270 / 359
第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲
良い報告・レティの能力
しおりを挟む「‥‥の裏技」
義兄がどこかの食卓みたいなことを小声でポツリ。思わず二度見した。
「特筆すべきはレティの再現能力かな…」
「あら、お義兄様、褒めてくれるの?」
えーと、さっきの独り言はなしの方向ね。ラジャ! 俺は空気の読める子だからね! それに急に話題を振られても大丈夫、合わせられるよ? でも、その黒い笑みはゾワゾワするから止めて欲しい。
「レティ、魔法陣を原型…いや、術が発動した状態で取り込み再現してみせた。それは本来あり得ないことだよ?」
「えっ?」
「ふふ、レティの再現能力があれば、術式の改竄は容易にできるね」
「えっ??」
「わ~、流石、ザックバイヤーグラヤス公爵家のお嬢様~、犯罪行為がやり放題じゃないですか~、血は争えませんね~、おおー怖ぃぃイヒヒ」
「はぁ?!」
「いやいや~、二人の名を入れ替えただけで、立場が大逆転ですかー、ぷぷ、えげつないですねー」
‥‥こいつ何言ってんの?!
ちょっと意味が分からないんですけど?! 不満ありありな顔で睨むと、ランチェスターの名とヴォルグの名を入れ替えれば、再現性のあるレティエルの力だ。隷属者が入れ替わると言いたかったみたい。これは、義兄も頷く。ちょっとどころかかなりビックリだよ。
‥‥うわ~マジでえげつな~。
自分の能力に引いた。
‥‥これは、確かに裏技だわ…‥。
良い報告には、まだ続きがある。
レティエルの能力を調べてわかったことを報告したい。そう言われて義兄の寝不足が、決してラクガキ読み隊だけじゃないことを、今知った。あ‥‥ごくろうさまでした。
「レティは他の魔力を吸い取れるでしょ? 本来、魔力は他人に渡すことは出来ないと覚えておいて」
そうなの? あ、でもあげる気ないからそこは大丈夫。貰えるなら貰うけどね。
「お嬢様~、魔力の遣り取りって、普通はできませんよ~。あっ、何気に人様の魔力を奪わないで下さい。盗っ人ですよ~」
「‥‥これぐらい知ってい‥‥ないのだね」
義兄は溜息を吐いて、やれやれな顔だ。
「お嬢様って、容赦なさそうですよね~」
「‥‥加減を覚えさせるしかありません」
「そうなりますよね~。王国内に足止めされてますが、ここで?」
「‥‥先ずは注意喚起からですね。後は追々」
ちょっとワクワクしていた俺は、二人の神妙な顔と会話に気付くことはなかった。
「レティ、話を続けてもいい? 過去に実在した吸引能力者によると、特徴的な魔力なのか、親和性の高さ故か。他者の魔力を難なく取り込み自分の糧にする。専ら奪うのみだよ。レティは、魔石に移したり、他人に与えたりできるよね? もうこの時点で相違している。それはわかる?」
「え‥‥? 吸引は奪う?」
うわぁ‥‥強奪犯っぽい。
能力を吸引としちゃうと、盗っ人スキルと思われちゃうってこと?! ええ、それはヤダ!
公爵令嬢の能力が盗っ人って微妙すぎて、泣く。
帝国で魔女っ娘を夢見るのに、盗っ人スキルと思われるのは、とんだ風評被害じゃなかろうか。余りの悲劇に脳内で崩れ落ちる。俺の心情を知らない義兄は、平静な声だ。
「再現力。これが関わっていると私は考えているよ」
え?
「吸引の能力は魔力を吸う。これは同じだね。レティは自分の魔力に換え‥‥れるの? そう、今知ったよ。‥‥発動中の魔法陣の魔力や、生体に刻印した呪紋の吸引…できるのは同じ。コホン、この後の話はレティだけが行える話だからね? いい、間違えちゃダメだよ? レティしかできない内容だからね? ポンポン人前で使っちゃダメだよ? わかる?」
しつこく念を押すね。俺は三歳児か。何度も言わなくたってわかるよ。ちゃんと理解した。自粛するかどうかは別の話だけど。‥‥うん、善処します。
それにしても、吸引能力者っていたの? 初耳~って言えばジェフリーが『何故知らないのですか?!』って怪訝な顔をしやがった。なんだよ、知識不足は我が家の教育方針だよ、文句ある?
プチ情報で教えてくれたのは、過去に実在した吸引の能力者が、帝国の皇帝だった。『悪食の王』の名を欲しいままに戦国の世を生き抜いた元武将。敵国や敵対者を容赦なく喰らい付いた(魔力を)豪胆な人物。帝国人なら吸引の能力を悪食と捉える人も多いって。えー、イメージ悪っ!
話は淡々と‥‥まだ続く。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」
***
ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。
しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。
――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。
今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。
それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。
これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。
そんな復讐と解放と恋の物語。
◇ ◆ ◇
※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。
さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。
カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。
※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。
選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。
※表紙絵はフリー素材を拝借しました。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる