263 / 359
第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲
国名
しおりを挟む
グスターファルバ―グ王国。王国の名前です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
グスターファルバ―グ王国が国名。
そして、国王陛下の名をローレスト・フォン・グスターファルバ―グ。王家にはフォンが付く。これは『統治者に相応しい者』を表す、王国独自の名である。
「お義兄様、この方にフォンがありませんが、グスターファルバ―グを名乗ってます。これって」
「ああ、これだけなら王位継承権のない王家の者と思うね。でもね、王家に連なる者の中にも、貴族名簿にもこの名はないよ。…‥考えれるのは、隠された人物か、名を騙った詐欺師か。けれど契約魔法に偽名は使えないからね。それを思うと本名に間違いない。だが、この名は」
俺はその事実よりも、義兄が貴族名簿に記載されている貴族の名を覚えていた事に驚いた。常々、記憶力がいいなあと思っていたけど、常識外過ぎない? 頭の中の構造が人と違い過ぎる義兄だけど、使い勝手もいいのだ。何と言うか一家に一人?な便利さに手放すのが惜しくなる。いや、手放せないね。
驚きのあまり、ちょっと逃避しちゃったかな。
義兄が王家の現状について教えてくれる。
王家は今、王妃(死亡)とその子(廃嫡)がいない。第一側妃には第二王子と第一王女が。第二側妃には第三王子と第二王女がいる。第一王子脱落後、後継者争いは第二王子と第三王子の二人と言われていたが、最近ソレに変化が生じた。
なんと、第三王子と帝国の第二皇女の間に婚約の話が上がり第三王子が次期国王に一歩リードかと思われた…のだが。
『第三王子は帝国学院に留学予定である』この話で、第三王子は後継者から外された可能性を示唆する貴族が多いのだと。
当初、この皇女のお相手はライムフォードとされ、挨拶に帝国を訪問したのだ。王国側も仲介役の母さんも、ライムフォードの訪問は締結のためだと思われていた。でもそれが、蓋を開けてみれば、お相手は第三王子に代わっていたって。
‥‥母さんが激怒してたね、ライムフォードに対して。
ん? 後継から外された可能性って、第三王子は婿入りするの?
えっ? まだ決まってない? それってどういうこと?
この宙ぶらりんな感じ、なんと、ここで皇室の後継争いが関係してくるそうだ。
どういうこと?
この皇女は難ありと評されているのだが、同母腹の兄を推す派閥と正室の皇子を推す派閥が現在揉めに揉めているらしい。最終決定を下すのは皇帝だけど、それまでは皇子たちは実力を誇示しなければならない。割と弱肉強食な後継選別なのだって。うぇ‥‥怖っ。
第三王子との婚約が兄皇子の追い風になるのだろうか?
これがライムフォードであれば、かなりの追い風になったとガザが教えてくれた。皇帝陛下の覚え目出度き王国の第二王子ってのがライムフォードに対する評価だって。そりゃ、追い風も追い風だよね。
俺がのほほ~んと聞いていたら、『お嬢様も巻き込まれる可能性をお忘れなく』と釘を刺された。それってどういうこと?
後継者には本人の実力もあるが、伴侶の力や家の権力、そういった諸々が加算されての選抜。皇室どころか上位貴族あげての荒れ模様に陥るのだと。現に今がその状態。荒れに荒れた皇室だって。
ああ、だからお祖父ちゃんは王国内で足止めさせたのか。
暗躍や妨害工作とか、血生臭いことになってそう。くわばらくわばら。
おっと、話が逸れちゃった。
縁組の相手が変更された経緯は不明。政治的配慮とは思われるがなんせ、皇帝とライムフォード二人の話し合いだったらしく、内容を知る者が当事者しかいない。何たることか。これも例外中の例外。それだけライムフォードを買っているのだろうと義兄は苦虫噛み潰した顔で言う。
「実は私が帰国する前までは、第二皇女は我儘で思慮不足と評されていてね。ライムフォードに執着して追い駆け回していたかな? 私も何度か話したが、その時は色々足りない印象だったね。でもね」
ライムフォードに執着していた彼女が第三王子にすんなり鞍替えするのか引っ掛かっているのだと。それに淑女らしからぬ言動を繰り返す彼女だが、同母腹の兄を中心とした派閥貴族との結束は固い。それを見ても彼女の悪態は演技の可能性があるのでは? と語る。留学時代、興味がないの一言で皇女を視界から排斥。ライムフォードに降り懸かる火の粉は本人が払えば良いと本気で思ってたって。
‥‥うわぁ、側近候補だったのに、やる気なかったんだ。
今更ながら、義兄が不敬罪にならなくて本当に良かったとつくづく思う。
「帝国も王国も後継に関して何やら動きがあったようですね」
「えっ? ガザ、それどういうこと?」
思わせ振り発言は止めてよね。ちょっと睨んじゃったら、義兄が可愛らしく見つめるのは止めなさいと注意してきたけど、何だよ、不機嫌さの表明じゃん。
「これ以上は皇室の内情に繋がる。私達の範疇から逸脱するのは避けたいかな」
義兄の軌道修正で意識は王国、隷属の契約主と判断した人物に注視される。
俺はガザが何か掴んでいると思うのだが、ソレを突くと要らぬ災いを招きそうでちょっと怯む。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
グスターファルバ―グ王国が国名。
そして、国王陛下の名をローレスト・フォン・グスターファルバ―グ。王家にはフォンが付く。これは『統治者に相応しい者』を表す、王国独自の名である。
「お義兄様、この方にフォンがありませんが、グスターファルバ―グを名乗ってます。これって」
「ああ、これだけなら王位継承権のない王家の者と思うね。でもね、王家に連なる者の中にも、貴族名簿にもこの名はないよ。…‥考えれるのは、隠された人物か、名を騙った詐欺師か。けれど契約魔法に偽名は使えないからね。それを思うと本名に間違いない。だが、この名は」
