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第十二章 分水嶺
前世の記憶を取り戻した時以来の衝撃
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夕食後の語らいの一時。まったりとしながらお祖父ちゃんとザクワン爺ちゃんに義兄と俺で後味スッキリのハーブティーをいただいている。
喉も潤いお腹もこなれた頃、孫と語り合いたいお祖父ちゃんが口火を切った。
「タッカーソンの倅の件、ご苦労じゃったな。二人の頑張りのおかげで好い様に立ち回れるわい」
その言い回し。
「いやあ、まさか儂の部下を潜り込ませておったところにタッカーソンの倅が連れて来られるとは思わなんだわ。捜索が難航しておったというに偶然とはいえ運のよいガキじゃ。それに丁度良い時期に身柄を確保できたしのう。ウワハハーーー」
「ええ流石はお館様でございます。ガザらめを先行させておいてようございました。あれで伝達がスムーズにいきましたからねえ」
やっぱりマッチポンプ?!
事前に義兄の話を聞いていなければ、額面通りに受け取ってたわ~。それにしても回りくどいやり方したよね? 何で?
「お祖父様、一言『救出』とはっきり仰って下されば、もっと早くに行動したのに、どうして芝居めいたことをなさったの?」
まあ、スパイごっこ、楽しめたからいいけどさー。ぶちぶち。
「うお、おお、すまんかったのう。ちいと事情があって仕方なかったんじゃ」
シュンと項垂れるお祖父ちゃん、うん、可愛くない。いや、そうじゃなくて理由をね、教えてよ。項垂れて反省した素振りで誤魔化す気じゃないかと半目になっちゃう。
そんな俺達の遣り取りをじっと静かに見ていた義兄が、
「お義祖父様、紛い物の炙り出しに魔法術具を試作したので試してみませんか?」
わっ、悪魔の囁き!
紛い物の言葉に反応した老人二人の垂れ下がった瞼がクワッと持ち上がる。顔が怖いよ。
「そ、そうか、出来るのであれば、許可するで好きにせい」
「ありがとうございます、お義祖父様」
なんと、俺がリアルスパイ大作戦をノリノリで楽しんでいたら、自分の懐に潜り込まれてた! スパイ大作戦が現在進行形で俺達に適応されていたのか! 地味に凹んだ。お祖父ちゃんの回りくどいやり方はスパイの所為?
‥‥リアルスパイは、一体誰?!
お祖父ちゃん達は義兄の試作品に興味を持ってかれたのか、ワクワクしてるのが伝わってくる。物騒な内容の筈なのに、室内のこの和よう。ちぇ。
「若、怪しまれずに回収完了です」
俺の凹みは何のその。義兄の予想が当たったとジェフリーが報告にきた。お祖父ちゃんは緊急時でなければ邪魔しない男が現れたのだ、何事かと訝しみ顔が大魔神になっとる。
「家族水入らずの団欒中に、何とも無粋な。火急な用であろうな?」
人払いをしての話し合いを邪魔されたからなのか、不穏な空気を読み取ったからか。お祖父ちゃんの機嫌は頗る悪い。ジェフリーを睨め付けたことで室内にピリリと緊張が走る。
‥‥お祖父ちゃん、顔怖っ!
得体の知れない取り繕った笑顔の義兄も負けてはいない。嘘臭い貴族然の笑顔マシマシで迎え撃つみたい。さしずめ、大魔神VS悪魔‥‥って、人外じゃん。
―――クスリ。義兄の心の笑みが聴こえた気がする。
「お義祖父様、ヴォルグフ達は契約主の元に向いました。今しがた迎えに来た者と邸を後にしたとジェフは報告したのです」
「な、なんじゃとーーーー?!!」
ビリビリビリーーー
何かお祖父ちゃんの体躯からあり得ない濃度の濃い魔力が溢れ出たよ?!
ひぇっ?!
大魔神の顔したお祖父ちゃん、驚きや怒りとか感情がない交ぜなのかとにかく顔が怖い。
ジェフリー、総毛立ってる?!
