転生先は小説の‥…。

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第十二章 分水嶺

神殿と言えばアレー2

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「皇子が交流を深めたいと望まれたのは計画の進捗具合を確かめるためでしょうか?」
「お義兄様、第二王子が協力者なのは確かですの? でも、それ、おかしくありません?」

消去法で説明されると一番怪しく聞こえた。でもそれだとどうしても腑に落ちない点がある。
義兄は優しい眼差しで話の続きを促してくれたが、お祖父ちゃんの視線は孫を猫っ可愛がりする爺様のソレだよ。ちゃんと意見が言えてえらいねーな感じの。やりづらいなもう。

「だって、第二王子が次期国王に決まったから第三王子は帝国に婿入り人質予定となったのでしょ? ‥‥王となるお方が自ら国を売るだなんて、おかしいわ」
「あくまでも推測だよレティ。でもね、戦争を回避できた上に自分の地位が約束されたとなれば悪い話ではないと思うよ? どの道、軍事力の弱い王国が周辺国の争いに巻き込まれれば国は滅ぶ。王国の魔物除けは侵略者たちを退けることが出来ないからね。大樹の下に寄り添う方が賢明と考えても間違いではないよ」

そういって内政が荒れている今、立て直す前に他国に攻め入れられたらひとたまりも無いと教えてくれた。実際、危ない事態に陥る寸前までいったとか。上手く介入したから大丈夫と微笑まれた。

あっ、それって王妃と隣国の? ‥‥大丈夫ならいいや。

お祖父ちゃんも同意見で王国の切り札は『魔物を寄せ付けない技術』これを皇帝に献上することで庇護下に。有事の際、帝国軍が助けてくれるわけだ。垂涎物の技術を人参を鼻先にぶら提げられた馬状態に持ち込んだのか。やるな協力者。

多少の兵糧や魔石の提供とかは必要だけど王国騎士達は魔法を使った戦闘に慣れていない。先々代まではちゃんと戦えたのが貴族達の軍事力を削ぎに行った政策変更のツケが今にきたわけか。

ううん、武力じゃない方法を執った協力者はまともか。

保有武力が抑止力になるのはわかるけど、戦いになれば一番困るのは国民だよ? 攻めて終わりじゃないんだし。そこで生きて行く人たちがいることを忘れてはダメだ。

戦争に対する忌避感が捨てれない俺は、帝国との戦争が避けられないのなら回避の手段として属するのもありだと思う。王族と貴族達の地位も余程のことがない限り現状維持を許されるらしい。それならまだ受け入れやすいか。神殿は未知な部分が多いがそれは協力者が何とかするだろう。


「ふふ、一番可能性が高いのがライムフォード殿下ってことだよ。それに神殿を従わせる材料ぐらい確保していると思うよ? 殿下は抜け目のない男だからね」

と、あっさり。
ライムフォードならと妙な信頼があるんだね。ちょっと複雑。
そう言いながら一つ危惧があると義兄は零す。


「ライムフォード殿下が公爵当主達と陛下が交わした契約魔法をご存じかどうかが気になります。あれは陛下と当主達しか知らない‥‥ああ、これにも神殿が関わっていましたね。本当にウザい奴‥‥コホン。失礼。特殊な環境で交わされた契約ですので知らないのも無理はないのですが…」

まじまじと義兄の顔を見るお祖父ちゃん。どうやら知らなかったみたい。軍も掴んでいない情報だとちょっと焦ってる。何だろう作戦を知らないお祖父ちゃんの慌てぶりが引っ掛かった。

「お義祖父様のそのご様子だと協力者も知らない可能性が高いですね。ふむ、これは不味い‥‥」
「お、お祖父様、情報部は掴んでいないの?」
「ぬう、儂が知らんのじゃ。情報部とて掴んでおらぬじゃろう‥‥して、その契約とは? それがどう影響するのじゃ? 詳しく話すのじゃ」

何だろう、今一瞬、義兄の目がキラリンって怪しく光った気がする。

「お義祖父様、残念なことに守秘義務の縛りが思った以上に厳しい契約魔法で、次期当主と目されていた私にも知らさぬよう徹底されておりました。ですが‥‥」

うわ、知らない振りして、シレっと嘘ついたよこの人。

この期に及んでまだ駆け引きを楽しむのかと、呆れた俺は半目で睨む。
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