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第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領
三人もいる。
しおりを挟む「球体もだがそれが放つ不気味な気配は何だろうね? レティ、この際だから他の者も調べて見ないかい?」
義兄がワクワクと弾んだ声色で催促めいた提案をした。興味が隠せていないよ?
「参考事例は一つでも多いのがいいからね? と言ってもあと二例しか入手できないかな。まぁ無いよりかはましか‥‥」
さっきとは打って変わって心底残念な顔。やっぱワクワクしてたんだ。
「ああ、レティ、後の二人は詮索だけで術を解く必要はないよ? そのまま放置すればいい。利用価値があれば、交渉材料に使えるからね?」
ニヤリと悪い笑顔なのに、楽しそう。
それにしても、解術は餌だったか。利用価値を見出せない場合は放置かよ。
…‥あれ? じゃあ、この男は? 解くのが前提だったよね? 例外? 価値がある人なの? 知ってる人?
「ふふ、果たして禁術を施された者は皆等しく球体と魔法陣を有しているのか?これは大変興味深くて…面白い。ククク」
うわぁ‥‥何か変なスイッチが入った?!
‥‥普段お世話になっている義兄の希望を叶えようかと思いました。
ヤバそうで怖いからじゃないよ? 俺もちょぉぉと興味あるし。
お隣の女性と別にもう一人、得体の知れない不気味な物を体に飼ってるって。
聞いた話では、隷属の契約は珍しい特殊ケースに充るのじゃなかった? この邸だけで三人だよ? 遭遇率高くない?!
「若~、お嬢様~、直ちに準備します~お待ちください~」
お前も、ワクワクしてんじゃねーか!
直ぐにお隣の女性が‥‥ハイデさんに米俵のように肩に担がれて部屋に入って来た。その姿に驚く。軽々しく睡眠中の成人女性って担げるものなのだろうか。
どう見ても担がれた女性は軽量ではないだろう、結構ボリューミー…お胸とお尻がね。と失礼なことを考えていた俺に『身体強化をしています』と武人らしい答えだ。
徐に寝台の上にゴロンと女性を放り投げたハイデさんは良い笑顔で『ご存分に』と俺に?義兄に? 進呈して出て行った。
‥…生贄っぽいーー!
‥‥あっ、身体強化が何か聞くの忘れた!
もう慣れ切った俺はサクサク詮索開始。そして終了。多分、瞬き数回ぐらいの時間で終わったね。さすが俺。
「この方は球体だけ。魔法陣は一つもないわ」
「ふむ、あの男は七つの魔法陣と球体で、この女は球体のみ。ならば球体が本体と見るべきか?」
…‥わぁ! 正解に出くわした?!
「さしずめ魔法陣は秘匿すべき情報を隠すためか‥‥」
「お義兄様? それでしたら隷属の契約で十分では?」
「う~ん、仮説だけれど、魔法陣が先の契約魔法かも知れない。隷属はその後‥それこそ騙されたか‥‥」
「ええ? ではこの人、二重に心の臓に魔術を掛けられているの?」
仮説でも気の毒な話だろう。どんな不運な男なのかと素性に興味が湧いた。
「‥‥と言うことは、女より男に価値があったわけですね~」
「えっ? どういうこと?」
男尊女卑的な発言かと思えば、違うらしい。単に術者にとって束縛しなければならないほどの秘密が男にあって、それはとても価値あるものなのだろうと。そう言いたかったそうだ。
コンコン
「若~、お待ちかねが、来ましたね~」
入って来たのは‥‥デジャブ。じゃなくて俵担ぎをしたミリアだ。うちの護衛女子さんは、どうして肩で人を担ぐのだろう。肩幅狭いよね?! しかも男性でしょ? 覆面と縄で拘束されて正体不明だけど男性だよね?
‥‥寝台の上は満員です! それどこに置くの?
場所がないにも関わらずポイっと床に転がした。あっ! 多分、机の脚に頭打ったよ、この人。大丈夫?! ‥‥無言で身動ぎもしないで、熟睡中か。
はぁ、ちょっとうちの護衛ちゃん達、人様の扱い方がなってないよね? 公爵家の護衛でしょ? 勉強させた方がいいのかな? 心配になってきたわ~と、思っていたら公爵令息のマナーの悪さが露見したよ。
うわぁ…‥義兄なんて、足で突いちゃってるよ? ちょっとその人、誰?!
‥‥こら、ジェフリー、お前は真似しなくてよろしいの!
「? 球体と魔法陣が一つあるわ」
「魔法陣はあるのだね? そうか‥‥だが一つ?」
「うーん、この男に価値があるとは思えませんが‥‥あっ、悪党ならありかもですね~。利用できる駒?扱いで?」
えっ、本当にこの人、誰だよ?! 酷い言われ様だよね?
「どうやら、球体と魔法陣の術者は別人に違いないね。恐らく、魔法陣が先に施されたのだろう。その後に何があったか知らないが隷属の契約を結ばされたと見ていいね。七つもある‥‥国家機密情報でも所持したか‥‥」
この時の俺は『球体が隷属の術』それともう一つ『球体から漏れ出る気配の正体』それを探る方法はないかと意識を向けたせいで義兄の最後に零した言葉を聞き洩らしていた。
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