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第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲

回復薬事情ー③

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…‥‥おおぅ、いろいろ、そう、いろいろと考えさせられる内容だった。

…にしても、ズブズブな関係だったの? 犯罪組織と神殿って。

それに回復薬の横領を盗難に摺り変えた王家も、神殿とズブズブな感じ? 
政治的配慮なのか、ズブな間柄だったからか、どちらにしろ神殿は守られた。

まぁ、王家と神殿ってある意味一蓮托生だよね。だって国王と王妃は守護神のご加護の下、神の代理人の位置づけで国を統治していることになってるし。
真偽は不明だけど、王家と神殿が協力体制であることに変わりはない。
やっぱ王家は神殿を守るわけか。うう…ん、仮に神殿が悪事に手を染めても、王家が庇っちゃう? 咎める機関ってないよね? 

別に勧善懲悪する気はないけど、何だかな‥‥。



しかし、優等生のイメージが強い第二王子殿下が隠蔽ねぇ、これは意外だった。
だけど、義兄にしっかりバレてちゃあ隠蔽とは言えないよね?
うーん、もしかしてこれって第二王子殿下的にはバレていい事件だったの? 
それとも義兄なら裏切らないと?


ちょっとそれはどうかと思うな。幾ら家臣と言えど相手見ようよ。

義兄を信じちゃったの殿下? 先ずはそこを疑おうよ。信じたい気持ちもわかるけど、迂闊すぎない? あの人、条件次第でコロッと裏切ると思うよ? あんま陛下に敬意払って無いし、王家への忠誠心は建前で実際は公爵家に向いてるからね。現に俺やガザが悪感情抱くのわかってて、バラしちゃってるし。

…‥あ~、何となく‥‥何となくだけど、殿下って敢えて完璧に隠蔽しなかったのでは? 実は神殿の悪事を暴きたくても出来なかった。だから義兄にもろばれな揉み消しをしたのではなかろうか。
でも、義兄は利があると言ってたよね。

…‥う~ん、頭を捻っても、何も浮かばんわ。




「お義兄様、回復薬は盗難されたって、神殿の主張を王家が認めたのよね? それって本当に殿下が利を得たいからなの? 王家と神殿が結託した間柄だから庇ったのではなくて?」

恐らく、義兄にしてみれば悪人を成敗するより、恐喝ネタにすれば後々使えると判断して黙秘したのだろう。多分、回復薬の横流しは神殿の組織的犯行な気がする。個人の横領だったら盗難として処理せず犯人として検挙すれば王家に借りを作らなくて済む話だろ。‥‥違う?

義兄は『どうだろうね』とさらりと躱した。答える気がないことはわかった。


…‥義兄が俺に隠し事するのっていつものことだし。まぁ、いいか。




それより契約魔法血の盟約だ。


陛下と公爵当主達の件を神殿は知ってた。それって契約魔法を行使したの神殿の人ってこと? 回復薬を作るぐらいだもの、やれる人がいたの?

公爵達を契約魔法で縛りつけた真意は何だろう。

国王と王妃は守護神の代理人と神殿のお墨付きだ。神殿の後ろ盾だけでは足りなかったのかな? 自分の統治を盤石にするため、絶対的な臣下が欲しかったのだろうか。


「ねぇ、お義兄様、神殿が契約魔法を知っているってことは術者は神殿の人なの?」

もし神殿に術者がいるのなら、とっ捕まえたい。

「レティ、契約魔法の手順をジェフが教えたと聞いたのだけれど‥‥違ったのかな?」

ギロッとジェフリーを睨んだ義兄の目付は凶悪だった。ちょっ、ぶるっちゃう!
ジェフリー、ビビったな? ざまあみ‥‥あ、ぷるぷる喜んでたわ。


「レティ、雇用や商業用契約魔法の魔法陣は誰でも行使可能なのは知っているよね? 術者は契約者同士で領主や公的機関の役人の前で行い、使う媒体は当事者の魔力か血液で事足りるからね。それから、少し規模の大きい国対個人や国家間の場合は、手続きが若干煩雑と必要な魔力量が多いだけだから」

あ、そうか。ハード面は定型化されてて、ソフト面が自由采配ってことね。
ペナルティーもカテゴリー化されてるのか。ふむふむ。
『責任は命で払え』ってヤクザな感じなのと、『命大事なら大金払え』って、ハングレな感じと、『命も金も払えねぇってなら、身体で払って貰おうか』って、破落戸な感じに分けられるのか。成程。この中からチョイスなわけか。ふむふむ。


「あ~、若。お嬢様のお顔、ご理解してなさそう‥‥」
「レティに契約魔法を結ばせない。血液採取させない。これを徹底させなさい」
「ですよね~、取扱い注意事項の最上位にしときます。専属達に徹底的に教え込んどきます」


ゴチャゴチャ煩い二人の声は、考え事をしていた俺の耳に入ることはなかった。
そんな俺達を黙って見つめるガザが何を思い考えていたのか知ろうともせず、今しがた聞かされた話に意識を向けていた。


‥‥術者は契約者同士。なぁんだ、神殿は知っていただけかぁ。はぁ、俺が親父のを解くしかないわけね。よぉし、がんばろ。

術者とっ捕まえてボコる案をポイっとした俺は、面倒だけど自分が頑張ると決意を改めた。
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