対照的にザクワン爺ちゃんは日向ぼっこのジジイみたいだけど。
これには流石の義兄も顔色が悪いわ。
「何を悠長に申しておるのじゃ!! 直ぐに捕まえて来んか!! ええい、護衛達は何をしておったのじゃ?! ラムよ、これはお前の仕業じゃか?! 返答次第では処罰も有り得るぞ!」
ビリビリ流れ弾のような威圧を正面から受けても、怯まずお祖父ちゃんと対峙する義兄の胆力の凄さに脱帽した。素直に感心するよ、俺を巻き込まなきゃね。
「グッ! …レティが…怯えます。ご説明‥‥致します‥‥ので‥‥お怒り、を…お鎮め下さい」
うわ~ホント、大魔神っぽい。
気力を振り絞った義兄の言葉で、ニヤリと嗤うお祖父ちゃん。えげつない威圧攻撃がシュルシュルンっと納まった。魔力コントロール、めちゃくちゃうまいよね。
「ラムよ、儂を納得させるだけの理由があるんじゃな? 発言を許可する。言うてみい」
あれ? 全然怒ってない?? 余裕綽々で悪い笑顔してない?
ザクワン爺ちゃんに至ってはコナキジジイ化してるよ?
「発言をお許し下さりありがとうございますお義祖父様。先ずは、これをご覧下さい。彼等の契約書を写したものです。お義祖父様、この名に覚えはございませんか? ‥‥ガザの報告には無い情報です」
差し出したのは、隷属の契約書を模したもの。勿論、翻訳バージョン。
顎に手を当て首を傾げるお祖父ちゃん、記憶を探ってみても聞き覚えがないそうだ。でも国名と同じ名から王族の一人と判断したのだろう。めちゃくちゃ良い笑顔で『上出来』と義兄を褒めた。
お褒めをいただいたご褒美??に、良い事を教えてやると上機嫌なお祖父ちゃん。一体何を教えてくれるのだろうか。ヒシヒシと嫌な予感しか迫って来ないよ? うん、マジでヤバイ雰囲気でございます。
「王国を属国にするぞ」
「「「!!!」」」
‥‥前世の記憶を取り戻した時以来の衝撃を受けました。
喉も潤いお腹もこなれた頃、孫と語り合いたいお祖父ちゃんが口火を切った。
「タッカーソンの倅の件、ご苦労じゃったな。二人の頑張りのおかげで好い様に立ち回れるわい」
その言い回し。
「いやあ、まさか儂の部下を潜り込ませておったところにタッカーソンの倅が連れて来られるとは思わなんだわ。捜索が難航しておったというに偶然とはいえ運のよいガキじゃ。それに丁度良い時期に身柄を確保できたしのう。ウワハハーーー」
「ええ流石はお館様でございます。ガザらめを先行させておいてようございました。あれで伝達がスムーズにいきましたからねえ」
やっぱりマッチポンプ?!
事前に義兄の話を聞いていなければ、額面通りに受け取ってたわ~。それにしても回りくどいやり方したよね? 何で?
「お祖父様、一言『救出』とはっきり仰って下されば、もっと早くに行動したのに、どうして芝居めいたことをなさったの?」
まあ、スパイごっこ、楽しめたからいいけどさー。ぶちぶち。
「うお、おお、すまんかったのう。ちいと事情があって仕方なかったんじゃ」
シュンと項垂れるお祖父ちゃん、うん、可愛くない。いや、そうじゃなくて理由をね、教えてよ。項垂れて反省した素振りで誤魔化す気じゃないかと半目になっちゃう。
そんな俺達の遣り取りをじっと静かに見ていた義兄が、
「お義祖父様、紛い物の炙り出しに魔法術具を試作したので試してみませんか?」
わっ、悪魔の囁き!
紛い物の言葉に反応した老人二人の垂れ下がった瞼がクワッと持ち上がる。顔が怖いよ。
「そ、そうか、出来るのであれば、許可するで好きにせい」
「ありがとうございます、お義祖父様」
なんと、俺がリアルスパイ大作戦をノリノリで楽しんでいたら、自分の懐に潜り込まれてた! スパイ大作戦が現在進行形で俺達に適応されていたのか! 地味に凹んだ。お祖父ちゃんの回りくどいやり方はスパイの所為?
