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第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲

回復薬事情ー①

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俺の些細な疑問を帝国の回復薬事情を例に説明してくれた。端折った説明だが概要さえわかればいいのだ。これは、王国と帝国を良く知る義兄さまさまである。レティエルは魔法に関して情報弱者の自覚はある。まぁ、あくまでも一般論だと念打ったのが気になるっちゃなるけど。


魔力持ちに欠かせない回復薬には、通常上級・中級・下級のランクがある。分け方は勿論、品質・効能・効果によるらしい。期待値の差だろうか。どのランクも回復薬と銘打つ以上、魔力と体力を回復させるだけで病気や怪我を治すわけではない。

こうして聞けば、回復薬のイメージが栄養ドリンクになっちゃう。それか飲む点滴に造血剤? 魔力って血液に宿るでしょ? 

もっと詳しくと強請りたい気持ちを抑え込み、タッカーソン家とザックバイヤーグラヤス家の関りを知らねばと気を引き締める。

‥‥俺の悪い癖で、ちょっと興味を惹かれたら意識がそっちに向いちゃう。




前述以外にもレジェンド級で、秘薬と謳われる特級があるそうだ。えぇ~何それ。都市伝説っぽくて惹かれる。聞けば、ほぼ万能な回復薬。光系統の治癒魔法と同じレベルで人を癒し怪我や欠損の修復可能と聞けば驚異的な威力、垂涎ものだ。


『タッカーソン家が幻の秘薬を研究している』

これは回復薬や調合薬に定評のある一門に科せられた宿命だと。めっちゃ重圧。当家を始め帝国人であれば誰もが抱く重い期待。そう聞かされるとタッカーソン家のプレッシャーは生半可なものじゃないと窺い知れた。何となくヴォグルフが誘い出された訳もここに尽きるのでは? お節介だが気持ちを推し量ってしまった。

…‥ああ、きっと捗らない研究仕事に逃避したくなったのか。脳裏に草臥れおっさん化したダルさんとヴォグルフの姿が重なった。うわ~悲惨。


『治療に関しては今も昔も回復薬頼み』

その原因は、治癒魔法や回復薬が長きに渡り絶大な効果を発揮した弊害か。過去の良い面だけ引き摺った感じ。
己の自然治癒力を高め病を跳ね除け修復や再生能力が発揮できていれば、よかったのかもだけど、現実は違う。

治癒魔法の使い手が減少し、益々、回復薬に傾倒していった。
魔力含有量の多い素材を調合師の魔力でもって精製する回復薬。優れた調合師が齎す効果は秀逸とくれば依存が加速度的に増したと考察できる。まぁ確かに飲めば回復するんだから、楽だよね。

その当時の回復薬は特級に及ばなくとも怪我が治せたらしい。どこまでの怪我か知らないけど、それは凄いわ。回復薬に縋っちゃうよ。

タッカーソンも、元は治癒者を多く輩出した一門、それが今や回復薬の老舗である。

‥‥本当に治療魔法の使える人っていないんだ。




それにしても。魔力保持者がほぼいないとされている王国で、回復薬の製造・販売の最大手であるタッカーソン家の息子が監禁されていた。しかも犯人はザックバイヤーグラヤス公爵だと。疑惑は晴れたが疑問が残る。一体どんな理由で冤罪ぶっかけたのか。腹が立つ。
この犯人、俺達に喧嘩売ってるよね? 

‥‥お祖父ちゃんも俺達に伝えてくるとは。これはもうお尻に火をつける気満々だよね、お祖父ちゃん! こうなりゃ、意地でも隷属解術してやる! 




ふぅー
長々と回復薬のウンチクを聞いてもね。調合させて欲しい‥‥じゃなくて。義兄もガザも核心を避けてない? 順を追っての説明と言われればそれまでだけど。



「…‥お義兄様、我が家はタッカーソン侯爵家と商取引していましたの?」

我が家って、タッカーソン印の回復薬使ってたっけ?
俺の冴えないお頭おつむで捻り出せたのは、製造販売元と消費者の関係。商売上のトラブル? 

レティエルは魔力不足に陥ることなく健やかに過ごしていたので回復薬の服用経験はない。逆に体内循環させた魔力を吸い取っていたぐらいだよ?(チョーカー型魔道具で)
考えられるのはお祖父ちゃんが寄越した専属達。それに義兄に付いてきたメンバーと母さんの専属ぐらいじゃないの? 魔力使う人って。


義兄曰く、先代から公爵の回復薬はファーレン家から購入。これは母さんと親父の婚姻によるものと俺でもわかる。領主として緊急用を確保しただけで、営利目的じゃないらしい。商売敵と誤解を受けないための処置だって。えっ? 誰に配慮してんの??
現在の公爵は、義兄指導の下、専属達が調合。レティエルの回復薬は義兄が担当なのでタッカーソン家と関りは一斉ないと断言する。‥‥ひえっ、知らなんだ。

‥‥ん? じゃぁ、それ以前は? 自領で作ってたの? それとも国産を購入?

聞けば聞く程、タッカーソンとの関りが一層見えなくて困惑する。



「若君、調査中でございます」
「…‥ああ、そうだったね」

確かに。闇雲に疑っても正解はでない。それはわかる、だが、ガザの醸し出す雰囲気が、俺達に推理をさせない意図を感じたのだ。安易な推理は怪我するぞと。彼の苦言は只の注意なのだろうか。俺の杞憂であればいいのに。


‥‥それにしても、俺達と言うより義兄に釘を刺した感じ。まさか、まだ隠し事が?

これでは暗にタッカーソン家と因縁があると言っているも同じじゃない? 現在、調査中なのって本当なの? どうしてガザは中途半端な情報を教えたのだろうか。元は俺達に協力させる気だったでしょ? それにしては今、釘、刺したよね? ガザの態度、これもお祖父ちゃんの指示かと思うと複雑な気持ちだよ。



ガザもこれ以、上発言する気がないのか考えがあるのか。口を閉じた。義兄もだ。あれは何か考え始めたな。

…‥う~ん、ザックバイヤーグラヤス家と言うより、義兄と関わりがあったりして。義兄って回復薬も作れるんでしょ? もしかしてライバル視されちゃった、とか?



「では、ガザ。調査が終了すれば報告しなさい。いいわね?」

取り敢えず今はこれぐらいしか…‥。











「…‥レティ、次は王国の回復薬事情を説明するね。あと、共同研究も…‥」

はっ?! 共同研究?! 
…‥あ、そう言えば留学中、第二王子と何か研究がうんちゃらかんちゃらって言ってたな。ごめん。レティエルの断罪イベントを乗り越えるのに必死だったせいで、うろ覚えだわ。
もしかしてそのことと関係が?


徐に口を開けた義兄、タッカーソン家との因縁でも思い出したか?

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