胡乱な目で見てしまう。
「母上は父上から何かお聞きになられたのでしょうか。叔父上の凶行は帝国を刺激してもおかしくない事柄でした。王国では知られていないようですがランバードは帝国貴族籍を取得しております。それに若手の魔道具技師として皇帝陛下の覚え目出度き人物でした。対応を間違えれば帝国が口出してこないとも言い難く。父上も表立って対策をなさっていない。‥‥母上は何かお聞きではございませんか? もうじき帝国の使節団が到着します。王子として父上の思惑を知っておきたいのですが、何故か父上の面会が許されないのです」
「…‥母は存じません。陛下は女が政治に口を挟むのを殊の外お嫌いです。使節団もですが外交に関わる事であれば家臣達と対策をしているでしょう。貴方が気を病む必要はありません。‥‥使節団を迎えるに辺り陛下もお忙しいのでしょう。彼等の歓待中は難しいでしょうが、そのうち陛下も貴方に会う時間を取って下さるわ。それまで我慢しなさい」
以前、故総神殿長が守護神のご加護を得るには王か王妃、どちらかに魔力が必要と明かされたことがあった。これは魔力の無いライムフォードが次期王と見做されたから伴侶には魔力保持者をと、言いたかったのだろう。
ライムフォードは一つの仮説を立てた。
国防技術が何らかの魔法術であったのなら、王国の魔素が希薄、殆ど発生していない異常現象の説明がつく。今はその検証を行う余裕がない。こんな時にラムドがいればと口惜しくて悶絶しそう。
母の返答で、思索していた意識が戻る。
「はい、ですがもう何か月も父上にお会いできていなくて、少し寂しく思いました」
「あら、お兄様、わたくしだってお父様のお顔を見ていないわ」
(帝国と関係強化を目論む父上が叔父上の事件を疎かになさるとは思えません。これは父上に何かあったとみるべきですね。それにしてもラムドの件があっても公爵当主の謹慎は解かないのですか。作戦上秘匿扱いと聞きましたが、一体父上や公爵達は何を計画しているのでしょう)
陛下と四公爵のみで展開された作戦とだけ辛うじて教えられたライムフォード。
これも王太子の内定あってのこと。でなければ蚊帳の外でザックバイヤーグラヤスが何か仕出かしたと信じたことだろう。だが、やり方が気に入らない。これでは王家に連なる公爵家が、王家に背いたと受け取られても仕方がないではないかと憤る。他国に付け入る隙を与えやしないかそれを危惧していた。
今回は使節団への影響を鑑みて、付け込まれる題材は減らしておきたい。
(父上に進言したくとも面会が許されないのは痛いですね。使節団の入国前にはザックバイヤーグラヤス公爵の復帰を願いでなければなりません。これは他の公爵を頼るべきですね)
母には頼れないなと内心で溜息を吐いた。
それにしても―――とライムフォードは空恐ろしさを肌で感じていた。
(異母兄の婚約破棄の件で皇帝陛下は相当お怒りでしたね。夫人の持ち込んだ縁談も深読みすれば、私を拘束し研究を完成させようと画策してのことと思えます。夫人は単に嫌な女と宛がおうとしていただけでしたが。恐らく私の代わりとなったアガサフォードは人質でしょう。まあ、あの子なら私のために命を落としたとしても喜びますね)
帝国との関係性は修復不可能なところまできたかと溜息がでる―――のをグッと堪えた。母たちはその危険性を理解できないでいる。お互いの認識の齟齬が恨めしいと思うも、それは自分が国外に出たから生じたものと理解している。
帝国学院は留学生に門徒を開け、学習しやすい環境を整えてあった。そこに集う若人は才に恵まれた意欲ある者ばかり。留学時代、ライムフォードも大いに影響を受けたのだ。他国の留学生との交流は彼の視野を広げるに充分だった。
もし、留学していなければ母と同じ思想で、母に従うのを善しとし侯爵家の傀儡となっていた。その未来を回避できたとことは僥倖であった。
あの日、ラムドとレティエルに帝国留学の一歩を踏み出すよう背を押された。
二人に救われた。
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