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第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲
従順
しおりを挟む「…ねぇお義兄様、ギルガの姿を見かけないわ、あの人どうしたの?」
「…用事を言い付けていてね。彼がどうかしたの? 何か用でも?」
ギルガの名を聞いた義兄の静かなる圧が室内に加重される。重苦しい。
‥‥うえぇーー、アイツ何やらかしたの?!
「…‥‥用‥‥ではなくて、ただ見かけないわと思っただけよ?」
尋ねたのはギルガを心配して…‥ではない。
他のメンバーはチラホラ見かけるけど、彼だけ見ないのだ。
最後に彼を見たのは手の紋章を返した時だったかな? 時折向けられる恨みがましい視線がうざくて返した。義兄的に無償で返却は勿体ないと思ってたかもだけど、あこぎすぎ。元は悪戯心でやらかしただけだよ?
その後から、…ああ、私室でわかれてからだ。
あれから一向に姿を見せないギルガは生きているのか死んでいるのか。
…もしかして消されたんじゃ?! と背筋を冷やっこくしたもんだ。
聞いちゃって何だけど、もし『ぽい処分しっちゃったよ、それが?』って鬼畜な答えを返されたらどうしよう‥‥と。ビビり半分興味半分な俺がいた。
コホン。空咳で仕切り直して、魔法陣の男の説明を求める
好物のバウムが良い感じに腹に納まり、背筋の冷やっこさも消え去った。
これからキナ臭さろうがグロかろうが、聞くに堪えない話でも構わない。ご褒美スイーツが先になっちゃったかもだけど。耐えられるはず?
レティエルの癒しなゆる顔では場が引き締まらんね。ここはしっかり表情筋に活躍して頂こう。キリリ! では説明を求む。どうぞ!!
堪らず、噴き出した義兄が誤魔化すように説明を始めた。
「彼は聞き分けの良い人物でね。私達の質問にも素直に答えてくれたよ。ふふ、協力的なのは誰に助けられたか理解しているからだろうね。物わかりが良くて助かるよ」
聞こえはいいけど、それ本当だろうか?
…‥聞き分けが良い? 協力的? 物わかりが良い? ちょっと胡散臭い笑みを浮かべるジェフリーを見る限り、希望的観測の発言だよね? それ。
‥‥まぁ、いっか。
「ただ、残念なことに隷属の契約魔法の性質上、身元に繋がる情報は得られないで終わったよ。…‥だけど除去した魔法陣で彼がタッカーソン侯爵家の縁ある者と判明したのは、レティが頑張ったおかげだね。ありがとうレティ」
「ふふふ、お役に立てて光栄ですわ」
俺のおかげね!! あっ、もしかして好物はそのご褒美?!
義兄の説明でわかったのは、タッカーソン侯爵家の主幹産業が回復薬や薬剤の調合販売。薬草の栽培、希少価値の高い薬草を中心に栽培、販売も行う謂わば治療系のお家柄。治癒魔法の担い手が居ない現代、回復薬や調合薬剤は治療の要。そんな家門の研究者なのが、件の彼だった。
彼に施されていた魔法陣は、情報漏洩防止に能力の制限に関するもので。持って生まれた力を一門のために使うよう命令されていたそうだ。
それについては、雇用契約と違い一方的に科せられたと暴露したので、相当腹に据えかねていたのだろう。俺達に協力的な真意は恨みからじゃなかろうか。
端的な説明を終えた義兄だが、まだ何か言いたそう。
俺は首を傾け、義兄の戸惑う様子を窺っている。
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