241 / 361
第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領
七つ野郎は七つじゃなくなった(期間限定)ー①
しおりを挟む
不安を拭うかのように義兄は言う。
「レティ、この魔法陣は正式な契約魔法の類で禁術じゃないから安心して」
「禁術じゃなかったのね! 良かった」
俺達は顔を見合わせホッとした。義兄も自衛のためだと割り切っていてもレティエルに禁術を触れさすのは抵抗があったのだろう。暫しの安堵だ。
だが禁術でなくとも七つの魔法陣は尋常じゃない。効力の強い魔法陣一つで事足りる話なのだ。考えられるのは、余程機密性の高い情報か。契約者が偏執者、もしくは強迫観念の強さからか。義兄も判断に困っている。
「この魔法陣は‥‥守秘契約の類だけど、よくもまぁこれだけ施したものだ。呆れたね。流石は高位貴族の一門だけあって金に糸目は付けないのか」
義兄はやれやれといった表情で「これは面倒事を押し付けられたね」と苦言を零した。どういうことか尋ねると苦笑交じりに「本人に聞いてみようか?」と誤魔化す。まぁ確かにその方が確実だ。
最初の抵抗が嘘のようにスルッと障壁は撤去できた。あの抵抗は微量な魔力が原因だったのか。魔力の多いレティエルは難なくその抵抗を抑え吸い取った。
魔法陣が禁術ではなくて、一門専用の契約魔法だと判明したのも大きい。精神的負荷が軽減したのだ。扱う魔力に躊躇いはなくなった。
術に抵抗できるほどの魔力量の差があれば、その差が抗う力となり術を跳ね除けると教わった。知らなかった。普通は相手の魔力量を比較できないから無抵抗で終わるらしい。『かかった振りも出来ますよ?』軽いノリで言わないでよね。あくどい顔が隠しきれてないよ?
吸引した魔力は全て魔石に移し義兄に押し付けたら今日の業務は終了である。
魔石片手にニヤリと笑う義兄‥‥あっ、企みの顔!
『レティの協力が不可欠』と口角を上げ切った義兄の笑みは悪魔だった。怖っ!
これは、アレだ、意趣返しを狙ってるな、間違いない。
漸く、七つ野郎はただの野郎に格下げされた。
彼は帝国貴族の一門出身者らしい。契約魔法の様式がとある貴族家のものだと判明。普通は家門の契約魔法術って秘匿内容の筈だけど‥‥何故義兄が知っているのかは、聞いちゃいけないやつだね、うん聞かないよ俺は良い子だからね!
今夜はここまで。
一旦、契約魔法を解術したのは義兄が情報を抜き取る為。必要情報を得れば再現するのは決定事項なのだ。でなければ勝手に解いたレティエルが犯罪者になっちゃうからね。
交渉材料にするには不適切な代物、使い処に旨味がないとジェフリーがほざいていたわ。
名門の契約魔法で禁術ではないとわかった以上、深追いは不要。隷属の契約を結ばされた事情は聞けないだろうが、何か掴めるかも知れない。事情聴取の目的は隷属の使い手の情報を得るため。レティエルのためなのだ。
寝台に横たわり気持ち良さげな寝息を立てるこの男に憐憫の情を抱く。良い夢見てそうな顔だけど‥‥そのうち悪夢に代わるから。
これから行われる義兄達の職質‥‥もとい、尋問を想像して身の毛がよだった。
‥‥一つでも義兄が喜びそうなネタ持ってるといいね。
「レティ、この魔法陣は正式な契約魔法の類で禁術じゃないから安心して」
「禁術じゃなかったのね! 良かった」
俺達は顔を見合わせホッとした。義兄も自衛のためだと割り切っていてもレティエルに禁術を触れさすのは抵抗があったのだろう。暫しの安堵だ。
だが禁術でなくとも七つの魔法陣は尋常じゃない。効力の強い魔法陣一つで事足りる話なのだ。考えられるのは、余程機密性の高い情報か。契約者が偏執者、もしくは強迫観念の強さからか。義兄も判断に困っている。
「この魔法陣は‥‥守秘契約の類だけど、よくもまぁこれだけ施したものだ。呆れたね。流石は高位貴族の一門だけあって金に糸目は付けないのか」
義兄はやれやれといった表情で「これは面倒事を押し付けられたね」と苦言を零した。どういうことか尋ねると苦笑交じりに「本人に聞いてみようか?」と誤魔化す。まぁ確かにその方が確実だ。
最初の抵抗が嘘のようにスルッと障壁は撤去できた。あの抵抗は微量な魔力が原因だったのか。魔力の多いレティエルは難なくその抵抗を抑え吸い取った。
魔法陣が禁術ではなくて、一門専用の契約魔法だと判明したのも大きい。精神的負荷が軽減したのだ。扱う魔力に躊躇いはなくなった。
術に抵抗できるほどの魔力量の差があれば、その差が抗う力となり術を跳ね除けると教わった。知らなかった。普通は相手の魔力量を比較できないから無抵抗で終わるらしい。『かかった振りも出来ますよ?』軽いノリで言わないでよね。あくどい顔が隠しきれてないよ?
吸引した魔力は全て魔石に移し義兄に押し付けたら今日の業務は終了である。
魔石片手にニヤリと笑う義兄‥‥あっ、企みの顔!
『レティの協力が不可欠』と口角を上げ切った義兄の笑みは悪魔だった。怖っ!
これは、アレだ、意趣返しを狙ってるな、間違いない。
漸く、七つ野郎はただの野郎に格下げされた。
彼は帝国貴族の一門出身者らしい。契約魔法の様式がとある貴族家のものだと判明。普通は家門の契約魔法術って秘匿内容の筈だけど‥‥何故義兄が知っているのかは、聞いちゃいけないやつだね、うん聞かないよ俺は良い子だからね!
今夜はここまで。
一旦、契約魔法を解術したのは義兄が情報を抜き取る為。必要情報を得れば再現するのは決定事項なのだ。でなければ勝手に解いたレティエルが犯罪者になっちゃうからね。
交渉材料にするには不適切な代物、使い処に旨味がないとジェフリーがほざいていたわ。
名門の契約魔法で禁術ではないとわかった以上、深追いは不要。隷属の契約を結ばされた事情は聞けないだろうが、何か掴めるかも知れない。事情聴取の目的は隷属の使い手の情報を得るため。レティエルのためなのだ。
寝台に横たわり気持ち良さげな寝息を立てるこの男に憐憫の情を抱く。良い夢見てそうな顔だけど‥‥そのうち悪夢に代わるから。
これから行われる義兄達の職質‥‥もとい、尋問を想像して身の毛がよだった。
‥‥一つでも義兄が喜びそうなネタ持ってるといいね。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる