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第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲
ありあり
しおりを挟む手持ちの情報ではランチェスターの正体まで辿り着けない。そう思い直した俺達はやるべきことに意識を向ける。ガザは情報収集へと本来の任務に戻るようだ。
また、御用聞きのように俺達の前に現れるだろうが、用があれば呼んでいいらしい。うわ~い、手駒ゲット!
サロンに残った俺達の課題はヴォルグ達の解術作業になる。
「‥‥結局は振り出しに戻るのよね」
当初の予定に戻るだけだ。
初め契約書の文字は暗号では? と思われたが、隷属の契約は古くからある。ならば消失した国の言語の可能性が高いと解読を保留にした。
正確な内容は不明でも意図はわかる。隷属の契約は生殺与奪だ、書面を読めずとも然したる問題ではない。
こうも、すっぱり割り切れるのが義兄だよね。
レティエルなら直に球体の魔力に影響を与えられる。魔力操作のみで術が解けるとあれば、これほどのお手軽はないよね? やる価値は、ありありなのだ。
‥‥そう、ありだよね? 楽できるなら、とことん楽したい!
術さえ解けばランチェスターがエリックだろうが、どこぞの馬の骨だろうが、どうでもいい。俺達の邪魔さえしな‥‥いや、邪魔をするならぶっ潰す‥‥義兄がね。俺じゃないよ? だって人には得手不得手があるでしょ? 俺は荒事が苦手なのだ。
‥‥面倒事は義兄に丸投げ。それが俺のスタンスだよ? わはは。
あ~そういえば、契約魔法のサインって魔力か血液だったよね? クリスフォードのサインはちょっとわからないけど、あの二人なら魔力で契約サインしてるはず。
…‥‥‥‥。
‥‥‥‥…。
‥‥‥‥‥…文字、吸えなくね?
!! 閃いちゃった!! だよね~だよね~、レティエルは魔力の吸える子だもんね! ちょっと吸血鬼っぽいけど、吸っちゃうし、出しちゃうし。
‥‥‥これは‥‥吸えちゃうねぇ? 吸っちゃう? 吸っちゃう?
…‥‥吸うでしょう。うん、吸うしかないよね!
「あぁ…‥若、手遅れかも知れないですねぇ、お嬢様」
「…‥…‥レティ、先ず考えている事を口に出そうか? お願いだからね?」
おー、この万能感! いいね~いいね~、ん? 義兄達が何か言ってるけど、聞こえなーい。
義兄が警戒してか、契約書を俺に渡そうとしない。それだといつまで経っても前に進まないでしょ?
俺に触らせなければ大丈夫とか思ってるでしょ? ふっふっふ~残念でしたー。
レティエルは魔力操作がお上手なのよ? テーブルを挟んだ程度の距離なら、問題ないよ?
馬車の中でエリックに抵抗した時に、覚醒しちゃったのだ。ふっふっふ、まさに不幸中の幸い。
義兄もこれは知らなかったみたい。出し抜けると思うと顔がニタリとにやける。
‥‥それで俺の動きが止められると? ふっふっふ、甘いね! えーい!
遠慮なく義兄が手にする契約書に魔力をぶつけた。効果音を着けるとすれば『ドーン!』て感じ? これ、意外と楽しいわ。
「え?」
「はっ?」
意表を突かれた二人、碌に対応できず『信じられない!!』って顔で固まった。
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