転生先は小説の‥…。

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第十二章 分水嶺

⑮・見返り?

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何とかお爺ちゃんの何かを折ることに骨を折った(義兄が!)ことで、初めにお祖父ちゃんが忠告した話を聞けば後戻りできない(意訳)云々の意味を悟った。
多分、俺が思うのとお祖父ちゃんが意図したのとちょっと違うかもだけど。

‥‥王国と帝国の二国間が表立ってないけどヤバいんだってのがわかった。俺としては戦争を回避できるのであれば属国もあり派。お祖父ちゃんに協力もやぶさかではない。ただし親父の血の盟約問題を解決してからだけどね。



お祖父ちゃんの本命が両殿下と側近の暗殺。使節団は皇帝の息のかかった者ばかりで皇子に科せられたお仕事も皇子と王国側を欺くためだと。確かに、皇子サマご一行を歓待しなきゃだし貴族達もこの際とばかりに交流を持とうと躍起になるわ。目晦ましに持ってこいだよ。

事実を聞かされて驚愕で‥‥というより手の込んだやり方に驚かされた。
だけど、注目を浴びれば浴びるほど、陰に回った者が動きやすくのはわかる。軍が別動隊を複数送り込んだと聞けば、俺も腹を括るしかない。

‥‥それにしても別動隊は何をやるのかな? 是非とも義兄に暴いて貰いたい。




凶行犯をエリックに仕立て、彼共々伯爵家を処罰。お祖父ちゃんが関わるのはこっち。明かに私刑の色濃い今回の作戦、お祖父ちゃんは動きやすいからと裏工作に心血雪ぐみたい。

その事実を聞かされて、ここまでやるかと、正直引いた。

義兄はヴァンダイグフ伯爵家と前当主はレティエルの誘拐に関与していたので制裁は当たり前だと黒い笑顔でお祖父ちゃんに賛同する。親父の未許可のため自ら動けなかった鬱憤が、お祖父ちゃんに全力で手を貸す原動力となっていそう。

お祖父ちゃんの殺意を煽りたいのか、レティエルへの毒殺未遂の犯人は神殿関係者と伯爵の手の者と、可能性を示唆してとにかく盛るの、この人。

‥‥あ、ジオルドが言ってたやつか。毒を吞まされたって話だけど当の本人は無自覚だったんだよね。衝撃的な話だったけど実感がないからそれほどショックではないのが救い?かな。


それと母さん達を早々に帝国に逃がす目的もある。だけど親父の側を離れないと粘っているらしい。
今のところ王都の公爵邸で監禁を装って周囲を王国の騎士団(半数は公爵家の私兵)が包囲という名の護衛をしてくれてる。お祖父ちゃんも部下に見張らせてるので異変があればすぐにわかると。心配は不要だと宥められた。
邸には魔道具やら魔法陣で防衛強化してあると言われて、過剰防衛? と思わなくもないが安全が確保されているなら敵がどうなろうとも、まっ、いっか。


それにしても。


「お祖父様、理由をお聞かせ下さい。そうしてまで両殿下を王国の諍いの火種となさるのは何故ですの。それにタッカーソン侯爵子息が狙われたのは‥‥能力の所為としても、どうやって知ったのでしょう。少し気になりまして‥‥」

同じ希少な能力を持つ身としてはバレ方が気になるわけ。当主が秘匿&契約魔法でガッチガチに守ってたのがバレるって、どんな手口を使ったのか単純に興味があるのだ。

この問いにお祖父ちゃんは「気になるか」と呟きジェフリーに新しいお茶を用意しろと部屋から追い出した。どうやら聞かせられない内容だと悟った。そしてそんなヤバ話を催促した自分の迂闊さに、泣いた。

‥‥これ絶対メンドクサイ‥‥じゃなくて厄介…‥…大変な話だよね。



「側妃らは調合技術の特殊性なんぞ関心なかったのか王国に売る方を選んだようじゃのう。能力が知られたのは…調合時に勘付かれたか使用者が気付いたか。犯行に及んだ者が死んでおるでのう、わからん」