俺はその事実よりも、義兄が貴族名簿に記載されている貴族の名を覚えていた事に驚いた。常々、記憶力がいいなあと思っていたけど、常識外過ぎない? 頭の中の構造が人と違い過ぎる義兄だけど、使い勝手もいいのだ。何と言うか一家に一人?な便利さに手放すのが惜しくなる。いや、手放せないね。
驚きのあまり、ちょっと逃避しちゃったかな。
義兄が王家の現状について教えてくれる。
王家は今、王妃(死亡)とその子(廃嫡)がいない。第一側妃には第二王子と第一王女が。第二側妃には第三王子と第二王女がいる。第一王子脱落後、後継者争いは第二王子と第三王子の二人と言われていたが、最近ソレに変化が生じた。
なんと、第三王子と帝国の第二皇女の間に婚約の話が上がり第三王子が次期国王に一歩リードかと思われた…のだが。
『第三王子は帝国学院に留学予定である』この話で、第三王子は後継者から外された可能性を示唆する貴族が多いのだと。
当初、この皇女のお相手はライムフォードとされ、挨拶に帝国を訪問したのだ。王国側も仲介役の母さんも、ライムフォードの訪問は締結のためだと思われていた。でもそれが、蓋を開けてみれば、お相手は第三王子に代わっていたって。
‥‥母さんが激怒してたね、ライムフォードに対して。
ん? 後継から外された可能性って、第三王子は婿入りするの?
えっ? まだ決まってない? それってどういうこと?
この宙ぶらりんな感じ、なんと、ここで皇室の後継争いが関係してくるそうだ。
どういうこと?
この皇女は難ありと評されているのだが、同母腹の兄を推す派閥と正室の皇子を推す派閥が現在揉めに揉めているらしい。最終決定を下すのは皇帝だけど、それまでは皇子たちは実力を誇示しなければならない。割と弱肉強食な後継選別なのだって。うぇ‥‥怖っ。
第三王子との婚約が兄皇子の追い風になるのだろうか?
これがライムフォードであれば、かなりの追い風になったとガザが教えてくれた。皇帝陛下の覚え目出度き王国の第二王子ってのがライムフォードに対する評価だって。そりゃ、追い風も追い風だよね。
俺がのほほ~んと聞いていたら、『お嬢様も巻き込まれる可能性をお忘れなく』と釘を刺された。それってどういうこと?
後継者には本人の実力もあるが、伴侶の力や家の権力、そういった諸々が加算されての選抜。皇室どころか上位貴族あげての荒れ模様に陥るのだと。現に今がその状態。荒れに荒れた皇室だって。
ああ、だからお祖父ちゃんは王国内で足止めさせたのか。
暗躍や妨害工作とか、血生臭いことになってそう。くわばらくわばら。
おっと、話が逸れちゃった。
縁組の相手が変更された経緯は不明。政治的配慮とは思われるがなんせ、皇帝とライムフォード二人の話し合いだったらしく、内容を知る者が当事者しかいない。何たることか。これも例外中の例外。それだけライムフォードを買っているのだろうと義兄は苦虫噛み潰した顔で言う。
「実は私が帰国する前までは、第二皇女は我儘で思慮不足と評されていてね。ライムフォードに執着して追い駆け回していたかな? 私も何度か話したが、その時は色々足りない印象だったね。でもね」
ライムフォードに執着していた彼女が第三王子にすんなり鞍替えするのか引っ掛かっているのだと。それに淑女らしからぬ言動を繰り返す彼女だが、同母腹の兄を中心とした派閥貴族との結束は固い。それを見ても彼女の悪態は演技の可能性があるのでは? と語る。留学時代、興味がないの一言で皇女を視界から排斥。ライムフォードに降り懸かる火の粉は本人が払えば良いと本気で思ってたって。
‥‥うわぁ、側近候補だったのに、やる気なかったんだ。
今更ながら、義兄が不敬罪にならなくて本当に良かったとつくづく思う。
「帝国も王国も後継に関して何やら動きがあったようですね」
「えっ? ガザ、それどういうこと?」
思わせ振り発言は止めてよね。ちょっと睨んじゃったら、義兄が可愛らしく見つめるのは止めなさいと注意してきたけど、何だよ、不機嫌さの表明じゃん。
「これ以上は皇室の内情に繋がる。私達の範疇から逸脱するのは避けたいかな」
義兄の軌道修正で意識は王国、隷属の契約主と判断した人物に注視される。
俺はガザが何か掴んでいると思うのだが、ソレを突くと要らぬ災いを招きそうでちょっと怯む。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」
***
ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。
しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。
――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。
今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。
それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。
これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。
そんな復讐と解放と恋の物語。
◇ ◆ ◇
※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。
さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。
カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。
※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。
選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。
※表紙絵はフリー素材を拝借しました。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる