転生先は小説の‥…。

kei

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第十三章

三日後に向けてー①

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「おお~、彼シャツ!」

萌えてみました。


レティエルは男性用シャツの試着中。そうです、義兄の服を拝借してます。いえ、この際リメイクを考えているので貰っちゃいました。ふふ、流石公爵令息の服。最高級の布地の手触りは洗濯を繰り返しても良い。
見かけに寄らず細マッチョな義兄の服は、大きすぎた。シャツはレティエルの太腿をしっかり隠して、袖も指先しか出てない萌え袖。わかる人にはわかるポイントは押さえたいと思います。
着替えのお手伝いをしてくれたハイデさんは「ブカブカですね」と至極冷静、萌えの概念はなさそうです。

「多少のもたつきはいいわ。裾を上げて縫えばいけるわね」
「お嬢様」
「あら、そんな顔しないで。でも、まさか都内の仕立て屋が手一杯で断られるとは思わなかったわ」

そう。今、都内の仕立て屋は貴族の依頼でどこも猫の手を借りたい状態に陥っていた。理由は知らないけど慌てて殺到したのだと思う。素性を明かせない俺達では割り込んで作らせることもできない。そこで既製服を仕入れようと思えば、それはつまり誰かのお古となる。そんなもんレティエルに着せれるわけがない。それならばと義兄の服をぶんどった。我が家に取りに戻れたらいいんだけど、今、ジェフリーがいなくて余裕がないの。



驚く事にブティックなるものは存在しない。精々仕立て屋だ。基本オーダーメイド。職人が縫うか家族が縫うかの違いでしかない。
で、ちょっと面白い慣習があるのが王国。
貴族の慣習なのかな? 上の者が下の者にお下がりを渡す、下げ渡しってのがある。勿体ない精神に満ち溢れてるよねー。例え経済的な問題だとしても無駄にしないのはいいことだよ。
だから既製品‥‥既に出来上がった服はお古を指す。既製品=お古。もうびっくり。この事実を知った時はおののいた。だって折角お金持ちのお家に転生したのに、お店で『ここからここまでいただくわ!』の大人買いができない。がっくりだよ。まぁ、外聞悪いし、いかにも悪役令嬢っぽいからやらないけど。




さて、お着替えも済んだことだし。




扉を『バーン!』って開ける勢いで義兄のもとに。




「お義兄様、見て、どうこれ?」

服を提供したからには見せろと煩い義兄のリクエストに応えるべくお披露目した。
緩んで締まりのない顔を見せられギョッとした。
え、なにその顔?!

「ふふ、レティが子供に見えてしまうね。可愛いよ」

どこまでも甘い。
もうそれはいいから、早く手直ししてよ。







魔道具技師である義兄は、手先が素晴らしく器用でした。

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