やっぱり完全に秘匿は難しいか。

「タッカーソンは違反薬物に手を染めておった。と言えど今回の誘拐で明るみになったんじゃ。側妃と娘の第二皇女らに脅されていたと犯行を自供しよった。どうも精神に作用する薬でのう、他人を意の如く従わせるために使用していた。闇系魔力でなくとも精神干渉ができるとなれば容易に人を洗脳できるで。反対勢力の有力貴族を洗脳したり邪魔な者を精神干渉させ廃人にさせたりと好き勝手しおってのう。陛下も頭を悩ませられてての。皇族が臣下を精神干渉で従わせるなどとんだ醜聞じゃ。陛下の統治に影を差す行為じゃて。じゃが難儀なことに側妃の実家は有力貴族。迂闊に手は出せんかった」

今までは。と状況が変わったと話が続く。

「内偵の者らが誘拐事件にこの違法薬物が関わっておると突き詰めてからじゃ。状況が変わった。側妃らは王国の者と結託しよってのう。…‥気に入らん者に薬物を使って奴隷契約や人身売買組織に売ったりしておった(奴らめティを狙いよって思い出すだけでも腸が煮えくり返るわい。おまけにグレインまでも巻き込みよって)それに極めつけが次期皇帝候補の皇子の暗殺計画じゃな。仮に暗殺されればまた後継争いで皇室が荒れよるでのう、ここで漸く陛下も損切りを決意されたんじゃ」
「うぇ、最悪‥‥」
「‥‥そうですかそんなことが。ではタッカーソン家は‥‥」
「ぬ? ああ、これは表沙汰になるといろいろ不味いで秘密裏に処理された。あの倅に解毒薬を作らせたのがバレて攫われ売られる羽目になった。縛めのつもりじゃろう。当主に目を掛けられておったあの倅を使こうて自分らに逆ろうた者に報復したかったんじゃろう。ほんに、後先考えん愚かもんじゃわい」

「うわ、サイテ―、そんな理由で貴重な作り手を害しようだなんて馬鹿でしょ。馬鹿、馬鹿だわ」
「私もレティと同じ思いです。愚かとしか言いようがありませんね。‥‥では、ファーレン家に子息が引き取られるのもそれが関係して、でしょうか」
「おう、そうじゃ。仮にタッカーソンが操られれば解毒薬云々じゃなくなるからの。こちらで身柄を確保せんと。まだ薬は必要じゃ。それに効能が上がった回復薬も必要じゃてな。まぁ権利は儂らが貰うたで、代わりにタッカーソン家諸共引き受けたわい。当面とはいえ調合薬の市場はファーレン家が独占じゃて。ぬはは」

おおぅ。そんな裏取引が‥‥一族どころか家門の貴族まで取り込んじゃったの? 暫定的な処罰としても受け皿になれるのって凄いわ。多分、一家に権力や財力が集まるのを阻止したい貴族達の反発を抑えることができるからだろうね。

タッカーソンは代替わりを余儀なくされる。現当主は病に罹り数か月後‥‥側妃らの捕り物が終了次第病死になる予定。当主一人の責任で済むのは、事情が考慮されたのだとわかる。脅迫されてたのと解毒薬の調合、犯行を自供したことで黒幕?な側妃を実家諸共処罰できるとなれば考慮されたのか。

飴と鞭を使い分けたような沙汰だよね。


これで、ヴォルグフが狙われた訳も両殿下が処罰される訳もわかった。王国を…と言うか今の国王を失脚狙いも報復の色合いがある訳ね。はぁ‥‥。
帝国は誘拐事件もひっくるめて王国を糾弾する手も使えるわけか。

お祖父ちゃん以外にも工作活動しちゃう人達がいるんだよね? まだ何か企みが? ああ、お祖父ちゃんは知らないんだっけ。義兄に探れって唆してたぐらいだもん。


話し終えたのかソファーの背もたれに身体をどっしり預けたお祖父ちゃん。緩くなったね。でもね、でもね、油断しちゃダメだよ。横から見ててもわかる。義兄の目がキララ~ンってした。あ、企んでるね?



「ではお義祖父様、見返りについて話を進めて頂いて宜しいでしょうか」


え? 何の?! 

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