‥‥リアルスパイは、一体誰?!
お祖父ちゃん達は義兄の試作品に興味を持ってかれたのか、ワクワクしてるのが伝わってくる。物騒な内容の筈なのに、室内のこの和よう。ちぇ。
「若、怪しまれずに回収完了です」
俺の凹みは何のその。義兄の予想が当たったとジェフリーが報告にきた。お祖父ちゃんは緊急時でなければ邪魔しない男が現れたのだ、何事かと訝しみ顔が大魔神になっとる。
「家族水入らずの団欒中に、何とも無粋な。火急な用であろうな?」
人払いをしての話し合いを邪魔されたからなのか、不穏な空気を読み取ったからか。お祖父ちゃんの機嫌は頗る悪い。ジェフリーを睨め付けたことで室内にピリリと緊張が走る。
‥‥お祖父ちゃん、顔怖っ!
得体の知れない取り繕った笑顔の義兄も負けてはいない。嘘臭い貴族然の笑顔マシマシで迎え撃つみたい。さしずめ、大魔神VS悪魔‥‥って、人外じゃん。
―――クスリ。義兄の心の笑みが聴こえた気がする。
「お義祖父様、ヴォルグフ達は契約主の元に向いました。今しがた迎えに来た者と邸を後にしたとジェフは報告したのです」
「な、なんじゃとーーーー?!!」
ビリビリビリーーー
何かお祖父ちゃんの体躯からあり得ない濃度の濃い魔力が溢れ出たよ?!
ひぇっ?!
大魔神の顔したお祖父ちゃん、驚きや怒りとか感情がない交ぜなのかとにかく顔が怖い。
ジェフリー、総毛立ってる?!
対照的にザクワン爺ちゃんは日向ぼっこのジジイみたいだけど。
これには流石の義兄も顔色が悪いわ。
「何を悠長に申しておるのじゃ!! 直ぐに捕まえて来んか!! ええい、護衛達は何をしておったのじゃ?! ラムよ、これはお前の仕業じゃか?! 返答次第では処罰も有り得るぞ!」
ビリビリ流れ弾のような威圧を正面から受けても、怯まずお祖父ちゃんと対峙する義兄の胆力の凄さに脱帽した。素直に感心するよ、俺を巻き込まなきゃね。
「グッ! …レティが…怯えます。ご説明‥‥致します‥‥ので‥‥お怒り、を…お鎮め下さい」
うわ~ホント、大魔神っぽい。
気力を振り絞った義兄の言葉で、ニヤリと嗤うお祖父ちゃん。えげつない威圧攻撃がシュルシュルンっと納まった。魔力コントロール、めちゃくちゃうまいよね。
「ラムよ、儂を納得させるだけの理由があるんじゃな? 発言を許可する。言うてみい」
あれ? 全然怒ってない?? 余裕綽々で悪い笑顔してない?
ザクワン爺ちゃんに至ってはコナキジジイ化してるよ?
「発言をお許し下さりありがとうございますお義祖父様。先ずは、これをご覧下さい。彼等の契約書を写したものです。お義祖父様、この名に覚えはございませんか? ‥‥ガザの報告には無い情報です」
差し出したのは、隷属の契約書を模したもの。勿論、翻訳バージョン。
顎に手を当て首を傾げるお祖父ちゃん、記憶を探ってみても聞き覚えがないそうだ。でも国名と同じ名から王族の一人と判断したのだろう。めちゃくちゃ良い笑顔で『上出来』と義兄を褒めた。
お褒めをいただいたご褒美??に、良い事を教えてやると上機嫌なお祖父ちゃん。一体何を教えてくれるのだろうか。ヒシヒシと嫌な予感しか迫って来ないよ? うん、マジでヤバイ雰囲気でございます。
「王国を属国にするぞ」
「「「!!!」」」
‥‥前世の記憶を取り戻した時以来の衝撃を受けました。
応援ありがとうございます!
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