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第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲
ちょっと頭の中を整理したい。
しおりを挟むはぁ‥‥疲れた。何故かどっと疲労が押し寄せる。
お茶をコクリと飲み、マフィンをぱくりと頬張り、話を聞くだけのお気楽お嬢様やってたけど‥‥。意外にも驚いたり呆れたりと感情の起伏が多くて、どっと疲れたのだ。
…‥淑女教育の賜物で感情を露にしないお嬢様の仮面が、義兄やお調子者のジェフリーと過ごすうちに取り繕うのをすっかり忘れた。まぁ、いっか。少々言葉遣いが崩れても、砕けた態度をとっても怒らないから甘えちゃうよ?
と、どうでもいいことを思いながら、再びスイーツに手を出す。ふふ、レティエルのために用意したんでしょ? だったら遠慮なく、いただっきまーす♪
もぐもぐ、もぐもぐ、もっぐもぐ。ごっくん。
あ~、五臓六腑に糖分が行き渡るぅ~、幸福~。
糖分補給もばっちり。今のうちに幾つかの疑問をすっきりさせたい。
「お嬢様~小動物になってますよ~意地汚く頬張らなくても誰も取りませんって」
「ふふ、レティ、好きなだけお食べ。ふふ、お茶も」
そう? じゃあ、遠慮なく。もぐもぐもぐもぐ。
ジェフリーお前なぁ‥‥あ、これ美味しぃ。
‥‥ふむふむ、最大の謎は魔物や魔力を含む草植物の類が発生しない特殊環境の王国だよね。地形の問題かな。王国の地形を想像…って地図がないからわかんない。ねぇねぇ地図ある?
えっ? 地図って機密情報?! 地図を知る者って領主か王都の騎士団の指揮官クラス? 帝国で言えば軍部の‥‥へーそうなんだ。
‥‥‥ん? あれ? ジオラマ見たよ? あれれ??
俺の疑問が形になる前に、話が進む。
「ライムフォード殿下が側近達に薬草栽培の候補地の調査を行わせた結果、王都も周辺の土地も側近達の領地も魔素が検出されなかったと聞いている。勿論、神殿は調査対象外だよ」
あっ、またもや神殿。何か引っかかる。
「王国って魔物がいないのは守護神の代理である国王陛下と王妃の威光だと、あり得ないですよね~。堂々と嘯くんで、笑っちゃいますよね~、ははは~」
お前も隠す気ないね。まぁ不敬罪に問われても助けないから別にいいけど。
…‥そう、これも気になる。でもこの話の信憑性云々は、魔道具の有無を調べることからだよね? それにいつから? 有史以来って訳じゃないんでしょ?
「魔物の不可解な行動は、確か数代前の国王からだと文献に記されていたと記憶します。それ以前となると、不勉強で誠に申し訳ございません」
ガザは殊更申し訳ない表情で謝る。帝国の史書か何かだろうか。
「…‥そう言えば、軍部の諜報員‥‥ですが、確かあの男、以前に調査を行った者でした。うっかり失念しておりましたが、間違いありません。あの男に尋ねれば何か分かるかも知れませんね」
今頃思い出したと嘘っぽい言葉で誤魔化し、然も良い提案とばかりに接触を促す。
‥‥あの男って、この領地の廃村で出会った軍部の奴だよね? 捕縛しようとして義兄に返り討ちに遭った男だよね? アレに聞くの? 人選ミスじゃね?
義兄もガザの強引さに眉根を上げて何か言いたげだ。義兄的にも変だと感じたのか。それにしても義兄をスルーするガザも大概だね。
「各国の調査員は絶えず注視しています。勿論帝国もです。諜報部が情報を入手した可能性を考慮し一度軍部の者と接触を図りませんか? あの男はカレンシア様と王都に向かう道中護衛を兼ねていましたから、道中のご様子を伺ってみるのも宜しいかと」
え? 母さん? ガザの思わぬ言葉に思わず俺と義兄は視線を合わす。その言葉の裏を読み取ろうと義兄は一瞬ガザを見、また俺に視線を戻した。母さんは親父の元に戻って今は大人しく謹慎してる筈? あっ、ちょっと急に不安になったかも。大人しくしてるよね? してて欲しい。切に願うわ。
「それは、此方の情報をまとめてから考えましょう。まだ、私達は何一つ解決に繋がる確固たる情報を得ていません。ガザも惑わす言葉は止めなさい。それともそうしろと命を受けたのですか」
うわぉ、静かだけど義兄の低音ボイス。ちょい怖くてビビる。怖くて思わず義兄から目を逸らした先にぷるぷる打ち震えるジェフリーが目に映る。うわぁ‥‥‥‥
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