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第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領
無効化ー② 七つの魔法陣
しおりを挟む球体は変異した魔力を供給源として単独で存在する。
魔法陣は個別のよくわからない契約が施された術。
‥‥そして俺は、解術に奮闘中。
この厄介な術を解くのに目途がついたからか、ちょっと冷静さを取り戻した俺は、もう一つ、厄介な問題に気がつい‥‥いや、思い出した。
それは『契約魔法を正規な手段以外で解術するのは違法』『禁術は研究も禁止』(byジェフリー)‥‥確かそう教わった。
これの対処をどうするのか。それが知りたい。そう指摘すれば、義兄は一瞬驚いた顔を見せたが、直ぐに柔和な面持ちで大丈夫と方法を明かしてくれた。
「簡単な話だよレティ。術を解いたのはこの地の領主だからね? 私達は無関係、そもそもこの邸に私達は立ち寄ってもいない。いいかい? 私達は禁術などと悍ましい術は知らないからね? ふふ、何の問題もないよ?」
おおおお‥‥おぉぅ? 何て? まさかのスケープゴード?!
「若~、お嬢様、ご理解されていないようですよ~、元王族の利用価値なんて他人に好い様に利用されるぐらいしかないのにね~」
「レティは純粋で優しい子です。お前のように腐った性根ではありません」
「お褒め頂き恐悦至極です」
「まったくお前は‥‥はぁ、レティへの説明は後日にしましょう」
「ですね~」
二人がごちゃごちゃと煩い。よくわからないが既に計画は立案済みらしい。
そうか、抜かりがないようで大変宜しい。
そういえば昨日見かけたダルさん。
何と言うか‥‥後姿が草臥れたリーマンを彷彿させていたなぁ、あれって‥‥『精神干渉』の文字が脳裏に過る。
帝国軍の諜報員なのに、めっちゃ好い様に義兄に扱き使われてる? 哀れダルさんご愁傷様です‥‥俺は心の中のダルさんにそっと手を合わした。
「ではレティ、手順通りにね」
よし! 何かよくわからんうちに心の憂いが無くなった!
気が楽に、序でに気分も上がるわ!
「は~い、お任せをお義兄様」
「お嬢様~調子に乗って暴走させないで下さいね~」
しねえよ!
ーーーーーーーーーーーーーー
結果で言えば、魔法陣の撤去完了‥‥です。
球体を後に回したのが功を奏したのか。
完了するまでゴチャゴチャしたけど、実際、取り掛かれば俺の予想通り、吸引はあっけなく終った。ふはは、レティエル、最強じゃん!
自己満で悦に浸る俺に呆れた視線を向けるジェフリーは毎度の事だ。
きっとあれは賞賛の眼差しを照れが邪魔するのだろう。素直じゃないね。
勿論、義兄は絶賛賞賛中。こちらは素直すぎる。君ら二で割れば丁度いいのに。
その時の様子を思い返す‥‥
方法は、魔力供給器官と結合していた箇所を俺の魔力で塞いで供給を遮断。初めの計画通りだよ。これについて義兄は疑死状態にしたと教えてくれた。
おおぅ、そんな意味があったのね‥‥なるほど?
「お嬢様~魔力供給器官から魔力が流れないってことは死んじゃうことですよ? 供給が絶たれた時に、魔法陣の残量魔力が持続可能にさせるか、させないか。機能停止にさせる術式が組み込まれていればこの時点で停止です‥‥この場合どちらでしょうね?」
ああ、そういうこと。成程。これは様子を見るしかない?
「供給を止めてからが細かな作業が必要となる。これはレティに負担を強いてしまうかな? ごめんね」
愁いを帯びた流し目で謝らんとって! まじイケメンの顔面破壊力半端ねぇな。ジェフリーは‥‥もういいや。
義兄はその都度、指示を出す方針にしたのか、一度に説明しても俺の性格上、端折って自己流にしちゃうからだろうか。的確に俺の性格を読んでいるね。
「続けるのなら、これから先の手順を説明するよ?」
魔力供給を止めたので障壁と魔法陣の状態を再確認する。単独の球体には手を付けない。
もう魔法陣の暴発や誤作動の心配は不要だろう。初見の躍動感が今はないのだ。本当に供給が止まれば機能を停止した。‥‥わぉ、合理的。考案者は頭でっかちで情緒を育む手間を惜しんだのだろう。要は人でなしだ。
「レティ、障壁の外側を吸引してみようか? 初めは極僅かな量でね?」
「ふふ、心配性ですわね~」
魔力供給の遮断のおかげで、もう抵抗なくいけた。ゴボッと吸っちゃったけど、まぁいいだろう。問題ないね~
「あ~お嬢様~、ゴボッと吸いましたね~、お顔でバレてますよ~」
こらっ、バラすなよ!
ジェフリーとのやりとりを無表情で見ていた義兄が空間収納の財布から何かを取り出した。おや? 次の指示?
‥‥ん? ひとつは魔石だよね? あとは、紙とペン? それで何するの?
工作でもさせるつもり? イマイチ義兄の考えが読めん。
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